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あずさの二面性

1度目のオリンピック優勝後。


 僕は、テレビ番組や雑誌の撮影などメディア関係のお仕事が多くなっていた。


 そこで斉藤あずさを出会った。


 彼女は、女優として活躍しつつ、ニュース番組のコメンテーターなども務めていた。


 フィギュアスケートの大ファンということもあり、僕たちが出場している試合などのインタビューなども行うようになっていた。


 僕は、一方的に彼女の大ファンだった。


「斉藤あずささんですか?僕、ファンです。」


この言葉が地獄への始まりだった様に思う。


「ありがとう」


彼女は、僕が差し出した手を握り返した。


「あずささん、フィギュアスケートについて詳しいんですね」


ニュース番組の控室。


奥の椅子に深々と座り、足を組みながら手にはタバコを持っていた。


「まあね」


そう言って前髪をかき上げた。


彼女から醸し出される香水の匂いに負けそうになった僕は、


「いつからフィギュアスケートをお好きになられたんですか?」


「ふふふ」


彼女は、不気味な笑みを浮かべた。


「私がフィギュアスケートが好きって?」


「はい。テレビ番組でそうおっしゃっているのを聞いて」


「そうね。たしかに言ったわ。」


彼女は、テーブルにある灰皿にタバコを捨てた。


「全て仕事の為よ。あなたが活躍してからフィギュアって注目度が高くなったじゃない?他に詳しいタレントもいないからチャンスかな?って思ったのよ」


僕は、悔しかった。


彼女は、心の底からフィギュアスケートを好きでいてくれてると信じていた。


テレビの奥で笑顔を浮かべる彼女は、作り上げられた姿だった。


その事実が当時の僕にとっては、あまりにもショックだった。


僕が愛して止まないフィギュアスケートという競技をこの人にテレビ上で語られることに腹が立ったのだ。


「あずさちゃん!佐藤選手!出番です!」


控室にプロデューサーが入ってきた瞬間に彼女は、先程までの態度を一変させた。


「はーい!今すぐ行きます!」


声色をワントーン上げ、手を挙げていた。


僕は、初めて女性の二面性というものを目の当たりにした様な気がする。


「それじゃあ、よろしくね。これからも末永く。」


彼女は、僕に向けて、ウインクをして、どこかへ向かって行った。


彼女の恐ろしさは、こんな程度では終わらなかったのだ。

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