第陸話
後日、サリエルは日も落ちた頃に目を覚まし塔からの生還と完全攻略を達成したことにより一躍有名人となった。
国王の謁見要請も「疲れたし眠いからやだ」の一点張りで勲章と報奨金の郵送だけで済まされたがそれに納得できない騎士団の過激派は夜襲を仕掛けたが
「キャァァァァァァアアアアアアアアア!」
早朝に犬の散歩をしていた老人にミイラ化した死体が発見された。
◇
「ふはぁああぁぁぁ」
場所は移りサリエルが宿泊している宿に移る。
カーテンの隙間から、差し込む朝日に瞼を刺激され小鳥の囀る音が目覚ましのアラームとなりサリエルを起床へと導く。
眠い目を擦りながら純白のドレッサーの前に置かれた椅子を引き出すと勢い余って椅子を外に放り投げてしまう
サリエルはふへぇ?と腑抜けた声を上げながら特に気にする素振りもなく櫛で髪の毛を梳かし【時空魔法】が付与されたブレスレットを起動し異空間から衣服を取り出し着替える。
全ての身支度を終えると不意に部屋の扉がノックされる
「サリエル私だ・・・・入るぞ」
キイィと丁番が軋む音と共に右目に大きな傷と獅子色の髪を持った短髪の大男が入ってくる
「お父さん!」
サリエルはその男性を父と呼び勢いよく抱きつくとその力を完全に相殺し受け止め強く抱きしめた
される側のサリエルは幸せそうな表情になると男の胸に頭を擦り付ける。
「3ヶ月ぶりだなサリエル。元気にしていたか?野菜はちゃんと食べてるか?」
「大丈夫だよ〜お父さんは?」
「私も元気にしてたさ。天下のダンカン様とは私の事だ、強者は体調管理も完璧でなければいけない。常に最高の体を保ち続けることが強者の道だ」
「私もたいちょーかんり出来てるからサイキョーだね」
「そうだな・・・偉い偉い」
「フフン♪」
ダンカンは優しくサリエルの頭を撫でる
側から見れば仲の良い親子にしか見えないが二人は書類上は親子であっても血縁上の親子ではない。
サリエルは元々、捨て子であり偶然か必然かそこに居合わせたダンカンが保護し今日まで育て上げたのである。
その絆の深さは本物をも凌ぐ
「朝食を食べたらギルドに向かうぞ」
「フレイアとレオも来てる?」
「ああ、勿論だ。二人ともサリエルに会いたがっていたぞ」
「じゃあ、早く行かなきゃ」
サリエルは宿の一階にあるイートインスペースに向かって飛び降りカウンターに向かい「いつものー」と叫びバイトの女性を困らせ
それをダンカンが解決するという流れになった。
「サリエルは育ち盛りなのだから私の物も分けよう。先ほど、買い食いをしたからもう満腹だ」
「いいの!ありがと〜お父さん大好き!」
ダンカンは平常時は冷静沈着な頼れる上司の様な人間だが、愛娘のことになると純度100%の親バカへと変貌する。
彼に憧れ尊敬する者達が見たらどう思うのだろうか・・・・
◇
冒険者ギルドについた二人は、クエストボードに目もくれずに2回の食堂に向かうと中央のテーブルで食事をしている青年の元に向かった。
青年は白銀の髪と整った目鼻立ちと知性を感じさせるサファイヤブルーの瞳を持ちモノクルを着けている。
「レオ〜」
サリエルが活発に両手を振り乱すとレオと呼ばれる青年はサリエル達に気付き手を振り返す
サリエルは駆け足でレオの元に駆け寄るとサリエルを受け止めた
「久しぶりだなサリエル!少し身長伸びたか?」
「うん!レオはげんき〜?」
レオはニカッと笑うと腕に力瘤を作りその場でスクワットしてみせた
「この通り元気が有り余ってるぞ!」
そんな、二人の兄妹の様な掛け合いを遠目で見守るダンカンに声がかけられる
「おはようダンカン。娘さんレオに取られちゃうんじゃないの?」
「サリエル自身の選択なら異論はないさ。だが、幾ら仲間でも一人の親として見定めさせてもらうがね」
「正常なのか、親バカなのか相変わらずね。行きましょうか」
含みのある喋り方をする先俺帽子を被った紫髪を持つグラマラスな体型な美女がダンカンの手を引くとダンカンも女性について行く
「フレイアだ!フレイア〜」
「さあ、おいで私の可愛い愛しのサリエル〜ゴハァ⁉︎」
「フレイアの匂いだ〜」
「さ、サリエルの匂いが・・・するわ」
サリエルの突進が鳩尾に炸裂しフレイアは子鹿のように膝を震わせている。
そんなのお構いなしだと言わんばかりに頭部を押し付けながら跳ねるサリエル
暫くして、レオの取っていた席に全員が座ると顎を摩りながらフレイアが口を開く
「これで【赫の鎮魂歌】全員集合ね」
冒険者にはいくつか種類がある
一人で依頼をこなす”ソロ“
二人1組で依頼をこなす”バディ“
