温かい
日の光に気づき、セリーヌはゆっくりと目を覚ました。
どうやらアルヴィンの肩にもたれて眠ってしまっていたらしい。
(ま、まさか……寝てしまっていたなんて……!)
慌てて顔を上げると、すぐそばにいるアルヴィンの寝顔が目に入り、息が止まる。
その瞬間、アルヴィンも目を覚ましたらしく、軽く伸びをした。
セリーヌは反射的にもう一度目を閉じ、再びアルヴィンの肩に寄りかかる。
心臓が早鐘のように鳴る中、後悔が胸をよぎった。
(……今、普通に起きればよかった……!)
アルヴィンはそんなセリーヌをそっと壁にもたれさせ、優しく頭を撫でる。
その手は温かく、目を閉じていても彼の優しさが伝わった。
やがて、近くからアルヴィンの気配が消える。
次の瞬間、ドンッと何かが鳴り、驚いたセリーヌの全身がふわりと持ち上がった気がした。
「……狸寝入りですか? さっき起きていたの、分かっていますよ」
耳元でそう囁かれ、さらに心臓が跳ねる。
それでもセリーヌは頑なに目を閉じたまま動かない。
(い、今起きたら……負けた気がする……!)
くすっと鼻息混じりの笑いが近くで聞こえた。
アルヴィンはセリーヌを抱えたまましばらく歩き出す。
(絶対に、起きてやるものですか……!)
やがて、柔らかなベッドの感触が背中に広がる。
アルヴィンの腕が離れ、セリーヌはそっと横たえられた。
「起きられないなら、今日はここで休んでいてください。……僕は公務に行ってきます」
そう静かに告げると、アルヴィンは部屋を出ていった。
ガチャリ、と扉の鍵が閉まる音が響く。
(……あれ? 今、鍵……?)
セリーヌはしばらくしてからそっと目を開け、扉へと近づいた。
しっかりと閉じられた扉は重厚で、先ほどの部屋よりもずっと堅牢だ。
試しに軽く叩いてみるが、まったく動く気配がない。
強く叩けば壊れてしまいそうで、修理費が頭をよぎり、それ以上はできなかった。
見回してみると、この部屋は先ほどの部屋よりも明らかに豪華で、調度品も洗練されている。
掃除も行き届いており、まるで賓客用の部屋のようだ。
(……ここの人たちは、どうしてこんなに人を閉じ込めるのが好きなのかしら……)
セリーヌは肩を落とし、結局おとなしく部屋で待つしかなくなったのだった。