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松尾芭蕉忍者伝説  作者: 鮫島シャチ
9/12

8.ロバート君のおやつよ

ワシは目を覚ました。

ともすれば、河合というモノノフに斬首されてしまったという可能性もあったが、どうやら命は無事だったようだ。

それも当然といえば当然か。

ワシはそんなところで死んではおらぬのだからな。


「起きたわね」


ここはワシの自宅の寝床で、傍には河合空が控えていた。


河合空、この女とは面識がある。

お空だ。

ワシが伊賀の里の侍大将藤藤藤忠に仕えていた時の同僚のクノイチ。


しかし、当時とは似ても似つかぬピンク色の忍者ルックである。

ところでこの女、下手をすればワシより年上のBBAなわけだが、当時と変わらぬ美貌?いや、さらにあどけなささえ感じさせる顔立ちは如何なものだ。

これが忍術というやつなのか。


「何か失礼なことを考えてないかしら?まぁ、いいわ。はい!」


起き上がったワシに河合空は、ずいっと小刀の乗ったまな板を差し出す。


意味が解らなかった。


「あんたさぁ、将軍様の目の前で寝落ちしておいてタダで済むとか思ってないわよね?解るわよね、エンコ詰めなさい」

「エンコ?エンコウ?エテコ??」


ワカリマセン。

ワカリタクモアリマセン。


「小指を切り落とせって言ってんのよ!」

「やだよ!そんなことしてどうすんだよ!」

「ロバート君のおやつよ。綱吉様の気も晴れるわ」

「ロバート君?」

「大広間に居たでしょ、人外のモフモフが一匹。お犬様よ」


あいつか!?

っていうか、なんつー名前だよ?


・・・これは、多分シャレにならない。

近年ずっと旅に出ていたワシでも、生類憐みの令といって、なんか犬至上主義みたいなルールが作られたと耳にしたことがある。

ただし、一つ言い訳をさせてもらうならば、寝落ちしたのではなく、あまりの出来事に失神したのであって、そのペナルティとしては冗談ではなく重すぎるものだった。


「お、お空。いろんなことがありすぎて脳がショートしそうだ。まず整理がしたい。確か将軍様から任務をいただいたかと思うのだが」

「・・・」


河合空はジト目でワシを見ながらも、申し出に応じた。


「仙台藩に不穏な動きがあるから密偵をするという話ね。安心してメインは直臣の私よ」

「ワシ、忍者じゃないんだが」

「まだそんなこと言ってんの?まぁ、表向きはね。最近は俳句で名が売れているみたいじゃない。紀行文で旅をしている人間でメジャーなあんたには利用価値があるということよ」

「えっと、つまりは?」

「この件はあたしにかなりの裁量が委ねられているわ。つまり、あたしのシナリオは文化人で有名なアンタは5作目の紀行文のため弟子を連れて旅をする。で、メジャーで目立つアンタを隠れ蓑にして、陰で私が暗躍するって寸法よ」

「旅には金がかかるんだが」

「もちろん幕府持ちよ、通行手形の心配も要らないわ」


なるほど、少し冷静になってきた。

つまりは上手くいけば、スポンサー付きでもう一花咲かせることができるということだ。

なんだかリスクも伴いそうな話だが、このまま朽ち行く老後を容認するより、メリットもロマンもありそうだった。


しかし、


「ワシ、忍者じゃないんだが」

「自覚がなさすぎるのね。わかったわ。まず松井家、これは確かに忍者の家系ではないのだけど、ご婦人は忍者菊池家の末裔よ。家に代々伝わる秘伝書や忍者道具はなかったかしら?」


言われてみれば、怪しい道具箱があったな。


「菊池忍者の末裔はその秘伝を伝承すべく、子に忍術を伝授させようとしたはずよ」


あの植物を飛び越えたり、かくれんぼをしたり、木を登ったりする訓練かな?


「極めつけは三代目の兄弟は新たなる進化を求め呪術師の血を取り入れたの。それにより超人的な記憶力を手にしたと業界では有名なのよ」


それって、それってまさか・・・


「アンタは確かに身体能力では常人と変わらず隠密や戦闘忍者としては劣等者かもしれないけど、聴力や記憶力を生かした諜報忍者としては実力は相当なものよ」


ワシは、ワシは忍者だったのか?


「だからあたしはずっとアンタに目をつけていたの。いつか利用できるようにって。俳人活動で泳がせていたのも今となっては好判断よね!」


この女、腐界の住人ではなかったか?

ちょっとキャラ変わりすぎだろう。




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