第肆話
カツカツとブーツを鳴らしながらサリエルは階段を駆け降りていくサリエルはただ降りていくだけでは暇すぎて飽き飽きしてきたのでダインスレイヴと会話や互いが互いについての質問を投げかける
「そういえばダーインは他の武器と違って喋れるけどどうなってるの?」
当然の疑問だこの世界には喋る武器などないましてや自我を持って流暢に喋ることも意思の疎通が出来るのは明らかに異常だ。
それこそ対話の出来る武器はあるがそれは【神剣】と呼ばれ意思の疎通は可能だが使用者の要望に反応するだけで対話という対話は出来ないまるで音声認識のアーティファクトと会話しているような感覚に近い・・・・言ってしまえばこの世界の技術力ではそれが限界だ。
「我もハッキリとは覚えていないのだ。だが、気がついたらあの空間に居たので我自身もどうなっているのかまでは知りかねん」
「じゃあさ!【吸血の呪い】ってなんなの?」
「それに関してはちゃんと答えられるから安心せい!【吸血の呪い】は“一度鞘から抜いたら生き血を吸い尽くさない限り鞘に収まらない”と言う呪いだ」
ダインスレイヴはサリエルの何気ない質問にも懇切丁寧に返答していく。
「じゃあ、ダーインは錆びないし折れないし切れ味もいつも最高である代わりに一度抜いたら相手の血を吸わせてあげないと鞘にしまえないの?」
「その通りだ姫よ」
サリエルはうんうんと笑顔で頷きダインスレイヴを鞘から抜くと
カランカラン!
と乾いた音がフロアに虚しく鳴り響くサリエルはダインスレイヴの【吸血の呪い】の効果についても理解している。
だが、サリエルはそんな事はどうでも良いと云わんばかりに自身の後方に鞘を投げ捨てたのだ!
ダインスレイヴはそのサリエルの奇行に驚いた
「姫!何をやっているんだ我には【吸血の呪い】があるのだぞ!?」
サリエルは何を今更と言わんばかりの表情でダインスレイヴを征する
「だって一度抜いたら鞘に収まらないんでしょ?だったら鞘は抜くのに邪魔だし包帯でじゅうぶん!それにダーインは錆びないんでしょ?だったら鞘なんて邪魔なだけだよ!それに獲物が来てくれたときに包帯ごと切り刻めるからさ♪」
狂ってる、頭のネジがぶっ飛んでいる・・・・・それがダインスレイヴがサリエルに抱いた感想だったが不思議とダインスレイヴは心地良く感じた。
もしかしたらダインスレイヴも狂っている
◆
その後もダインスレイヴを取り返すかのように見える動きを繰り返す魔物をサリエル達は軽くあしらいつつ戦闘が起こるたびにダインスレイヴは魔物の血を吸収しゆっくりゆっくりとサリエルに適した形態へと変化していく。
グリップの質感、刀身の形状、刀身の重量、刀身の厚さなどを変えつつ第一階層に降りてきたサリエル達は瞬間的に二階層に退避した。
途轍も無いプレッシャーを感じ冷や汗を流していたそして、ゆっくりと足音を建てないように細心の注意を払いながら一階層の様子を伺う
サリエルの視界の先には明らかに入ってきたときにはいなかった化け物が出口に仁王立ちしていた。
2つの牛の頭と4つの腕が生えた異形のミノタウロスが白い息を吐きながら立っていた
「何あれ出口になにかいるけど?」
「あれがこの塔の最後の関門でしょうね」
サリエルは階段から飛び出し近くの柱の陰に身を潜め様子を伺う。
「右上の手にはトゲトゲのメイス右下の手にはハルバード左上の手はモーニングスター左下の手は大剣・・・・面白そう♡」
「覚悟は出来たぞ姫!飛び避けろ姫!!」
その刹那、サリエル達の隠れていた柱とその周りの柱をモーニングスターが薙ぎ倒す。
「ふう、危なかった」
「これは一気に仕掛けるぞ!」
