プロローグ「クラスに『雪女』がやってきた!」
これを読んでいるみんなは、きっと信じてくれないだろう。
今から話す事には、俺の推測を含まれている。
そう。俺の隣の席の、とあるクラスメイトのお話だ。
2年5組。5月。
クラス替えも落ち着き、教室内では様々なグループが出来上がっていた。
俺はと言うと現在進行形で「ぼっち枠」を貫いている。
あいにく何故だか隣の席は誰もいない。
「誰の席でもない」と言った方が分かりやすい。
その為俺は授業中は机2つ分を使い、のびのびと勉強している。
他の人より広い、俺だけのスペースだった。
そんなある日の事。朝のHRが終わると先生が「入ってこい」と言い放つと、教室に女の子が入ってきた。
この展開・・・・・凄くベタだ。
「・・・今日から転校してきました。雪白冬華です。これから宜しくお願い致します。」
長いまつ毛に切れ長の目。
銀色のさらさらとした長髪に、170センチはあるだろう身長。
「美人枠」には収まらない程の美少女だ。
クラス中が騒ついている。
こんな美女、学校中探しても居ないだろう。
男子は全員目をハートにさせ、女子は全員驚いている。
先生がゴホンと咳をした。
「えーっと、先に言っとくが雪白さんは人間じゃない。
『雪女』と言う妖怪だ。皆、仲良くしてやってくれ」
クラス内に叫び声が鳴り響いた。
当たり前だよそんなの。
でも俺は驚きはしなかった。
俺の家は代々陰陽師の家系なのだ。
霊感があり、小さい頃から妖怪は腐るほど見ている。
廊下に雪白さんが居るのは分かっていた。
(雪女か・・・初めて会うなぁ。確か『残忍かつ、肌に触ると凍結する』んだよなぁ・・・。)
俺は机の下に隠していたある物を見た。
(危険な妖怪なら、このばぁちゃんから貰ったお札で・・・)
「宜しくお願い致します。八森くん」
「えっ」
名前を呼ばれハッとし、隣を見た。
俺の空いている席に雪白さんが座っていた。
男子の一部から「いーなーあいつ!隣の席で羨ましい!」と声が上がっていた。
(おいおい妖怪なんだぞ、このみてくれで!どんな危険性があるか分からないのに・・・・)
雪白さんの顔を見てみると、彼女は俺の方を見て頬を赤らめていた。
ちょっと不気味に感じた。
それからというもの、すぐに学校内に雪白さんの噂は広がった。
『雪女』の話より、美人すぎる見た目の噂の方が大きかった。
彼女が登校すると、学年問わず皆が集まってくる。
「おい!雪白様がご登校されたぞ!!」
毎日誰かが叫び、この一言で全員が集まってくる。
鬱陶しくて仕方ない。
雪白さんが廊下を歩くと、後ろに生徒が付いてくる。
が、付いてくる人達は続々と凍っていく。
これも雪女の特性なのかもしれない。
その美貌に見惚れて凍る。まるでギャグ漫画の様な光景だ。
今日も彼女が投稿してきた。
廊下から、凍える様な冷気を感じた。
この数日で彼女が歩くと冷気が漂う事が分かった。
教室に入り、雪白さんは僕の隣の席に座った。
「・・・おはよう。八森くん」
「おっ・・・おはようございます。雪白さん・・・」
口から冷たい風が俺に当たる。
春だというのに、寒い。
早くも「隣の席は嫌だ」と思った。
他にも理由はある。
「おはよう〜雪白さん!」
「おはようございます!今日も一段と美しいですねッ!」
雪白さんが椅子に腰をかけると、続々とクラスメイトが集まってくる。
1人の時間を楽しんでいる俺からしたら正直邪魔でしかない。
「ねぇーそこどけよ隠キャ」
俺は顔も知らないイケメンに頭を叩かれた。
こいつらからしたらコッチが邪魔なのだ。
(クソッ・・・・後で八森家に伝わる「呪いでもかけてやるッ・・・)
チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた事により生徒達は自分の席へと戻って行った。
ふと隣を見ると、雪白さんから何か畳まれた紙を渡された。
どうやら手紙のようだ。
俺は恐る恐る受け取り、開いてみる。
【ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。雪白冬華】
全くもって雪白さんは悪くない。ガヤに問題がある。
なのにわざわざ謝罪をしてくれた。
不器用ながら、手紙を書いてくれた。
気の使える子なんだろう。
俺は雪白さんに手紙を書いて渡した。
【気にしないでくれ。雪白さんは悪くない。雪白さんの方こそ大変だね。無理しないでね。八森学】
雪白さんの顔を覗き込んだ。
こっちを見て、軽く微笑んでいた。
(これから宜しくね、八森くん)
彼女は小声で話しかけてきた。
雪女とはー。
冷徹かつ残忍な性格で、全てが妖怪と言い伝えられている。
『果たして、彼女は本当に雪女なのだろうかー』
この笑顔を見るといつも疑問に思う。
これは俺と雪女(?)の、全然冷たくない恋の物語。