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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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25/102

24やばい人


 それから数日が過ぎた。

 今日は朝から雨が降っていてみんなは少し退屈している。

 絵本を読んだり積木で遊んだりしているとイルがぐっと体を起こし窓の柵に飛び乗った。

 『イル、どうしたの?』

 あれからは魔力を出さなくても兄と会話できるようになった。


 叔父様と連絡を取ると驚いたことに王太子が国王になりオデロ殿下がその側近になったと聞いた。

 叔父との連絡は手紙に魔力を纏わせる。そうすれば鳥のように勝手に飛んで相手の所に届くようになっている。

 オデロ殿下にふさわしい女性が見つからないからと私を探し出そうと躍起になっているらしい。

 私の魔力が一番オデロ殿下に合うことがはっきりしたんだと言っているそうだ。

 いい加減にして欲しい。

 アーネはどうしたのよ?あの人と結婚すればいいじゃない。散々人を邪魔者扱いしておいてよく言うわ!

 でも、まさか私はプロシスタン国にいるとは思わないはず。

 これもあの時背中を押してくれた叔父様のおかげだ。


 そんな時何か違和感を感じた。

 「セリ先生。お外見て。誰かいる」

 「あっ、ほんとだ」

 土砂降りの雨の中、確かに人影が見えた。

 教会には病気の人や怪我人が運び込まれたり助けを求めてくる人もいる。

 私は急いで走り出た。

 イルがすぐ後ろを追って来るが濡れるので押しとどめる。

 『セリ俺も行く』

 『心配ないからここにいて、だって濡れちゃう』

 私はイルに大丈夫だからと頷いて見せた。

 仕方ないとイルは入り口で立ち止まった。


 急いでその人に近づく。

 「大丈夫ですか?どこか痛みます?」

 男の人がうずくまっていた。

 「近づかくな!」

 ずぶぬれで見れば腕から血を流している。

 「大変だわ。大丈夫手当てするだけです。さあ、診療所に行きましょう」

 手助けしようと手を出すが彼は後ずさる。

 「大丈夫だ!」

 ペッカーが心配してこちらを見た。

 「じゃあ、一緒に来て下さい。ペッカー誰か大人の人に知らせてちょうだい」

 私はペッカーに声をかけて男に何度も診療所に誘うがその男は頑として動こうとしない。

 「困ったわ。手当しなきゃその怪我痛いでしょう?」

 「心配ない」

 イルは入り口で警戒態勢でお尻を上げて威嚇の体制を取っている。

 『セリ、放っておけばいい。さあ、中に入ろう』お兄様の声がする。少し離れていても念じるだけなので会話が出来た。

 『でも、このままじゃ』どう見ても大丈夫じゃない。

 仕方がないばれないようにすれば‥

 私は周りを見て誰もいないのを確かめた。

 『お前まさか。やめろって。この国で魔法はだめだろ!』

 イルのため口が聞こえたが無視する。

 急いでそっと手の平で魔力を練る。小さな光がぼわっと浮かび上がりその光を男の腕に押し当てた。

 「なっ!」

 男が声を上げようとしたので「じっとしてて!」抑え込むように声を出した。

 男は驚いたのか目をむいて私を見つめた。

 彼は真っ黒い髪をしていて頭の上には凛々しい耳があった。虹彩は琥珀色で瞳孔が赤い。

 何だかユーゴ殿下みたい。

 一瞬身がすくむ。

 それにしては薄汚れている。

 そして私は男から離れるとすぐに家に向かって走り出した。

 もう、そんな事思うなんて‥ユーゴ殿下はお兄様みたいに会いには来なかった。

 魂は安らかに天に召されたのだろうか?ずっと気になっていた。でも辛すぎて考えないようにして来た。

 今、この段階で思い出すなんて‥

 

 「セリ、何があったの?」

 リンネさんがやって来た。

 「リンネさん、あの怪我をされてるみたいでしたが中にはどうしても入ってくれなくて‥」

 私は慌てて説明をするが男が追い付いてそばに近づく。

 「お前、何者だ?」

 私は後ろに下がるとリンネさんが驚いた声を上げた。

 「まあ、あなた?カイヤートじゃない?まあ、来るならくるって連絡すればいいのに。あんなところで何してたのよ!」


 私はふたりを交互に見る。

 「セリごめんなさい。こちらはカイヤート・プロシスタン。彼は現皇帝の第二皇子なの」

 「失礼しました。私はこちらでお世話になっているセリと言います」

 この人が皇子?

 こんな薄汚い人が?

 「お前、俺に何をした?」

 琥珀色の瞳が私を見据えるが怯えてはいけない。

 すっと顎を上げて平静を装う。

 「先ほどは失礼しました。いきなり触れてしまいましたが血を止めようとしただけです」

 「じゃ、何で俺の怪我が治ってるんだ?」

 そう言うと今度はいきなり私の腕を掴んだ。

 イルがぐるぅとうなり声を上げる。

 『セリ、どうする?』

 『ダメよお兄様。抑えて』


 「それは‥」

 「私が説明するわ」

 リンネさんが彼の手を掴んで私を放すように言う。

 彼女は私の事情を話して魔力があることを話した。


 「セリ、お前が気に入った。その髪も瞳もすごくきれいだ。いや、一瞬女神が降りて来たのかって思ったんだぞ。俺のものになれ」

 「はっ?なりませんけどぉ」

 「おまっ、誰に言ってんだ!俺は皇子だぞ」

 「私はこの国の人間ではありませんので」

 「よしわかった。じゃあ、俺がお前を口説く。もう決めたんだ。俺のものにするって。いいな?」

 「私は誰のものにもなりませんので」

 「にゃぁぁぁ~にゃにゃにゃにゃぁ~(あったりまえだろ。セリはお前のものなんかにならないからな!)」

 『ちょ、お兄様黙ってて。ばれたらどうする気よ?』

 私は逃げるように中に入った。

 やばいやばい。あの人おかしい。

 勘弁してよ。そう言う男はこりごりなの。







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