気付かぬ無能達
「は?キサラも、バレンシアも登校してないだと?しかも、バレンシアとキサラの取り巻き令嬢達まで?」
買収した教師からの報告に、王家専用サロンに居た俺はびっくりする。
「はい、暫く休むと連絡を受けたそれきりで」
教師は冷や汗混じりに答えた。
「……キナ臭いな。少し探りをいれてみるか」
即座に俺は判断し、愛しのレディに会うより先に王家に内々にと忠誠を誓ってくれていた下位貴族の影に命じた。
下位貴族の影は、本来ならば元王家の影の分家だったのだが、父上のやらかした失態により、本家と分家は袂を別ち、今は彼等が仕えている。
俺はまだ何とかなると、楽観的に考えていた。
男爵令嬢に愛なんか無い。
用があるのは、男爵令嬢が持つ稀少な聖女の力。
聞けば、最近覚醒して王立学園にも通えるのようになったとか?
あいつに俺の子を産ませ、聖女を沢山育て周囲の国々に嫁がせれば、俺の名声や権力は上がる。
キサラは側妃にして、仕事と外交を丸投げすれば良い。
俺は素晴らしい未来を予想しながら、サロンで思いを馳せていた。
私はアケスケ男爵令嬢ビアトリス。
可憐な私の容姿に、下位貴族の令息達は皆メロメロ。
だけど、何故か高位貴族の令息や令嬢には嫌われているのよね。
ちょっと媚を売って近付いたら、あの馬鹿王子簡単に私へ傾いたわ。
私は王子に愛なんて無いけど、王妃には成りたいわ。
贅沢して金の風呂に入るのが夢なの。
金の風呂。
今からでも楽しみだわ。
どんな暮らしが待っているのかしら?
ウフフ、ウフフ。
邪魔な高位貴族のキサラ達が学園を休むようになったと聞いて、胸が空いたわ。
アハハ、ざまあないわね。
俺はカルマ・パンデモニウム。
パンデモニウム子爵家令息であり、今も昔も主はジャスティス公爵家ただ一つ。
20年前の事件の際、子爵家は王家に仕えるふりをして監視をすること目的に残った。
バレぬように王家に忠誠を誓ったふりをして、王族を騙しつつ本家と主であるジャスティス公爵家に報告をしていた。
そして今日も。
「ふん、パロマ殿下の考えなんて分かりやすいからな。聖女の力を利用しようと企み近付いたのも分かっていたが、理由も目的も関係無く我がジャスティス公爵家を愚弄し仇なしたのは事実。予定通り我々は動く。子爵家は内乱が始まる直前まで監視しろ。場合によっては捕縛も許可する」
「承知致しました」
お父様に命じられ、カルマは直ぐに姿を消したわ。
まぁ、本当に便利。
さあさあ、さてさて。
知らぬパロマ殿下とビアトリスには踊って貰わないとね。