制せ!この社会(クラス)を
ゴールデンウィークから1週間が経ち、太陽が私たちを照らしている。
ゴールデンウィーク前に決めていたクラスで遊ぶ事は出来なかったが、来週には先生の「双葉」先生の誕生日がある。その時サプライズでレクをしよう。と言う事に決まった。
そして来月には体育祭がある。必ず1人一競技出なければならない。
今、それを決めている最中だったが…
「ねぇ、ちゃんとやってくんない?こっち真面目に決めてるんだけど」
学級の中心、ミドリが叫ぶ。ミドリは一度、恋愛嫉妬から行方不明になった。
そんな自己中的な性格だから、周りからはミドリムシと言われている。
「お前が決めるのが遅いからこっちは飽きたんだよ」
見た目は隠キャ、中身はヤンキーのライキが怒鳴る。
このクラスは個性が強い人が多い。いい事だけど、悪いことでもある。
「ミドリ変われ。俺が決める」
イケメン男子のカズマが言う。
カズマは人気者だ。だって運動も出来るし背も高いし顔が良い。そりゃあモテるに決まってる。
こんな強個性の人たちについていけない私、サオリは周りの様子を伺いながら過ごしている。
正直体育祭は楽しみでは無い。小学生の頃にリレーで転んで学年のほぼ全員に睨まれたからだ。
でも、友達のマミのおかげで、一様やる気は出ている。
私たちが出る種目は「流れろ!流緑中」と言うボールを転がすだけの競技だ。
2人1組で行う協力競技だ。かつその相手はマミだ。
来週には体育祭の練習がある。その日に備えて私のクラス1-5組では放課後に学級スポーツ大会「双葉杯」がある。
優勝すれば、先生との2分お話し会がある。
先生はとても美人でノリが良くとにかく面白い。みんな大好きな先生だ。
双葉杯に向けて、私とマミで練習していた。
「ねえマミ、正直体育祭、双葉杯、頑張らなくてもいいんじゃ無いかな…?」
私は正直練習に乗り気ではなかった。だって体を動かすのはあまり好きでは無いから。
体を動かす時間があれば、勉強していたい。そう思っていたからだ。
「そっか…でも、練習してればきっと楽しくなってくるよ!活躍できたら嬉しいし!」
マミはいつも元気をくれる、頼れる相棒だ。
「いつもありがとね…今日は頑張ってみるよ」
「ありがとう!一緒に頑張ろうね!」
マミが快晴の空のように明るく笑っている。最近何かがあったのか、マミはすごく元気だ。
そして1週間経ち、双葉杯が始まった。
「皆さん、今日は待ちに待ったであろう双葉杯です!気合い入れて頑張りましょう!!」
先生のポジティブ思考発言がトランペットのように校庭に響く。
「一緒に頑張ろうね!サオリ!」
「うん…頑張ろうね」
マミはすんごい元気だ。隣にはイケメン男子のカズマがいる。仲良さそうに話している。
「まず最初の競技はクラス団結、大玉送りです!」
大玉送りはクラス全員で大玉を転がしてゴールへ持っていく競技だ。個人的には「流れろ!流緑中」の練習だと思っている。
クラス約30名が大玉の前で屯っている。
「よーい、どん!」先生が放つ拳銃の音が校庭に響く。
クラスメイトが一気にゴールへボールを運んでいく。人の波に押され、私は自由に動くことが出来なかった。
これが社会の闇か。と実感した。
ライキがふざけてゴール側の方に行ってみんなの邪魔をしている。
「おいライキ!ふざけんなよ!」
また喧嘩が始まってしまった。
結局大玉送りはモヤモヤした気持ちで終わってしまった。
「次の競技は二人三脚です!体育祭の競技のペアと一緒にやります!」
次の競技は二人三脚だ。ペアはマミ。毎日話しているから、心は通っているはず。そう思ったが…
「次はマミサオペア!よーい、スタート!」
「いちにっいちにっ」とマミと協力して優勝を目指しゴールを目指す。
「ねえサオリ、早くない?大丈夫?」
「うん。全然大丈夫…」
私はある異変に気づいた。足と足を結んでいる紐が、切れそうになっている。
(強く動いたら切れるよね…?)そう私は思った。
焦ったのか、ただ躓いたのかは分からないけれど、私は思わず止まってしまった。
そんな事、友達でも流石に予測できない。マミは転び、私は立ち止まった。
「は?お前マミに何を…?」
イケメン男子カズマが言った。やっぱりそうだったのか…と言う気持ちは全くなく、私はあの事を思い出してしまった。
(あの時と同じ…リレーで転んだあの時と同じ目だ…)
クラス全員が私の事を睨んでいる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
私は何をしたら良いのか分からず、ただ謝るしかなかった。
「そんなに謝らなくて大丈夫だよ!ほら!全く怪我してない!ゴールまで後ちょっと!一緒に行こうよ!」
私は思わず泣いてしまった。少し雲がある空が、完全な快晴になった。
「まあ、しょうがないよな」
ライキが言った。ライキがそんな事を言うのは初めてだ。
私は無事一位でゴールした。
いよいよ来週には体育祭があり、クラスは蟻のように団結していた。
私は一つのパズルのピースのような自分の存在をしっかりと認識した。
体育祭に向けて、クラス全員で叫んだ。
「頑張るぞ!」