舞斗の父親の正体
「もしもし。私よ。どういうことなの?」
舞斗の母親は、ある男に電話をかけた。彼女は、焦っているのか電話を持つ手が震えていた。
「…」
「何か言ってちょうだい。あなた、約束したわよね?あの時。」
「ああ。」
「私の元にいたら彼は、不幸になる。だから俺に任せてくれってそう言ったわよね?」
舞斗の母は、口から発せられる言葉の数が増えると共に声のボリュームも徐々に大きくなっていった。
「ああ。言ったさ。現に彼は、世界チャンピオンまで昇りつめた。」
彼は、誇らしげだった。世界チャンピオンである舞斗を育てたのは、母親ではない。彼なのだから。
「もしかしてあなたがあの記事売ったんじゃないでしょうね?」
「そんな訳ないだろ?俺もあの子の父親なんだ。」
「あの記事を絶対に舞斗に見せてはいけない。あの子が真実を知ったら傷つくわ。それだけは止めなくては。」
「もう日本中の全ての人がこの記事を読んでしまった。僕たちの計画は、水の泡さ…こうなってしまったなら彼にもう一度会ってあげてくれ。」
「無理よ…私は、あの子を裏切ったも同然の行為をしたのよ。」
「いいや。舞斗の為にしたことではないか。」
「でも彼は、私を決して許してはくれないと思うわ。」
「今度のアメリカで行われる大会に舞斗も出場する。来てくれることを願っているよ。」
「考えておくわ…」
そう言って電話を切った。




