ジャスティス公爵家の今後の方針
クリスタと共に執務室に入ると、四人の男女が既に居た。
私と同じ黒髪の美丈夫な青年は、眼鏡を掛けていて難しい顔をしている。
キース・フォン・ジャスティス。
ジャスティス公爵家当主であり、我が父で政の激務に追われながら外交もこなす。
周囲の国々からは、真の王とされているわ。
お父様の傍らには、水色の髪、黒いマーメイドドレスを着た女性が立っていた。
ミーティア・フォン・アクタリウス・ジャスティス。
ジャスティス公爵家公爵夫人であり、我が母。隣国アクタリウス王家の第二王女。社交界の花と呼ばれていて、お母様の才覚はお父様に並んでいるから、夫婦で政をやっているの。
そう、現国王は王太子だった20年前。婚約者だったお母様に冤罪で断罪して婚約破棄した。
お父様は王太子の側近でありながらも、度重なる浮気相手の子爵令嬢とイチャイチャする王太子に嫌気が差して側近を辞退していた。
お互いに片想いしていたお母様とお父様は、一触即発だったアクタリウス王国との戦争を避ける為、一年間の婚約期間の後に結婚した。
その後に、王家の無理矢理な王命で私が婚約させられた時、先程の条件付きで婚約したの。
フォンは、王家の正当な血筋しか名乗れない。
私もキサラ・フォン・ジャスティス。
つまり父は亡き先代王妹だったお婆様の子だから正当な血筋。
お母様がアクタリウス王家の名をまだ持って居るのは、私に何かあった時にアクタリウスに行けるよう、まだ王位継承権を手放していないから。
フォンは、お母様のアクタリウス王家でも直系が名乗る名前だった。
クリスタと同じ顔立ちの青年は、隣にいる白髪の女性と目配せをした。
クレス・パンデモニウム。
パンデモニウム伯爵家当主でジャスティス公爵家の家令長。
リーナ・パンデモニウム。
パンデモニウム伯爵家伯爵夫人でジャスティス公爵家侍女長。
二人はクリスタの両親で、私の両親の右腕でもある。
「キサラ、お前の話は既に我々四人で話し合っていた」
お父様は私に言うと、深く溜め息を付いた。
「蛙の子は蛙なのね。……キサラ、今日から貴方は学園に通わなくて良いわ。会うのも仲が良い友人か、バレンシア様に限定なさい」
お母様は固い表情で私に言う。
「と、言われますと?」
この先が分かり、私も表情が固くなる。
「幸い、パロマ殿下の側近達は数ヶ月前に側近を辞してから我がジャスティス公爵家と、セイバー公爵家に付いてる。勿論各家と他の高位貴族もだ」
お父様は答えて私に背を向けた。
「アクタリウス王国と呼応して政変を起こすわ。無駄な血が流れないように内々に潜入してね」
楽しそうにお母様は笑った。
「我等パンデモニウム伯爵家は、王家の監視を強くすると共に公爵家の皆様の護衛を強化します」
「来るべき時の日を待ち受けるためにです。クリスタ、お前も覚悟をなさい」
クレスが言うと、リーナがクリスタに命じる。
「承知致しました」
クリスタは返事をして頭を下げた。
「期限は1ヶ月以内、皆気を引き締めろ」
「「はっ!!」」
「承知致しました!」
クレス、リーナ、クリスタが返事をする。
私とお母様は笑みを浮かべた。