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それでも君は私を選んだ  作者: 田辺京
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きれいな夕焼けのその下で、貴方は私に何を想ふ

ちらりと空を見上げた。

その日はきれいな夕焼けだったことは覚えている。

あの空の綺麗さを私はこれからも忘れることは無い。

きっとずっと、覚え続けていなければならない。

そんな気がした。



高橋先輩と映画を観に行く当日。

お母さんと一緒に決めた可愛い服を来て映画館まで歩いていた。

友だちと遊びに行く時よりも、足が軽やかに進んでいく。

この日をずっと待っていた。

色々と悩んで頑張ってアレンジした髪も、不器用な私にとっては上出来だった。

いつもと雰囲気の違う私を友人が見ればなんて言うだろう。

待ち合わせ場所に10分前に到着して、高橋先輩にメッセージを送る。

『待ち合わせ場所に着きました!待ってます。』

冷静に、浮かれてない感じを出さないように話をしよう。

緊張を隠して、きちっとしていれば大丈夫なはず。

携帯に向けていた目を前に向ければ、遠くから高橋先輩が自転車に乗って来ているのが見えた。

その姿を見ただけで、ドキドキが止まらなくなる。

今から観る映画は、幸せな学校生活を送る2人のカップルのお話。

友人や周りの人に嫌われている男の子が、恋人である女の子に迷惑をかけないように、離れていこうとするお話だ。

最後はちゃんとしたハッピーエンドらしい。

あまり恋愛ものを観るわけでもないし、詳しくはないのでよく分からないけど。

人気のある有名な小説を映画にしたものだとか。

どんどん近づいてくる先輩を見ながら、ふと思う。

もし、先輩と付き合うことになったら、周りの反応はどうなんだろうと。

私の部活は部内恋愛禁止だ。

1回先輩同士の部内恋愛が顧問にバレて、とても怒られているところを見た。

最終的に、部活を続けるのであれば別れなければならず、その先輩たちは部活を続けることを選んだ。

もし、付き合うとしたらその選択も必要になる。

バレなければいいと思うかもしれないが、女子の先輩の目は鋭い。

可笑しいと思われたら最後、クラスの友人にまで聞き込みをされ、部活が終わった後に呼び出されるらしい。

「ごめん!待った?」

「いえいえ!大丈夫ですよ!」

高橋先輩と遊びに行ってることが他の先輩にバレたら、きっとめんどくさいことになる。

細心の注意を払って、周りに知り合いがいないか確かめながら高橋先輩と歩いた。

「まだ映画が始まる時間まで結構あるから、ゲームセンターに行かない?」

「いいですね!行きましょう!」

まだ私たちが観る映画まで20分もある。

ゲームセンターに入り、人が多い中で高橋先輩を見失わないように歩く。

クレーンゲームやメダルゲームを横目で見ながら、高橋先輩について行くと、プリクラがある場所で先輩は止まった。

「高橋先輩?」

「一緒にプリクラ撮らない?今日の記念にさ。」

えっ、と声を出しそうになった。

まさかそんなこと言われると思わなかったので、一瞬にして頭が真っ白になった。

「い、いいですけど。」

「どれがいいかわかんないし、とりあえず入ってみよう。」

何気ない顔で入っていく先輩を見ながら、どんどん赤くなっていく頬をつねった。

「嘘...!」

夢じゃない、あのかっこいい先輩と二人きりでプリクラを撮るなんて。

どんな顔して撮ればいいんだろうと、先輩を追って走った。




高橋先輩とプリクラを撮り、時間通りに映画館の席に座った。

こそっとさっき撮ったプリクラを見る。

鈍感だと言われる私にでもわかる。

距離が近い。

近すぎる、まるで恋人みたいに近すぎる。

それにプリクラで先輩がしたデコレーションが、彼氏彼女と書いてある時点でこれはわかる。

いや、わかりやすい、わからない人はいない。

まだ付き合ってもいないのに!

