17ユーゴ殿下グッジョブ!
午後になると国王陛下と話をするからと兄とユーゴ殿下と一緒に国王の客間に連れて行かれた。
そこには国王陛下、オデロ殿下。アーネ様、副神官も同席していた。
兄はすぐに臣下の礼を取る。私も慌ててカーテシーの体制に入る。
「麗しき国王陛下に「畏まらなくてよい」ははっ」
兄が頭を上げたので私もそのままお辞儀をして元に体勢を戻した。
ちなみにユーゴ殿下は礼をしただけだった。
私達は早速オデロ殿下たちの向かい側に座るように言われた。
兄の前にオデロ殿下。私の前にアーネ様。ユーゴ殿下の前に副神官だ。
私はユーゴから婚約を申し込まれたが、もちろんそんな事は出来るはずもないと思っていた。
それでもオデロ殿下との婚約破棄の話が出来るならとここに来ただけだ。
ユーゴ殿下には何か策があるようだし。
国王は窓側のひとり掛ソファーに座っている。
「さて、今日はユーゴからの申し立てで緊急にここに集まってもらったが、まずユーゴから話を聞こう」
「はい、国王陛下ありがとうございます。では、話しの要点を説明します。昨日俺は初めて学園の訓練に参加しました。あの<真実の愛>の相手との魔力浄化訓練です。国王もご存知ですよね?」
あえて父上と呼ばない所が複雑な親子関係を思わせるがそこは今日は関係ないので。
「ああ、もちろん知っておる。オデロとセリーヌはいつも素晴らしいと聞いて居る」
「はい、実は昨日の訓練はオデロ殿下はアーネ嬢とセリーヌ嬢は私と組みました。私達は今までにないほどの訓練の成果を発揮しました。そうでしたよね副神官殿」
ユーゴ殿下が副神官様に尋ねた。
副神官は急いで姿勢を正すと「はい、驚きました。今までオデロ殿下とセリーヌ様の訓練を見て来ましたが、昨日の訓練はその何倍もの魔力浄化があったと思います」
オデロ殿下の顔がしかめられアーネ様がオデロ殿下の腕にぎゅっとしがみ付く。
オデロ殿下がはっとしてアーネ様の手を払い上着の襟もとを整えた。
「ほほう、そんなに?」
国王の眉が上がる。
「それに引き換えオデロ殿下とアーネ嬢は‥事もあろうにアーネ嬢はオデロ殿下の魔力を制御できず暴走させたのです。それをセリーヌ嬢が抑え込んで何とか被害はなかったもののそのせいでセリーヌ嬢は魔力枯渇に陥りました」
ユーゴ殿下ったら大げさなんだから。
それを聞いたオデロ殿下が驚いたらしい。
「セリーヌすまない。私のせいで‥それより大丈夫か?」
「今頃なんです?私は倒れたと聞きました。それを助けて下さったのはユーゴ殿下だったと。あなたは自分のしでかした魔領暴走に気を取られるばかりで周りは何も見えていなかったんですね。それでよくこの国の王族などと言えますね。おまけにアーネ様。あの浄化魔法は何ですの?驚きましたわ。あんなに自信たっぷりにおっしゃっていたのに‥」
その先も言いそうになって思わず口を押える。
だって、やっぱりこれ言うとまずいでしょ。それでおふたりが<真実の愛>の相手だなどと言えましたね。って。
だって私オデロ殿下と婚約なかった事にしたいんですから!
「国王陛下。そんな事はいいんです。私が言いたいのは私とセリーヌ嬢の魔力がすごく相性がいいと言う事なんです。知っての通り私は神粋の儀式を受けておりません。もしかすると私がセリーヌ嬢の<真実の愛>の相手と言う事があるかも知れません。どうか副神官殿、私とセリーヌ嬢の神粋の儀式を行ってほしいのです。もし私たちが<真実の愛>の相手だと分かれば必然的にオデロ殿下との婚約はなかったことになります。オデロ殿下もセリーヌ嬢との婚約破棄を希望されていますしすし、そうなればすべてが丸く収まるのではないでしょうか?」
ユーゴ殿下。すごい!うん?それだと私はユーゴ殿下の婚約者?
うそ?まじで?ううん、うれしいかも。
ユーゴ殿下。グッジョブです!
脳内がざわざわしていまだに現実感がないが。
「そう言う事ならばユーゴ、お前は早急に神粋の儀式を受けるように。副神官急いでその準備を頼む」
「はい、ですが国王陛下、一度神粋の儀式で決まったことを覆すというのは些か‥」
「だがユーゴが儀式を受けてはおらんのだ。魔力の質が上がるなら<真実の愛>の相手が変わることもあり得るだろう?」
国王陛下が副神官に諭すようにやんわりと言葉を継げる。
あっ、これいけない奴。
国王の力のごり押し。
まあ、<真実の愛>の相手選び自体がすでに本物じゃないんだしここで相手が変わったからと言って対して問題はないと言うか、まあ、要するに神殿のプライドの問題で。
いきなりオデロ殿下が立ちあがった。
「ですが父上!セリーヌはすでに俺の婚約者なんですよ?」
あれ?オデロ殿下どうして?
散々私と婚約破棄したいって言ってたくせに?
あっ、アーネの魔力がしょぼいってわかったからまずいって思った訳?
今更よ。
「オデロ。いいから黙れ。お前が口をはさむことは許さん!」
オデロ殿下はしゅんとなってその場に座り込んだ。すぐにアーネが彼の腕にすり寄る。
アーネの瞳にはハートマークが浮かんでいるみたいに見える。
うわっ!きも!
はぁ~勘弁してよ。
それにしても国王陛下グッジョブです!
さすが親子。




