来シーズンに向けて
次の日僕は、いつもの様に練習場へとやって来た。
「今年のグランプリシリーズ、舞斗の派遣先は、アメリカとカナダに決まったわ。」
すると、鬼塚コーチが僕の顔を見るなり、気まずそうに話しかけてきた。
もう次のシーズンが始まるのだ。
僕が引退を表明しない限り、自然とアサインされるのだ。
「来シーズンも続けるのよね?」
コーチは、下を向きながら尋ねた。
僕は、コーチの目をしっかりと見ながら、首を縦に振った。
コーチは、僕の方を向き、安心したようだった。
「アメリカに決まったのも運命だと思うの。お母さんに会いに行ってみたら?」
「いや…」
僕は、あからさまに嫌な表情を浮かべてしまった。
今は、母について考えたくなかったのだ。
「気が向いたらでいいからさ。とりあえず、アメリカ大会に向けて練習して、試合が終わった後に会い行こうと思ったらでいいからさ。」
「はい。考えてみます。ありがとうございます。」
僕は、鬼塚コーチの言葉を流すように返事をした。
コーチが練習に戻ってからも僕は、中々リンクに入る気分になれなかった。
アメリカに行けば、母に会えるかもしれない。
だが母は、僕を迎えに来ないで医者と再婚し、異国の地でセレブ生活を送っていた。
僕には、会いたくないのかもしれない。
そして僕は、母のことを許すことができないかもしれない。
そんなことを考えながら1時間もの間、ベンチに座り込んでいた。