これは浮かれてもいいのだろうか。

彼女と可愛らしいハートで包まれた文字はちゃんと私の横に付いている。

間違えてるわけじゃなさそうだったとしたら。

ちらりと高橋先輩を見る。

ちょうどこっちを見ていた高橋先輩とパチリと目が合った。

ドキリと心臓が鳴る。

恥ずかしくて顔を背ければ、ふっと高橋先輩が笑った声が聞こえた。

周りが暗くてよかった。

そう思って前を見れば映画が始まった。

誰かに誘われても私は行かないと断る恋愛の映画。

ただ高橋先輩を意識しないように前を見続けた。

そして、あっという間に時間は過ぎ、物語も終盤に入っていく。

彼女が意を決して彼を必死に止めようとするシーンだ。

『どうして離れていこうとするの!私のこと嫌い?』

切なげに言う彼女が彼の手を握る。

行って欲しくない、離れて欲しくないと懇願するように。

『違うよ、君のことが好きだから離れるんだ。僕は君に迷惑をかけたくない。』

悲しそうな顔をして彼は彼女の手を握り返した。

『誰かに嫌われていても、私は貴方のことが好きよ。

離れたとしても別れたとしても貴方への気持ちは変わらないわ!ねぇ、私への迷惑だなんて考えないで。貴方がいなくなる方がよっぽど辛いの。』

ポロポロと涙を流す彼女は自分の想いを全て彼に打ち明ける。

『誰に何を言われようと構わないわ。だってこれは私と貴方だけの恋だもの。』

決心をしたように力強く彼の目を真っ直ぐに見て彼女は言った。

その目を見て彼は動揺に目が揺らぐ。

『どうして、そこまで僕を。』

今まで彼女を避け続けた彼は、ただ彼女の幸せを願っていた。

自分のせいで、彼女が周りから非難の目を向けられるのが嫌だった。

幸せになって欲しかった。

なのに彼女は首を横に振る。

『貴方が隣にいてくれる幸せ以上の幸福なんてないわ。』

彼はそこでやっと、彼女の想いに救われた。

『そんなこと言われたら、僕は何も言えないじゃないか。』

彼は嬉しそうに涙を流し、そして彼女を抱きしめる。

とても幸せそうな2人の姿を最後に、物語は終わった。

エンドロールが流れていく中、次々と周りの人が帰っていく。

私は1度も高橋先輩を見ることなく、エンドロールが終わるまで席にずっと座り続けていた。





「この映画、気になってたんだ。いい話だったね。」

「はい!初めて恋愛系の映画を観ましたが、とてもいい話でした!」

映画が終わったのは、もう16時を過ぎた頃だった。

もうすぐでお別れの時間になってしまう。

「葉月は電車で来たんだよね?」

「はい、そうです。ここの近くの電車で。」

「送っていくよ、俺は自転車だからさ。」

「ありがとうございます。」

あまり沢山話してはいないけど、とても楽しい1日だった。

プリクラも撮れたし、これは宝物として持っておこう。

誰にも言えない秘密として。

高橋先輩が自転車を取りに行ってくると走っていった。

1人になった私は今日の出来事を思い出しながら出口を出る。

あっという間の時間だったけど、本当に楽しかった。

夢のような幸せな気分だった。

出口を出るとちょうど高橋先輩が自転車を取って来ていた。

二人並んで駅へと向かう。

「夕焼けが綺麗だね。」

「そうですね、こんなに綺麗なのは珍しいです。」

ゆっくりゆっくり歩きながら話す。

駅の前に来た時、高橋先輩がちらりと私を見た。

「ねぇ、あのさ。」

上機嫌だったその時の私は、笑顔で高橋先輩に向いた。

その時はもう私のことは見ていなかった。

「付き合わない?今更かもしれないけど。」

あんなことしておいて、今言うのもあれだけどさ、と照れたようにそっぽを向いて高橋先輩は言う。

あんなこと、とは多分プリクラの事だとすぐにわかった。

心臓がまた鼓動を早くする。

「はい、私でよければ、よろしくお願いします。」

自分は今、きっと顔がとても赤くなっているに違いない。

全てが始まった、築木坂町(ちくぎざかまち)での最初の出来事だった。





そして全ての日常が変わり始める。

この頃寒い日が続いていますが、私がこの小説を書いている場所は外なんです笑

手が冷たくなってガタガタ震えながら文字を打っているのですが、この寒い日の中でこそ浮かぶアイデアがあるものですね。

夏に嫌だった太陽もこの冬では恋しくなるし、冬ならではの景色を外は見ることができます。

でもまぁ、やっぱり暖かいところでゆっくりするのが1番ですよね笑

この連載小説とは別に他の小説にもチャレンジしてみようかなと思っています。

よかったら暇な時にでも見てください笑

さて、この次から、恋人同士になって初のデートのお話が始まります。

初々しい彼女は、初めてのデートに緊張しながらも思い出に残るようにと奮闘し始めていくのです。

さて、その奮闘がどのような結果へと向かうのか。

彼女のひとつの決断で物語は、より一層進み始めます。

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