クズ王子と浮気相手との邂逅
私は伝書鳩で公爵家に知らせを飛ばすと、直ぐ様学園から外に出る。
「ん?キサラ、この時間に何故外にいる?」
だけど、運悪く今一番会いたくない奴等と出くわした。
金色の髪、見た目は麗しい顔立ちの少年は右腕に少女をくっつけていた。
パロマ・バズナビ・エンシャルト。
エンシャルト王国の第一王子だが、側妃の子なので後ろ楯も母親の家が子爵家と弱く、正妃の王子達も年子で器も能力も高いことから、パロマ殿下の後ろ楯に我が公爵家が欲しくて半ば無理矢理以前の婚約者と引き離され私は婚約者にされた。
「私は体調が悪くて早退するつもりですの。パロマ殿下こそ、今は授業の時間では無くて?何故外に?」
私はパロマに問い掛ける。
「授業など私には必要ない。此処に居るアケスケ男爵令嬢ビアトリスと有意義な時間を過ごしていた方が良い」
そう言ってパロマは男爵令嬢ビアトリスを抱き締める。
桃色の髪、学園の制服を着崩して大胆に胸を強調した彼女は、私を見て嘲笑する。
本来、男爵令嬢は高位貴族に対して相応の振る舞いをするのが常識。
つまり、こいつは常識や礼節を知らない。
「そうですのね?では、私はこれで失礼致しますわ」
私は笑みを浮かべ、パロマ達に背を向けて校門に向かった。
校門には、既に我が公爵家の馬車が待っており、御者と護衛騎士数人が待機していた。
護衛騎士のエスコートで馬車に乗ると、馬車は出発し私は頬杖を付いた。
「あそこまでパロマ殿下は馬鹿だったかしら?いえ、野心家の彼はもっと賢かった筈。……このまま泡良ければ……」
私は楽しそうに笑みを浮かべる。
記憶の中で、公爵家の幼い令息が微笑んでいた。
「先ずはお父様に進言なさらないとね」
油断大敵だと、私は背筋を伸ばす。
馬車は王都の中心を抜けると、暫くして貴族街に入り奥へと進む。
やがて、王宮と変わらない広大な屋敷公爵家に入って行く。
「キサラ様、お手を」
「ありがとう」
馬車が止まり、私は護衛騎士にエスコートされて降りた。
既に家令を始めとする全使用人がズラリと並び待機している。
「キサラ様、お帰りなさいませ」
「「「「「お帰りなさいませ」」」」」
家令クリスタが頭を下げると、他の使用人達も続く。
我が公爵家の使用人達は、皆高位貴族の出なので教養は勿論、能力も高い。
「ただ今」
私はクリスタに鞄を渡して歩き出す。
「公爵閣下に至急お話とありましたが、もしやパロマ殿下の事ですか?」
「流石はクリスタ、そうよ。事態は想定より悪いわ」
クリスタに聞かれ私は答えて屋敷に入る。
「影の報告は聞いておりましたが、パロマ殿下はよほど破滅をお望みなのですね」
その瞬間、クリスタから冷気が漏れ出す。
銀色の長い髪、伊達眼鏡を掛けた中性的な顔立ちの青年。
クリスタ・パンデモニウム。
パンデモニウム伯爵家の嫡男で有りながら、私専属の家令でちょっと過保護が玉に傷。
パンデモニウム伯爵家は、昔は王家の影として忠誠を誓っていたらしいけど、20年前の現国王の失態で忠誠を無くし、変わりに政を担う我がジャスティス公爵家に一族が仕えてくれていた。
我がジャスティス公爵家が政を担い、バレンシアのセイバー公爵家が司法や立法を担っているのが現状。
国王は飾りで、もし万が一、両家の公爵家に仇なす事があれば……国王や王族の未来は無いし、我が両家も動くと私の婚約の際、そう契約していたの。
……お父様、お母様荒れるわね。
溜め息をしつつ、私はクリスタと共に執務室へと向かった。