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番外編 《メタイベント》ホワイトデーですね。


【注意】メタイベント、メタ発言ありまーす。苦手な人はバックしてくださいませ。


はい。シフォンケーキが急に食べたくなって作り始めたら、ハンドミキサーの本体ーー先っちょの金具はあったーーが見つからなくて、泡立て器で頑張った結果……。


筋肉痛になって死んだ島田です。


腕は死んでたけど、ホワイトデーのネタ、書ききりました。

なんで、楽しみながら読んでもらえたら、島田も、死んだ腕も喜びます(笑)


とゆー訳で。

今回も〜よろしくどうぞっヽ(・∀・)


 






「今年もやるぞ、ホワイトデーのお返し作りの回でっす」




 俺の声がけで魔王屋敷に集まったのは、去年のメンバー&俺の弟ことアズールヒルト。

 アズは初めてだからちょっと緊張気味だが……他のメンバーは慣れた様子だ。

 それに……今年はきちんとスイレンさんとチョコレート(という名のパイ)を受け取ったことを確認したからな。去年のような気まずい空気にはなっていない。マジ、去年の空気のヤバさよ。

 とにもかくにも……今回は特に問題なく、ホワイトデーの準備を進められそうで安堵せずにはいられなかった。


「という訳で……お料理男子スイレン先生。今回もよろしくお願いしまーす」

「うむ。では、此度はクッキーサンドを作ろうと思う」

『……クッキーサンド??』


 クッキーサンドって言われると、レーズンが混ざったクリームが挟まったヤツが思い浮かぶんだが。

 えっ。どうしよ。リジー、それ苦手だけど。

『レーズンが食べれない訳じゃないんだけど……あの柔らかいクリームの中に硬いヤツが入ってるの、好きじゃないのよね。柔らかいクリームを噛んだのに、硬いのがぐにゅってなるのが、よろしくない……』って、滅茶苦茶しっっっぶい顔で言ってたんだが……。


「今回は班を分けて、作業する。中身のクリーム制作班と周りのクッキー制作班だ。アズールヒルト殿は……初心者でもあるし、身内が一緒の方が良かろう。儂とグランヒルト殿が付く。そちらは問題ないな?」

「おーう。大丈夫だ〜。こっちは全員料理は慣れてるし〜。んで?どっちがどっちやる?」

「ふむ……グランヒルト殿達はどちらが良い?」


 スイレンさんは俺に聞いてくる。

 アズの方をチラリと見て確認すると、「わたしはよく分からないので……‼︎兄上にお任せします‼︎」と一任してきた。

 俺は取り敢えず、1番大事なことを確認することにした。


「俺はどっちでも良いよ。でも、先に聞いておきたいんだけどさ……クリームって何を入れる予定?」

「ん?中身か?此度はチョコクリームを作る予定だ。個人的には……多分、クッキーを作るよりも楽だと思うぞ。混ぜるだけだからな」

「(あっ、リジーでも食べれそう)なら、クリームで。アズは料理なんてしたことないもんな。楽な方がいいだろ。スイハ達もそれで良いか?」

「構わないぜ〜」


 スイハ達も了承してくれたから、早速調理が始まる。

 ミルクチョコとホワイトチョコを刻んで、ボールに入れる。温めた生クリームを少しずつ入れて、溶かしていく。程よい緩さになったら、冷蔵庫にイン。終わり。

 マジで簡単だった。簡単だったけど、アズは包丁を逆手で持ってた。今時の料理出来ないキャラでもやんねぇーようなことしてて、本気でビビった。まな板に包丁の先っぽ、刺さってましたからね。

