番外編
王都に帰るとすぐさま皇王から皇太子になれとの話があったがカイヤートは嫌だと言って皇太子にはイエンスの弟のホーコンがなる事になった。
やっとカイヤートの屋敷に帰って来るとみんなから大歓迎を受けた。
そしてやっと二人きりの時間がやってきた。
「セリ、愛してる。これからはずっと一緒だ」
「ええ、カイヤート私も愛してる」
熱に浮かされた金赤色の瞳の中にいるのが自分の姿に心から喜びを感じた。
互いを乞うように舌を絡め身を寄せれば身体の中心がじゅくりと熱を帯びて行って。
前にも交わした口付けなのにいつもとは違う濃厚な色香に酔いしれているわたし。
手のひらに寄せられる唇にほとばしるほどの喜びを感じながらその熱さが胸を焦がして惹かれ合うように私は身を委ねて行く。
湿った感触が舌先にねじ込まれ身をよじれば離さないとばかりに背中を強く抱き込まれキスはますます深くなって。
「かいやーと‥」
「せり」
呼び合う名前すら今はもう蕩ける雫みたいで。
自分とは違う彼の体温を感じれば感じるほど私の下腹部はじりじりと熱を持ち甘い吐息が漏れた。
やだ‥恥ずかしい。
もぉ‥じっとカイヤートに見つめられていたなんて。
彼の喉元がゴクリとうごいて激しいキスの嵐に襲われる。
その先にある甘い快感に期待している自分に狼狽えながらも私は何度も彼を受け入れていた。
ああ、まさに!極上の幸せぇぇぇぇぇぇ~!
その後、カイヤートはアンティ辺境伯領を賜り家族を連れて引っ越した。
ヨールやトロンドさん、その他の家族みんなで。
アンティ辺境伯領は彼がカイヤート・スヴェーレンとなったため名前を改めスヴェーレン辺境伯領となった。
そしてカイヤートがプロシスタン国の初のドラゴン騎士隊の騎士隊長にもなった。
というわけでカイヤートは毎日ビーサンやシルバ、ペッカルなどと訓練をしている。
そしてキアード様もこのドラゴン騎士隊に入って来た。もちろんマリーズも一緒だ。
もう、みんな仲良すぎじゃない?
ああ、そうそう。ドラゴンのリガキスはやっぱり月光美人の葉が効果があることが分かって今ではドラゴンのリガキス駆除には月光美人の薬湯が主流になった。
それからコニハのお父さんが帰って来てもうみんな大喜びをした。
そして遂に私たちの結婚式がやって来た。
ウエディングドレスは皇妃様から送られたそれはもう豪華なシルクとレースで出来たマーメイドラインのドレスだった。
私は残していた母のベールを直して使うことにした。
朝から教会の表には花のアーチが飾られ柱には金色や赤色、銀色に緑色のリボンがあしらわれている。
いよいよ式の始まり。
教会の鐘が鳴り叔父様と一緒にバージンロードを歩く。
もう、バージンではないけどね。
裾をひこずるように長いベールは後ろから可愛いコニハ、チャーレ、ミコが仲良く持ってくれている。
三人ともすごく真面目な顔で可愛い。ドレスはお揃いの淡いピンク色で作った。
もう、スマ〇とかあったら絶対写真撮ったのに!!
私は悔しい気持ちになったが、まあ、ここまで来るのは大変だったから‥
最初は私が持つ!ううん、私よ!いやよ、私が!ってそりゃ大変な騒ぎで、みんなで持つことになってやっと三人は納得してくれた。
こんなに慕われて私は幸せだと思う。
更にバージンロードの端では可愛い礼服を着たフラワーボーイたちが色とりどりの花びらを床に散らして行く。
ああ‥なんて幸せなの。
そして目の前には少し照れ臭そうなカイヤートがいた。
彼はいつにもまして端整な顔がさらにパワーアップされたみたい。
はにかみながら私に微笑む姿に胸の奥がきゅんとなって。また、幸せだって思った。
そしてリンネさんに神父様役をしてもらって誓いのキスを交わし私達は晴れて夫婦となった。
彼のキスは甘くてほんとに蕩けそうになって思わずカイヤートが私を抱き上げたほど。
その後は、カイヤートがうれし泣きをしてそれはもう大変で‥すごくいい結婚式だった。
そしてやっと落ち着いたけど、私は屋敷でじっとなんかしていられなくてすぐに教会で働き始めた。
もちろん聖女としてもだけど、他にも治癒師、孤児院の養母などをかねて毎日楽しい日々を送っている。
ちなみに月光美人は薬湯は苦味があってドラゴンに不評なので月光美人羊羹。ゼリー。キャラメルなどを開発中だ。
ドラゴンは甘いものに目がないらしい。
それからトランプゲームはすごく人気でプロシスタン国中に広まりつつある。
シェルビ国でもそろそろブームらしい。
あっ、実はリンネさんが教会で究極の愛のカップル商品を売り出した。
イヤリングや指輪、腕輪などにつけるチャームなんだけど。
これがそのカップルにあった商品が選べるとあって大人気!
