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父親の正体

そして迎えたアメリカ大会。


僕は、優勝を果たしたのだった。


だがメディアの方々は、僕の優勝よりも聞きたいことが山程あるようだった。


「今回の優勝を今一番伝えたい人は、どなたですか?」


ここで僕が母親と答えるのではないかと期待しているのだろう。


僕は、彼らの期待に応えることにした。


「報道があったので皆さんお察しだと思うのですが、今アメリカにいる母に伝えたいと思います。今までどこにいるか分からなかった母が今同じ国に存在していると思うと考え深いものがあります。試合後に10年ぶりに会えることを願っています。」


彼らは、僕に向けたフラッシュの数を増加させた。


僕としては、彼らに向かって発言したというよりかは、自分へ言い聞かせたようなものだった。


「10年ぶりにお会いしたら、優勝以外に伝えたいことは、ありますか?」


「まずフィギュアスケートに出会わせてくれたことに感謝したいと思います。どんなに苦しいことがあっても今日まで競技を続けられたのは、母に会いたいという気持ちがあったからです。なので感謝という一言では言い表せないものがありますね。」


「質問はこれまででお願いします」


スタッフの方がこれ以上質問されないように引き剥がしてくれた。


「舞斗、優勝おめでとう」


僕は、控室の前で高級スーツを見に纏った中年男性が立っていることに気付いた。


「会長、ありがとうございます。会長がグランプリシリーズに帯同するなんて珍しいですね。」


会長がグランプリシリーズまで付き添うことは、非常に珍しい出来事だ。


彼は、僕に祝福の言葉をかけるためにここまで来たのではない。


全く異なる意図があることは、分かっていた。


「舞斗、今日お母さんに会いに行くのか?」


彼の目は、焦りからか目が泳いでいるように感じた。


「はい。そのつもりです。自分の目でしっかりと確かめたいんです。」


「それはやめておいた方がいい。お母さんは、君のために君のそばを離れたんだ。その気持ちも分かってあげなさい。」


会長は、いつも母の話をすると、慌てたように引き留める。


移籍してすぐの頃は、会長が何故僕と母を会わせたがらないのか不思議に思っていた。


だが今では妙に腑に落ちる。


「分かっています。今まで僕を育ててくれてありがとうございます。お父さん。」


「舞斗!なぜそれを?」


彼はその場に座り込んでしまうのではないかと心配になる程、唖然としていた。


「僕が気づいてないとでも思ってたんですか?」


彼は、何度も頷いた。


「はじめは、本当に信じていました。親切な叔父さんが僕をサポートしてくれているのかと。でも気づいたんです。僕以外に無償で寮に住んでいる人やレッスンを受けている人がいないことに。」


「それでも僕は、期待されているからだと思っていました。でもある日聞いてしまったんです。あなたが協会の人に自分の息子の話をしているところを。そしてすぐにその息子は、僕であることを知りました。」


「そうだったのか。これまで知らないフリをしているのは、辛かっただろう。このような想いをさせてしまってすまなかった。僕は、君が3歳の時に彼女と離婚をしたんだ。だから君は、僕の顔を覚えていなかったのだろう。」


「はい。でも父と母と3人でアイススケート場によく遊びに行っていたのを覚えています。」


「そうか。その時の僕は、コーチ業やアイスショーなどで全国を旅していたんだ。だからほとんど家に帰ることがなかった。そして僕たちは、すれ違い離婚することになってしまったのだよ。」


「そうだったんですね。」


「舞斗の母親から連絡が来たのは、5年後のことだった。その時に病気を患ったことと息子を引き取ってほしいと言われたんだ。あの時母親が迎えに来ると嘘をついてしまってすまなかった。僕は、ずっと後悔していたんだ。君に嘘をついてしまったことを。」


「僕が母親の元に残ると言うことを聞かなかったからですよね。あの時母親が迎えに来ないと知っていたら、東京まで来ていなかったと思います。あなたがいなければ、今の僕はいません。オリンピックで2度もチャンピオンになることは、できていなかったと思います。ありがとうございます。」


「舞斗…」


「舞斗!車の手配が完了したぞ。」


遠くの方から後藤さんが走ってきた。


「それでは行ってきます。」


僕は、後藤さんが教えてくれた住所の元へと向かったのだった。


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