9不毛なやり取り
そもそも学園では<真実の愛>で選ばれたカップルは皆同じクラスになる。
この教室には<真実の愛>で選ばれた生徒が十五組、合計三十人の生徒がいるのだ。
はっきり言うけどアーネにも婚約者がいるのだ。
ドーソン・モーゼット伯爵令息と言う婚約者が。
でも、モーゼット伯爵令息はオデロ殿下に恐れをなして何も言えないのだ。
全く役立たずとはこの事ではないか?
いや、長い物には巻かれろと言う。変に殿下の不況を買うよりずっといいかも知れない。
私はそんなどうでもいい事をさらっと脳内でやり過ごすと黙って自分の席についた。
隣はもちろんオデロ殿下だったが、私は席を大幅にずらしオデロ殿下との距離を取った。
オデロ殿下もそれに対して何も言わず黙って席に着いた。
すぐに教師がやって来たからだ。
私たちはこの学園では特別枠に入り午前中は一般の教養の授業を受けるが午後は男子生徒は強化訓練。
女子生徒は神殿で浄化や治癒魔法を行っての魔力強化の授業がある。
いわゆる神殿で行うのは病気の人の治癒やお世話のような事をする。
神殿から言わせれば魔粒毒の浄化に行く時のための遠征訓練らしい。
ばかばかしい事だと思う。
だって二百年近くも何もなかったのにずっと<真実の愛>に選ばれた人たちはこれを文句も言わずにやってきていたなんて‥
そして今日は男女合同の訓練日なのだ。
訓練日は神官の都合に合わせるので週に一度の時もあるし二週間ほど間が空くこともある。
私とオデロ殿下は午前中は何もなかったような態度で授業をやり過ごした。
ランチの時間になる。
「オデロ殿下ぁ、ランチに行きませんか。アーネずっと殿下と離れててすごく寂しかったですぅ。それにもうお腹ペコペコ」
アーネは満面の笑みを浮かべて彼の席に来てオデロ殿下にすり寄る。
「ああ、俺もだ。腹が減ったのかアーネは可愛いな、さあ、急ごう」
ああ、むかつく。なに?あの気持ちの悪いイチャイチャは?
カチンとくる。
私はそんな彼に牙を向くように話を振る。
「オデロ殿下。そんな事より、朝、仰った事覚えてます?午後からの訓練。担当の先生に事前に組み合わせを変える事説明して下さいよ。あくまでおふたりの希望なんですから!」
「何を言ってるんだ?セリーヌお前が俺達に証明しろって言ったんだろう?それはお前の仕事じゃないか。ったく。いいか。お前がそうしろと言ったから俺は受けて立ったまでだ。今日のコンビを変えることはお前が話しをしろよ。いいな!」
「そうですよ。セリーナ様がどうしても見たいって言われましたよね?ほんと物忘れ激し過ぎなんじゃないんです?そんなだから殿下にも嫌われるんですよ。うふっ、ねぇ殿下ぁ」
アーネはいい気味と言わんばかりに当てつける。
「わかりましたわ。でも、その代わりうまく行かなかったときはどうするんですの?」
「そんな事あるわけがないだろ!セリーヌ言うに事欠いてバカかお前!アーネ行こう。こんな奴の相手をする時間がもったいない。。たく!」
オデロ殿下はしかめっ面でアーネの腰を抱いて教室を出て行く。
アーネはくるりと顔をこちらに向けて意地の悪い顔で口を開く(ばかね)と言った。
どうして私がこんな目に合うわけ?悔しい!
まじ、不毛なやり取りだ!




