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大人の幸せ(千鶴)

作者: 狼花

 日の出前の早朝

夜の暗闇に日の光が少しずつ差し込みぼんやりとした明るさになる。

ベランダに出れば鳥のさえずりが聞こえ、

大気の循環によりもたらされた新鮮な空気が辺りを包む。


  今日が来てしまった………


 昨日の夜、なかなか眠れなくて

掃除なり読書なりしていたのだけどいっこうに眠気が起きず。

気付いたら夜が明けていた。

・・・これが不眠症?・・・


 普通なら23時か0時には眠気が襲って来て

それに身をゆだねて目が覚めれば朝の光を浴びているという理想の睡眠バランスを

取れているのだけど

なぜ今回は眠れなかったのだろう?

そしてこの状態で今日1日活動できるのだろうか?



 寝不足は何度か経験しているけど私が1番恐おそれるのは注意力が散漫になっているということを私自身が自覚せずに家事や仕事をして取り返しのつかない失敗をしてしまうことだ。

・・・怖いのよね自覚しない注意力の欠如けつじょって・・・。


 スーパーでお会計を済ませているときに財布さいふをうっかり忘れてしまったなら可愛いものだが

仕事中で話を進める上で大事な書類をうっかり忘れてしまったり、

車の運転中でうっかりスピードを出しすぎで警察に違反切符を切られるといったうっかりは

したくない。

うっかりでも許されるうっかりと許されないうっかりが存在する。

・・・無事に今日という日を乗り越えれるかしら・・・


 不安は募るが幸いにも時間だけはまだある。

朝ごはんを作らないと。

私には高校生と小学生の二人の娘がいる。

優しくて気の弱い長女とズボラで活発な次女だ。

・・・奈々にはお弁当。桃花はまた寝坊するだろうからバターロールね・・・


 さ、気を引き締めてキッチンに行きましょう。

主婦としての朝はキッチンから始まるのだから。

ベランダから戻り掃き出し窓をしめキッチンへ


 「あ、おはようございます」


キッチンに戻ると長女の奈々が湯飲みに白湯さゆを入れ飲んでいた。

朝一番に白湯を飲むのがこの子の朝の習慣のようだ。

「おはよう。今日もあんたは早いのね」

奈々はいつも朝起きるのがすごく早い。

「母さんこそどうしたんですか? 珍しいですね。母さんがベランダに行くの」

「そう?」

「私ベランダにいる母さんを見るの灯油を入れ替えてるときだけですよ」

・・・言われると確かにね・・・


 「たまには朝一番の空気を感じて見たかったのよ」

すると奈々は口を手に当て静かに笑った。

「なにがおかしいのよ」

「いえ、だって母さんがそんなことをいうなんて」

・・・そんなにおかしいかしら?・・・

「母さんは自然と触れて綺麗だなとか感情的なことをいう人じゃない

ですよ」

「失礼ね、これでも余裕を持った生き方をしてるわよ」

「え? でも常に物事をああしたほうが、こうしたほうが、と論理的なこと

ばかりであまり感情的なことは母さん言いませんよ」

・・・そうかしら・・・


 

 「あ、朝ごはん作るなら私が作りましょうか?」

「いいわよ。自分で作るから」

「いつも家事を手伝ってもらっているもの朝ごはんくらい私に作らせてほしいわね。

少しくらい母親らしいことさせなさいよ」

「今日の朝ごはんはなんですか?」

「オムライス」

答えながらフライパンに油をひきチキンライスを作っていく。

寝不足でもオムライスくらい余裕で作れる。


 「さ、できたわよ」

私と奈々の二人分のオムライスを皿に移して行く。

「あれ、二人分だけですか?」

奈々が問いかける

「そうよ。今日は月曜だから桃花は寝てるでしょう」

うちの次女は学校のない土日は朝からテンションMAXなのだが

学校の日はなぜか朝起きれない。

この不思議な疑問ははあの子の頭の中を覗いてもわからないでしょう。

「母さん。今日、祝日ですよ…」

「え?」

・・・と、いうことは・・・


 「おっはよーう。お、今日は朝からオムライスですか」

午前6時半、次女桃花。起床。

「おはよう。桃花」

と私。

「おはようございます。朝から元気ですね」

と奈々。

「あれ、オムライス二人分だけ?お母さん食べないの?」

・・・さすが、ポジティブ。ないのが自分の分だとは思わないのね・・・


 仕方ない。

「そうよ、はい。あんたの分」

と自分のオムライスを桃花に渡す。

「ケチャップは?」

「はいはい」

私は冷蔵庫からケチャップを取り出して桃花に渡す

「サンキュー」


察しのいい奈々は

「私のオムライス半分あげましょうか?」

と気遣ってくれる。

「いいわよ、あとでコンビニで適当に買うから。」

・・・まさか祝日だとはね。・・・

やはり今日は注意力が散漫になっているらしい。

それに今頃になって眠気が出てきて頭がぼーっとする。


 ん? 祝日!!・・・


 ・・・私、今日仕事休みじゃない・・・


 でもちょっと待って。今は正常な思考じゃない。

念には念を入れて職場に確認しましょう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ね、お母さん。今日ショッピングセンターに・・・あれ?お母さんは?」

桃花の声が聞こえるが私はいま自分の部屋の布団の中だ

さっき職場に連絡したがやはり今日は私は休みになっていた。


 ・・・眠気がピークの時に眠れる幸せは最高よね・・・


 「お母さん。今日はドラクエの新作買ってくれるって約束したじゃん」

桃花がごちゃごちゃと喚く声を聞きながら私は深い眠りについた。



 「お母さん、お母さんってば起きて、起きてってーーー」

うるさいわね。少し大人しくしてなさいよ


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