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第1話:色彩の喪失

読者の皆様へ


このたびは、私の新作「灰色の世界線」に興味を持っていただき、ありがとうございます。


この物語は、私にとって新たな挑戦の作品です。処女作とは一線を画し、これまでとは異なるジャンルと世界観で物語を紡ぎ出してみました。現実と幻想が交錯する世界で、主人公の遥斗が経験する不思議な冒険。それは、私自身の創作における冒険でもありました。

第1話:色彩の喪失


色彩の海に浮かぶ灰色の島

見えない糸で繋がる無数の世界

一瞬の選択が分かつ運命の分岐点

目覚めれば、すべてが変わっていた


指先に触れる現実は遠く

耳に届く声は空虚な反響

昨日までの自分は、どこへ行ったのだろう

この灰色の世界で、私は誰なのだろう


高村遥斗は、この不思議な詩の意味を理解できないまま目を覚ました。頭の中で反響する詩の言葉は、まるで誰かが囁いているかのようだった。しかし、それはすぐに朝の喧騒に掻き消されていった。


「遥斗、起きなさい! 遅刻するわよ!」


母の声に急かされ、遥斗は慌ただしく制服に着替えた。鏡に映る自分は、いつもと変わらない17歳の高校生。黒髪に茶色の瞳、少し眠そうな表情。ごく普通の一日の始まりだった。


教室に滑り込んだ遥斗を、親友の健太が笑いながら迎えた。


「おい、遥斗! また寝坊か?」


「うるせえよ」と言いつつ、遥斗は苦笑いを返す。


授業が始まり、窓の外には春の柔らかな日差しが差し込んでいた。遥斗は何となく首の後ろに違和感を覚えたが、気のせいだと思い払った。


放課後、帰り道。遥斗は再び首の違和感に気づいた。今度は痛みを伴っている。


「大丈夫か?」健太が心配そうに尋ねる。


「別に、たいしたことないよ」


しかし、家に着く頃には痛みは激しくなっていた。


「遥斗、顔色悪いわよ」母が心配そうに声をかける。


「ちょっと疲れてるだけ。早く寝るよ」


遥斗は早々に自室に引きこもった。ベッドに横たわると、朝聞いた詩の一節が再び頭をよぎる。


目覚めるとすべてが変わっていた


「なんだ、この気持ち悪い感じ...」


そう呟いて目を閉じた遥斗は、深い眠りに落ちていった。


朝。遥斗は目を開けた瞬間、何かがおかしいと感じた。最初は、まだ夢を見ているのかと思った。しかし、意識がはっきりするにつれ、恐ろしい現実に気がついた。部屋中の色彩が、まるで誰かが彩度を下げるダイヤルを回したかのように、急速に失われていった。数秒もしないうちに、世界は完全な灰色のモノクロームに染まっていた。


「なっ...何だこれ...」


パニックに襲われた遥斗は、必死に目をこすった。「いや、これは夢だ。夢に決まっている」


慌てて起き上がろうとした瞬間、遥斗は自分の体が半透明になっていることに気がついた。震える手で扉を開けると、両親が普段通りに朝の支度をしている姿が見えた。しかし、彼らの姿は鮮やかな色彩に満ちていた。対照的に、自分の体だけが灰色に染まっている。


「お母さん! お父さん!」


必死に声を上げるが、声は空気の中に吸い込まれるように消えていった。耳に届くのは、自分の声だけ。外の世界からの音は、まるで遮断されたかのように聞こえない。


「お母さん...」遥斗は母親に触れようとしたが、指はすり抜けてしまった。


指先に触れる現実は遠く

耳に届く声は空虚な反響


朝に聞いた詩の言葉が、現実となって遥斗を包み込む。


窓の外を見ると、通りを行き交う人々や車はすべてカラフルだった。しかし、その音は一切聞こえない。遥斗は自分だけが灰色の世界に取り残されたことを悟った。


パニックと混乱の中、遥斗は街へ飛び出した。誰かに気づいてもらおうと、必死に声を上げ、人々に触れようとする。しかし、すべては無駄だった。


そして...


「あっ! 君も...」


突然、背後から声がした。振り向くと、そこには自分と同じように灰色をした少年が立っていた。彼の目は驚きと安堵で輝いていた。


「やっと...誰かに会えた」


少年の言葉に、遥斗の中で新たな感情が湧き上がる。それは恐怖と、わずかな希望が入り混じったものだった。


交差する世界線の隙間で

彷徨う魂は、帰る場所を探している


遥斗の新たな物語が、ここから始まろうとしていた。


読者の皆様へ


「灰色の世界線」第1話を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


いかがでしたでしょうか。処女作とは異なる雰囲気や展開に、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この新しい挑戦を通じて、私自身も創作の新たな可能性を見出すことができました。


遥斗の冒険は、ここから本格的に始まります。彼が出会う人々、直面する困難、そして明らかになっていく世界の真実。これらを描いていくことに、私自身とてもわくわくしています。


この物語が、皆様の心に少しでも残るものとなれば幸いです。続きにご期待いただけると嬉しいです。


最後になりましたが、いつも応援してくださる読者の皆様に心からの感謝を申し上げます。皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。コメント欄などでのフィードバックをお待ちしています。


これからも「灰色の世界線」の物語をお楽しみください。


国産牛藍太郎より

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