準備は粛々と
一週間後、貿易港に商会の船として外装を偽造したアクタリウス軍艦が五隻入港した。
常に話を通してあったキターラ伯爵は、アクタリウス軍を先導して、更に馬車へと乗り換え商会の一団に扮して王都へと急ぐ。
だが、キターラ伯爵は軍を率いる司令官の顔を見て冷や汗を掻いた。
まさか、彼が自ら率いて来られるとは……
更に5日後、アクタリウス軍は王都について早々、ジャスティス公爵家へと向かう。
家令長のクリスに迎えられ、彼に案内された会議室には主要な高位貴族が勢揃いしていた。
全員、騎士服に鎧を身に付けており、今まで何の会議をしていたのか聞かずに分かる。
「遥々アクタリウスから良く来てくれましたな、我が義弟殿」
アクタリウス軍を率いていた司令官は、キースに迎えられ貴族達の顔を見渡す。
水色の髪で短髪、白銀の騎士服を着た細身だが引き締まった体つきの美丈夫。
名をミリアルド・フォン・アクタリウス。
アクタリウス王国現国王であり、キサラの伯父。
「ここに集まってくれた貴族の方々に、アクタリウスを代表して礼を言う。我が姪に掛かる火の粉を払うため、我が姉と義兄と共に今一度協力を要請したい」
ミリアルドは国王として威厳ある声音で言うと、貴族達に頭を下げて頼む。
「やはりアクタリウス国王は仁徳を持つ御方だ」
「我々の方こそ申し訳ない、一度ならず2度までもアクタリウス王国を愚弄してしまうとは」
「ミリアルド国王陛下、どうか顔を上げて下さい」
「今度こそ元凶たる王家を打倒し引導を!!」
瞬く間に士気が上がった。
「我が弟ながら、末恐ろしいわ。直ぐに人心を味方に付ける手腕は国王の器ね」
ミーティアは苦笑して壁際に背を預ける。
「だが、屈強なアクタリウス国王軍が来てくれて百人力だ。明日はいよいよ運命の日となる」
楽しそうにキースは微笑む。
「王家を滅ぼす前夜に乾杯!!」
「「「「「「王家を滅ぼす前夜に乾杯!!」」」」」」
ミリアルドがワイングラスを上に翳すと、貴族達も同じく上に翳して唱和するのだった。
「アクタリウス王国軍と共闘。ついに明日ね」
笑って私は窓辺に立つ。
窓から見える中庭には、仲良しの武装した親友4人が此方に向かって歩いてくるのが見えた。
やっと10年前の呪縛から解かれる。
屈辱的だった10年前のあの日。
怒りも恨みも全て晴らしましょう。
待って居てください。
パロマ殿下、フワフワピンク女。
このキサラが地獄に落として上げましてよ。