最初に私達の究極の愛ってチャームを売り出したんだけど。
カイヤートが狼で私がお姫様をモチーフにしたもので、もう、すごい人気になった。
まずカップルの互いの瞳や髪色の色を決めるでしょう。そして次は材料。宝石はもちろんだけど木とか革などもちらほら出始めた。
宝石は割と安いものが中心。
ほんと、この世界には合金とかプラスチックがないのが残念。
そんな可愛いチャームをカップルでつけたら恋愛成就間違いなしとかで人気はうなぎ上りで、ここ最近は教会の仕事はそのチャーム作り一辺倒になってるほど。
今ではチャームだけでなく髪飾りや封筒なんかにも絵柄として付けるのも流行り始めた。
リンネさんったら今度はハンカチに刺繍したものや男性のクラバットなんかもどうかって。
もうカレヴィさんも一緒になって言うもんだから、ドラゴンのマークもすぐに商品化されそう。
そうそう大事な人を忘れてた。
イヒム様はって、あれから何度呼びかけても返事がなくてもう無理かと思っていたらやっとイヒム様からお声が聞こえた。
『セリ、お前も仲良くやってるのぉ。良かった。良かった。わたしゃぁアードと蜜月をすごしておったんじゃ。ふふ、実はな。‥子が出来た』
『イヒム様お久しぶりです。いきなり、おめでた報告ですか?それはおめでとうございます。神様のご出産なんてすごいですけど、また揉めたりしないで下さいよ』
『ああ、もう二度とあんなことにはさせん。そこは約束しておくからのぉ。お前たちも幸せにな。仲良くやれ!』
『はい、イヒム様もどうかお幸せに』
『ああ、じゃな。もう、こうやって言葉を交わす事もしばらく無理になるかのぉ~、セリお前も忙しくなるじゃろうからな』
『えっ?もういらっしゃらないんです?』
『しばらくはのぉ。セリもわしも育児に忙しくなるからのぉ~』
『私は違いますよ?』
『わしゃ神だからのぉ~、セリ,よ~くお聞き。おめでたじゃよ』
私はしばらくボー然として、やっとイヒム様の言った意味を理解した。
『わたし?に、にんしんしてるんですぅぅぅ?』
『ああ、大切にな。じゃあな』
『あっ、はい。イヒム様ありがとうございます。イヒムさものどうかお身体お大事になさってくださいね。イヒム様?いひむさま~‥‥』
イヒム様はそれっきり返事をしてくれなかった。
イヒム様の爆弾発言のすぐ後。私は診療所に駆け込んだ。
うふっ、リンネさんったら心配して診察に付き添ってくれた。
あっ、リンネさんは司祭を引退して今はカレヴィさんと一緒に暮らしている。
もう、ふたりは熱々の仲良しなのだ。
「セリ、あなた妊娠してるわ!おめでとう。でも、まだ妊娠の初期だからくれぐれも気を付けなさい」
「まあ、セリすごいじゃない。もう、カイヤートが聞いたら大喜びするわね」
リンネさんは大喜びだ。
私は驚き半分のまま急いで、でもゆっくり歩いてカイヤートに知らせた。
「カイヤート‥あの、ちょっといい?」
「どうしたセリ?まさか具合でも悪いのか?」
「まあ、そうかもしれないわね‥」
カイヤートが慌てる。
「診療所に入ったのか?」
「ええ、さっき」
「それでどうだって?」
「あのね‥にんしんした」
私は恥ずかしくて早口で言った。
「にんじんがどうした?」
「もぉ!カイヤートの赤ちゃんが出来たの!!」
「俺のあかちゃん?‥」
一瞬固まった。
でも、カイヤートは眩しいほどの破顔した顔を見せた。
彼ったら尻尾をぶんぶん振り回してそれはもう大変で。
「セリ!お前とうとうおれの子を?マジ、うれしい。うわっ、俺どうしよう。セリ、もう動くなよ。じっとそこに座ってろ。ほら‥」
うわっ、カイヤートの過剰反応ったらすごい。
「もう、カイヤートったら!過保護は良くないのよ。適度な運動がちょうどいいんだから。でも、今は初期だから気を付けるわ。だからちゃんと私の話を聞いてね」
「わ、わかった。セリ、俺、何でもするからな」
「ええ、お願いねパパ!」
「パパ?俺がパパ‥‥やべっ~」
しばし放心状態のカイヤートだったが、その後キスの嵐が待っていたのは言うまでもない。
そんな彼を見て、わたし心の底から幸せだなって思いました。
これから先も私たちはますます永遠の幸せループを作って行くんだろうなぁ~
~おしまい~
ほんとにこんな長いお話になる予定ではなかったんですけど(笑)長い長~い話になってしまいほんとに申し訳ありません(ペコリ)
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
見放さず皆さんに読んでいただけたこと感謝しかありません!!
次回作もまたよろしくお願いしま~す。~はなまる~




