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第70話 第1回ダンジョンアタック〜マリカ&セーゲル(5)〜


季節の変わり目、体調不良な島田です。

いつものことですね。

…………後のことも想像つきますね?


体調と相談しながら書き進めますので、更新は気長にお待ちくださいませ……。


とゆー訳で。

今回も〜よろしくどうぞ( ´ ▽ ` )ノ



 




 何度か休憩を挟みつつ、順調にダンジョン攻略を進めたあたくし達《海底神殿》組。

 道中はまぁ……当然のことながら、人魚との戦闘が多々あったけれど。そこらは変わり映えしませんから、省略。


 そんなこんなで。

 あたくし達はついに、最初で最後の難関に辿り着いたわ。



 ーーぐにゃり……。


「‼︎」


 扉を潜り抜けると、そこはさっきまでの朽ちかけた神殿の様子とは打って変わって……広間と勘違いしてしまいそうなほど、横に広い廊下のような場所に出た。

 真珠色に輝く床。同じく真珠で出来た柱が等間隔で奥まで立ち並び、天井から薄水色の垂れ幕が降りている。両方の壁にはステンドガラスの窓が嵌め込まれており、その柄は青と緑を基調とした人魚。

 そこはとても美しい場所だったわ。見るだけであれば、いつまでも見ていられる。

 けれど、美し過ぎるがゆえに不気味に思えてしまう。

 美し過ぎるがゆえに、恐ろしい。

 きっとそれは本能的な反応。ここが、それほど危険な場所だと感じ取っているのでしょう。

 その感覚に従って……あたくし達は、警戒心を一気に強めたわ。


「セーゲル」

「あぁ。ここが、《真珠の海廊》だろう。マリカ、覚悟しろ。()()が始まるぞ」

「っ……‼︎えぇ、分かったわ」


 あたくしは事前に、セーゲルから教えられていた情報を思い返す。

 この《海底神殿》コースの最初で最後の難関ーー通称・《真珠の海廊》。

 今までは迷路のように入り組んだ道を進んで行く、といった感じだったけれど、ここから先は違う。

 ()()()()()()()進めば良い。そうすれば、中ボスが待つ玉座に辿り着く。

 けれど、そう簡単な話ではないらしいわ。

 この《真珠の海廊》では、王族タイプの人魚ーーつまり中ボス(女王)の娘である人魚の王女達との連戦になるんだとか。

 《真珠の海廊》での戦闘は討伐戦ではない。所謂いわゆる、撤退戦になる。

 王女達は、群れを形成ーードンドン増援を呼ぶ面倒くさい敵。増援を増えれば増えるだけ、戦闘が長引いていく。

 それじゃあ全然、攻略が進まないと思うでしょう?

 でも、その王女と下っ端人魚との戦闘で一定以上の時間が経過するか……王女達の体力を一定以上削ると、王女達は戦闘から撤退するそうよ(ちなみに……下っ端は残したままらしいわ。けれど、それ以上の増援が増えることはない)。

 戦って撤退させる……それを4回繰り返して。

 最終の5戦目。そこまでいけば、中ボスーー《海底神殿》のボスである人魚の女王との戦闘、討伐戦になるそうよ。

 ここで重要になるのは、王女達をどうやって撤退させるか。

 最終戦では、王女達の体力は今までの撤退戦で削った体力が反映される。つまり、一定以上の体力を削っておけば、最終戦でも少ないまま。逆に、体力をあまり削れていなかったら、最終戦でも体力が多いままになるらしいわ。