そして、サリエル達のような四人以上・十人未満の冒険者から構成される”パーティー“
数あるパーティーの中でも【赫の鎮魂歌】は世界でもトップクラスのパーティーであり、世界を混沌の渦に飲み込み”意思ある災害“と呼ばれる【魔王】でさえも討伐した正真正銘世界最強のパーティーである。
虐殺と破壊の化身と畏怖される【惨殺姫】サリエル
万の兵士すらも雑草の様に薙ぎ払う【殲滅王】ダンカン
千の魔法と億を超える学問を極めた【大賢者】フレイア
霊薬すらも完全再現する錬金術師の王【錬成王】レオ
一人一人が国の重鎮を警護する近衛騎士団五つ分の戦力を持っている正真正銘の化け物集団だ。
「これで全員揃ったな」
「このメンバーで集まるのも4年ぶりですよね?」
「もうそんなになるのね。これからどうするの?」
ダンカン・レオ・フレイアはこれからの動向を話し合っている横でサリエルは注文したラザニアを満面の笑みで頬張っている姿を見て3人の表情が緩んだ。
◇
「これからの動向についてもう一度、確認する。サリエルもちゃんと聞きなさい」
「ん・・・・・は〜い」
「これから私達は此処で【勇者の園】と合流し藝術王国 フラリアに向かう。其処のところは全員構わないな」
『異議なし』
ダンカンはテーブルに世界地図を広げるとチェスの駒に似た物を地図上に置く
「フラリア迄はどんなに急いでも1ヶ月は掛かってしまう。其処でだ依頼主であるフラリア国王が飛龍を手配してくれた。私達は道中のケオウニスの街で一晩休息を取りフラリアに向かう。いいな?」
『了解』
「依頼内容の確認に入る。内容は簡単だ”黒の塔“探索兼攻略が今回の依頼だが、最近フラリアが戦争の準備を始めているとの情報があるのでその調査も同時に行う。いいな」
『りょうはいなし』
「サリエルはともかく・・・・何故、お前らもラザニアを食べているんだ?」
3人はラザニアを頬張りながら返事をしていた
「いい匂いがしたから」
「小腹が空いたからです」
「冷めちゃうから」
ダンカンは溜息を吐きながら頭を抱えた。
それでも尚、3人は食事をしながらも目は一流のそれなので話を続けようとした瞬間
ゴーンゴーン
12時を知らせるギルドの巨大な柱時計が鳴り響く
「そろそろだな」
「億劫だわ」
「勇者ってどんな人間なんですかね?」
背後の階段から大きな足音が響き始め暫くするとサリエル達の座る席に足音が近づいてきた。
「こんにちわダンカンさん。それに【赫の鎮魂歌】の皆様、お会い出来て光栄です!あっ、自己紹介がまだでしたね。俺はランスロット・フェノメノといいます。ランスロットとお呼びください」
金髪碧眼の好青年のことランスロットは爽やかなイケメンスマイルをサリエル達に向けるが女性陣の反応はなしだ
『よろしく〜』
その代わりにあっけらかんとした返事を返された
だが、ランスロットはそんな冷たい反応をされながらも自身を鼓舞し仲間の紹介に移った
「こいつは俺の同郷から一緒に出てきたグローと言います。寡黙で言葉数が少ないですが良いやつです」
「よろしくお願いします」
グレーの髪の毛を持った大男のグローが頭を下げる
「グローって言ったかしら」
「はい」
「身長は?」
「235です」
フレイアはグローの身長を聞きダンカンの方に向き直る
「ダンカン身長は?」
「224だが?」
「そっ・・・・ごめんなさい続けて頂戴」
ランスロットは困り顔になりながらも「わかりました」と告げると紹介を再開した
「こいつは【魔聖】のロロ・プレリュードです」
「ふんッ」
朱髪朱眼の魔法使いであるロロはいかにも魔女っ子の様な服装をしている。
因みに【魔聖】は【賢者】の下位互換であるが彼女の実力は確かな物なのだが性格に難ありだ
「最後に【聖職者】のルーナです」
「ご相伴に預かりました“五菱聖印教”のシスターを務めさせてもらっていますルーナです。未熟者ですが皆様のお役に立てるよう尽力いたしますので、少しの間ですがよろしくお願いします」
ルーナは恭しく頭を下げるとサリエルの横に移動しサリエルの目線まで姿勢を下げる
「特にサリエル様とは一度、ゆっくりとお話ししたいと思っていました」
「ルーナ怒ってる?」
「何故、私が怒っているとお思いなのですか?」
「なんとなく、そんな気がしたから」
「もしかしたら緊張しているのが表に現れてしまっているのかもしれないですね」
ごく普通の会話ではあるがダンカンはルーナから一瞬、立ち込めた異様な気配を感じたが気のせいだと割り切った。
◆
『やっと見つけたぞサリエル・・・・・私から全てを奪ったお前を許さない。目には目を歯には歯をお前に奈落の絶望をくれてやる』