13対決
そして私とユーゴ殿下の番が来た。最後はオデロ殿下とアーネになっている。
「セリーヌ、準備はいいか?」
「はい、いつでもどうぞ。ユーゴ殿下さっきの雷魔法お願いします。私は殿下が魔法を見て間合いを決めます」
「ああ、いつでもいいぞ」
ユーゴ殿下が手の上でバチバチと小さな稲妻を練り上げていく。
ある一定の大きさになるとユーゴ殿下が振りかぶってそれを前に押し出した。
雷は土を舞い上げながら大きな渦になって広がって行く。
私は手のひらで光を練り上げながらその雷をじっと見つめる。
空気を取り込みらせん状に描かれて行く稲妻は恐いくらいだ。
もう少し‥後ほんの少し‥今だ!
私は全身で光の渦を押し出す。
大きくうねった光が稲妻を捕らえる。
そのうねりに光が巻き付きよく見ると稲妻に光の粒が絡まって行くのがわかった。
そして稲妻が最大のうねりを起こしそしてそれが一瞬にして立ち消えた。
まさに魔粒毒の完全浄化がここに完成した感じだった。
私とユーゴ殿下はボー然と立ち尽くしている。
そこにベイリー先生と副神官が走って来る。
「嫌ぁ、ユーゴ殿下、セリーヌ。さっきのマリーズとラバンもすごかったが、これは規模が違う。まさに奇跡的な浄化だ」
そう言ったのはベイリー先生。
「ああ、まるで神が降りて来たのかと‥」
副神官は言葉さえ失うほど驚いている。
「ちょっと待ってくれ。まだ俺がいるんだが‥」
「ああ、オデロ殿下。失礼しました。もちろん忘れてなんかいません。さあ、殿下。どうぞご存分に力を披露して下さい」
副神官は少しバツが悪そうにオデロ殿下に頭を下げた。
「ったく。いい格好しやがって‥見てろよ。これが本物だって教えてやる。さあ、アーネ準備はいいか?」
アーネが少しおどおどしながらオデロ殿下のそばに近づく。
「アーネ。緊張しなくていいぞ。俺達には<真実の愛>があるんだ。何も心配ない。そうだろう?」
オデロ殿下はアーネの顎をそっと優しく撫ぜる。
アーネくっと上を向いて彼をじっと見つめ「ええ、そうですね。オデロ殿下を信じてます」
きゅっと両手を組んでいつものように瞳をウルウルさせて首を30度傾げた。
はっ!勝手にやってろ!と言いたくなるがもちろん何も言わない。
私は淑女ですから。
そしてオデロ殿下とアーネが前に出た。
オデロ殿下が火魔法を練って大きな火球体を作り上げる。それを全身で空中に押し出した。
火球体は大きく燃え上がり周りを取り込んでいく。
大きな業火なって一気に燃え上がる。
「アーネ今だ!」
オデロ殿下が声を上げた。
「はい!」
アーネが手のひらで作り上げた光をぐいっと押し出した。
ピンク色の光はそれなりに大きくなっていた。勢いよく押し出された光はオデロ殿下が繰り出した燃え盛る炎を包み込んだ。
ピンク色の光がふわりと炎を包み込むと周りから声が上がった。
「やっぱりすごいです」
「さすがだな。オデロ殿下は」
「あれ?おい、どうした?」
「おいおいあれ見ろよ」
期待の歓声が一気に盛り下がって行く。
アーネが放ったピンク色の光が炎に飲み込まれて行く。
炎に抗えず光は吸い込まれるように火に包み込まれてそしてそれを吸収した炎がさらに燃え上がった。
浄化の力がよわすぎるんじゃ?
これまずいんじゃ?
私はメラメラ燃え上がる炎に危機感を覚える。
「きゃぁ~火がこっちに来るわ」
「誰か‥」
「やだ。恐い」
「やばいぞ。誰か火を抑え込め!」
口々に生徒が叫ぶ。
私は急いで手のひらで光を練り上げる。まだ。もう少し待って。あと少し。お願い。
やっと炎を抑え込めるほどまで光を練り上げると一気に燃え上がった炎に光を押し出した。
「セリーヌ様の浄化の光よ」
「見て、炎は小さくなって行く」
「やっぱりセリーヌ様は違うわ」
「やったぞ。火が消えて行く」
そんな声にほっと息をつこうとしてくらりとめまいがした。
「おい、セリーヌしっかりしろ!」
誰かが倒れそうな私を受け止めてくれた気がした。
そのまま私は気を失った。
魔力切れを起こしたのだ。