 だから、可能であれば王女達の体力を削って撤退させるのが望ましいのですってね。


「マリカ、作戦は覚えてるな?」

「えぇ。雑魚は無視。狙うは大将首のみーーで、間違いないこと?」

「あぁ、そうだ」


 王族タイプの人魚は、増援を呼ぶけれど……この増援は戦闘の場に一定数の人魚がいれば、それ以上増えることがないんだとか。

 攻撃がうざったらしいからと雑魚を倒してしまったら、延々と雑魚が補充されることになるんですって。

 だから、最初から雑魚は倒さず……敵を補充させず。王女リーダーのみを、狙う。


「準備は?」

「いつでも構わないわ」

「では、手筈通りに。……行くぞ‼︎」

「えぇっ‼︎」


 セーゲルが走り出す。あたくしも後を追う。

 ふわりと揺れる垂れ幕。その影から沢山の人魚達が現れ、襲いかかってくる‼︎


「マリカッ‼︎2時の方向っ‼︎」

「了解っ‼︎」


 彼が示した方向を確認すると、ヒラヒラとしたレースのショールを指先に付けた金髪の人魚が、人魚の兵達に守られていた。

 ティアラを頭に付けているから、アレが王族タイプーー王女の1匹ってことね?

 …………不安そうな顔は、魚の尾を有する下半身を見なければ人間のようにしか思えない。魔物の癖に、随分と人間の真似事が上手いこと。

 あたくし達は雑魚を無視して、一直線に王女に向かう。


『ッッ⁉︎〜〜〜〜♪♪♪』


 王女がギョッとして、慌てた様子で歌った。

 その歌声に呼応するように、増える人魚達。

 数が増えたから必然的に、攻撃の密度が上がる。槍の突きを避けて、剣の刃を弾き返して、魔法による鋭い雨を潜り抜ける。

 1つ1つの攻撃はそれほど脅威ではなくても。数が多ければ、うざったらしく思うわね。反射的に倒してしまいそう。

 けれど、倒したらまた新しいのが増えるだけだもの。イタチごっこになってしまう方が面倒くさいわ。

 だから、回避や軽めの反撃などで動けなくさせつつ、王女の下へと急いだ。


「ヤァッ‼︎」

『シャァッ‼︎』


 セーゲルの大剣が人魚に振り下ろされる。

 回避能力が高いからか、紙一重で避けられてしまった。

 でも、彼はSランク冒険者。ただ、振り下ろすだけで終わるはずがない。

 セーゲルは大剣を扱っているとは思えないほどの素早い動作で、下に振り下ろした剣を跳ね上げさせた。


「はぁっ‼︎」

『キャァァアッ‼︎』


 ーーざんっ‼︎

 王女の尾を大剣が斬る。噴き出る血液。

 痛みに怯んだ隙を、あたくしは見逃さない。


「《氷よ、爆ぜなさい》っ‼︎」


 ーーバンッ‼︎


『ギュアァァァァァァッ⁉︎⁉︎』


 傷口を狙って氷属性の爆発を起こす。

 血液が凍り、爆ぜる痛みで叫ぶその姿は本当に、人間そっくりで。

 普通の人であれば……これで攻撃の手が緩んでしまうのだろうと思ったわ。

 しかしそれは、あくまでも一般人であれば。

 あたくし達は忘れなかった。

 相手が……あたくし達の命を狙う、敵であることをね。


「っ‼︎マリカッ‼︎」


 セーゲルの声が聞こえると同時に、背後に飛ぶ。

 その瞬間、あたくしが立っていた場所に水の刃が集中砲火される。

 下っ端の相手をしていたセーゲルがその腹を蹴り飛ばしてあたくしの隣に後退すると、前を見据えたまま心配そうに声をかけてきた。


「怪我はっ⁉︎」

「大丈夫よ」


 再度始まった雑魚どもの攻撃。それを回避しつつ、チラリと王女の方を見れば……。

 傷ついていたはずのその尾には一切の傷がなく、その代わりにその傷は王女の隣の人魚の尾に刻まれていた。

 そして、王女自身は醜悪に顔を歪めながら忌々しそうに舌打ちを零していたわ。


 王族タイプは、そう呼ばれるだけの能力を幾つか有しているそうね。

 まず、《統率》。いつも護衛に囲まれている人間の王族のように……元々、王女を守るように5匹以上の人魚と共に行動し。戦闘になれば《増援》を呼んで、30匹近い人魚(下僕)を率いて攻撃してくる。

 次に《鼓舞》。王族が戦闘の場にいれば、他の人魚の基礎戦闘能力を全体的に上昇させる能力がある。

 最後に《影武者》。1戦闘につき1度だけ、自分以外の人魚を()()()()()()()()攻撃させる。先ほどの、王女が無傷だった理由は、この効果なのでしょうね。

 そして、攻撃されて怯えたとほんの少し油断した冒険者達の意識の隙を狙って、騙し討ちのような反撃をする。

 それが失敗したからこその、今の態度。忌々しそうな舌打ち。

 …………いつもそうやって、自分以外の人魚を《身代わり》にして、反撃してたのかしらね?