サリエルは強く踏み込みミノタウロスに肉薄しダインスレイヴを振るうがメイスでその斬撃を防がれる。
「GYUUUUUUUUU!!」
メイスが振るわれサリエルが吹き飛ぶサリエルは空中でクルクルと曲芸のように周り柱にダインスレイヴを突き刺してその場に留まるが振るわれた大剣によってその柱も切り払われる。
咄嗟に飛びよけダインスレイヴ振るうがハルバードの槍先に防がれる
「よっとッ!」
モーニングスターが高速で振るわれそれを剣で弾き回転を付けて鎖を断ち切ろうとするが鎖は強固で到底切れる品物ではなかった。
そして、ハルバードを振るわれ余りの速度で衝撃波が発生しサリエルを吹き飛ばす。
「フゥ~凄いパワー」
魔剣の間の前にいた2体のミノタウロスはあくまで前座に過ぎなかったこのミノタウロスこそが黒の塔最強であり最凶の魔物であり本命だ。
「ッ!」
サリエルは本能的に上体を仰け反らせ膝を曲げて体高を下げるとサリエルの鼻先スレスレをモーニングスターが掠めた。
サリエルが本能的にあの時避けていなければ確実にモーニングスターに頭部を粉砕されていた。
体験による横薙ぎの斬撃やメイスによる連続打撃攻撃の嵐がサリエルを襲う!
その全てをサリエルは天性の戦闘感と動体視力で回避を続けるが近寄ると大剣&メイスによる斬撃と殴打による攻撃
メイスの当たらない距離に離れるとハルバードによる横薙ぎの斬撃と刺突による猛攻を受け
遠距離になるとモーニングスターによる不規則な予測不可能な遠距離攻撃が炸裂する!
「強いあのうしさん!」
「此処が最後の戦いだ姫!」
絶望的な状況だ誰もが顔を青褪めさせ戦意喪失しそうな状況でありながらサリエルは・・・・・
笑っていた
今まで幾多もの強者との戦闘を経て来たがたった一体で全方位をカバーできる弱点が殆ど無い敵と対峙することは無かったその事実が状況がよりサリエルを興奮させた!
「【鮮血の舞】」
肌を滴り流れ落ちる様な滑らかなステップとフットワークを組み合わせまるで一つのね美しい舞を舞うようにミノタウロスの激しい襲撃を回避し全ての腕を切り落とし肉薄し腕を無くしたミノタウロスはなされるがままに首を落とされた。
「やっと倒せたな姫」
「うん!帰ろうか」
だが、扉は開かなかった。
「なんで?」
「姫!逃げろ!」
「えっ!速ッ!」
それは一瞬の出来事だった。
扉を開けることに集中していたサリエルはダインスレイヴの叫びに跳ねられるように反応しなんとか刀身を盾にすることで直撃を防ぐがまるで投石機の石のようにサリエルはフロアの壁に叩き付けられる。
「カハッ!」
サリエルは吐血しのめり込んだ壁から抜け落ちその場にうつ伏せになる。
サリエルの体からは出血が始まる。
その流れ出た血はダインスレイヴに吸収され始めるダインスレイヴ本人も無意識に吸収してしまっている
「姫!起きろ姫!」
ダインスレイヴは必死にサリエルの名前を叫ぶがサリエルは咳き込むだけで一向に返事をしない。
ペタペタとこの状況に似つかわしくない可愛らしい足音を響かせながら音の主がサリエルたちに近づいていた。
それは4つの赤く輝く瞳と謎の粘液でベタベタになったサリエルと同じ身長ではあるが腕にはダインスレイヴに似た剣を握った角の生えた人型の化け物だった。
明らかに先程のミノタウロスとは別格の何かだと言うことはダインスレイヴは即座に理解した。
だからこそダインスレイヴはなんどもサリエルの名前を叫んだ姫!姫!姫!とだが、その叫びも可愛らしい足音が真横に迫った事で止んだ。
ドクンッ
化け物が剣を逆手に持ちサリエルの心臓がある位置をロックオンし振り下ろす
ダインスレイヴは自身の初めての使用者を失ってしまうという絶望に苛まれた
ドクンッ