 本当、可愛い顔して……随分と性格が悪そうだわ。

 王女は周りの人魚達に向けて、怒鳴るような鳴き声をあげた。


『シャァッ‼︎』

『キュイッ』


 鳴き声に呼応するように、周りの人魚達の攻撃が更に激しくなる。

 その瞳に浮かぶのは恐怖。あたくし達に恐れているのではない。

 人魚達が恐れているのは……。


「セーゲルッ‼︎」

「了解」


 数多の人魚達に守られながら、攻撃の指示を出す王女に向かって再度走り出す。

 向かわせまいとする人魚達を蹴散らし、あたくしは魔法を発動させる。


「《氷よ、煌めいて》」


 あたくし達の周りにダイヤモンドダストが発生する。

 キラキラと輝く氷の粒が、その場の空気を一気に冷やす。


「《氷よ、行きなさい》っ‼︎」


 更に、あまくしは手元に氷の礫を出現させる。そして、弾丸のように王女に向けて放ったわ。

 当然のことながら、王女は避ける。そうよね。この攻撃自体は、それほど早くはないもの。

 けれど、狙いはそこ。()()()()わね。

 避けた瞬間が、あたくし達の()()()()()

 ぐるりっとバク転するかのように身をひるがえして、攻撃をかわした王女。

 その背後に、剣を構えたセーゲルが、待ち構えていた。


『ッ⁉︎』


 驚いた?驚いたでしょう。

 あたくしの隣を走っていると認識していたのに、実際には背後にいたんだもの。

 あたくしの隣を走っていたセーゲルは、最初の魔法を用いて見せた幻。氷で反射させて、そこにいると思わせただけ。

 同じように氷の反射を利用して姿を一時的に消した彼は、人魚達の隙間を走り抜けて王女の背後に回っていたのよ。

 …………後はどうなるか、分かるわね?


「《烈斬》っ‼︎」


 ーードンッ‼︎

 ただ、上から下に振り下ろしただけ。

 けれど、その攻撃は今度こそ……王女を捉えた。


『グギャァァァァァァァァァアッ‼︎』


 鮮血が舞い、王女の胴体に縦一筋の傷が刻まれる。

 …………おかしい。おかしいわ。

 普通であれば、今の攻撃で2つに避けていたはず。それぐらいの攻撃力が、セーゲルにはあるのに。

 なのに…………傷を負わせただけ?


『グァルゥウッ……‼︎シャァッ‼︎』


 王女は憎々しげにあたくし達を睨んでから、勢いよく泳ぎ去って行く。それはまさしく撤退だった。

 その瞬間、残されていた人魚達の統率が乱れ……攻撃も連携が崩れる。

 後は簡単な仕事だったわ。残った人魚達を今度こそ、始末していけば良いのだもの。

 全てが終わった頃にはーーあたくしは先ほどのセーゲルの攻撃があの程度で終わってしまった理由を理解していたわ。

 そう……何度も自分でも言っていた癖に、ダンジョンには固有のことわりが働いているのだと忘れてしまったいたのよ。

 4回行われる王女達との戦いでは、〝()()()王女を倒せない〟というのが、理なのでしょう。


「マリカ」

「大丈夫よ」

「分かった。少し休憩してから、進む。いいな?」

「えぇ。了解したわ」


 長い長い廊下の先を、見据える。

 簡単そうに見えて、やはり難関言われるだけあって……大変みたい。


女王(中ボス)に辿り着くまでには、まだまだ先が長そうね……」



 出来れば……あたくしの精神衛生的な理由で、他の王女はさっきのヤツみたいに性格が悪そうじゃなければ良いのだけど。


 あたくしはそう思わずにいられなかったわ。



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