 こっちの方が簡単かと思ったけどっ……全然そんなことなかったなぁっ……‼︎


「うっ、うううぅっ……すみません、すみませんっ、兄上っ‼︎わたし、こんなに不器用だったなんて……‼︎」

「あっ、いや大丈夫だからな。そんなに落ち込むなよ、アズ」

「そうだぞ。誰しも最初は上手くいかぬモノよ。こういうのは慣れだ慣れ」


 冷やしている間というか、クッキー組の作業が終わるのを待っている間。

 茶の間で一服することにした俺とスイレンさんは、顔を覆って嘆くアズを励ます。

 …………まぁ、本音を言うと。一生、料理下手は治らない気がするけど。

 流石にな。今、それを言っちゃうと追い討ちになるからな。俺は大人しく口を噤んだ。


 そんなこんなで。

 クッキー組が無事にクッキーを焼き上げ、チョコクリームを挟んでホワイトデーのお返しは完成。



 今年は合作クッキーサンドを持って、各々お礼をしに行くのだった……。




 *****




【ハルトside】




「ただいま〜。はい、どうぞ。今年のお返しだよ」

「お帰りなさーいっ。きゃ〜、嬉しい〜♡ハル君、ありがとう〜」



 今年のバレンタインはリズからハート型のパイを受け取った。

 〝自分リズの心をあげる♡〟という意味なんだろう。

 なら、俺の君に、俺の心を返すのが筋ってモノだろう?


「うわ〜っ‼︎可愛い〜‼︎ハート型だ〜‼︎…………私とお揃いにしてくれたの?」

「うん。色々、クッキー型を使ったんだけど……リズに渡すのはぜーんぶハートにしたよ。俺の気持ち、あげるね」

「えへへっ〜‼︎ありがとう、ハル君‼︎大好き‼︎」

「俺も大好きだよ、リズ」


 その後ーー俺は自分の手から直接、リズにクッキーサンドを食べさせてやった。俗に言う求愛給餌、というヤツだ。



 勿論、その後は……俺がリズを美味しくいただく番。


 今年のホワイトデーも、俺達は甘々に過ごすのだった。



 *****




【スイハside】



「はい、お返し」

「まぁ。今年もありがとうございますわ」


 ココア味のクッキーにチョコクリームを挟んだクッキーサンドを渡すと、アウラは嬉しそうに微笑んだ。

 もう彼女も慣れたモノで……慣れた手つきでお茶を準備する。


「はい、どうぞ」

「おぅ、ありがと」


 卓袱台ちゃぶだいの中央にクッキーサンドが乗った皿を置き、共に食べる。

 バレンタインデーのお返しを、自分があげたものを一緒に食べるとか……ちょっとアレかもしれないけど。まぁ、おれらは一緒に食べる方が性に合ってるからなぁ。

 きっとこれからもこういった行事ではこうやって、2人で一緒に食べたり遊んだりしながら、面白おかしく暮らしていくんだろう。

 そしていつかは……2人だけじゃなくなって……。



 沢山の、家族と共に。



「うふふっ。美味しいですわ。ありがとう、スイハ」

「うん。どーいたしまして」



 それはきっと、幸せな未来だと思わずにはいられなかった。




 *****




【アズールヒルトside】




「…………はぁ」


 婚約者であるカメリアが暮らす、タウナー侯爵家にやって来たわたしは、応接室で手に持った袋を見つめながら溜息を零した。

 今まで、料理なんてしたことありませんでしたが……まさか、あそこまで大変だったとは。

 兄上や魔王陛下は簡単な部類のお菓子作りだと言ってましたが、わたしではそんな風に思えません。

 でも、確かにこの手の中にあるクッキーサンドなるモノはそこまで凝って作ったようには見えなくて……。

 そう考えると、王宮で出される食事はとても手が込んだ料理であったのだろうと思い至る訳で……。


「…………普段から、もっと感謝しながら食事をするべきですね」


 ぽつりと呟いたところで、扉がノックされます。

 入室の許可を出すと、『失礼いたします』と一言断ってからカメリアが入ってきました。

 彼女はふんわりと微笑んで、薄紫色のドレスの裾を摘み、優雅なカーテシーをする。そしてゆったりと顔を上げて、わたしの座るソファの向かいに腰を下ろしました。


「こんにちは、カメリア。急に訪問してしまい、申し訳ありません」

「ご機嫌よう、アズ様。いいえ、問題ございませんわ。いつでもいらしてくださいませ。……ところで。一体、どうなさいましたの?」


 こてんっと不思議そうに首を傾げるカメリアに、緊張から喉が渇きます。

 それでも勇気を振り絞り、手に持っていた袋を差し出しました。


「…………これは?」

「バレンタインのお返しです。わたしが、兄上達と共に作りました」

「……えっ!?」

「いつもありがとう、カメリア。これからもどうぞ、よろしく」


 袋を受け取ったカメリアは壊れ物を扱うかのような慎重な手つきで、袋の表面を撫でます。

 そして、今までで1番嬉しそうな顔で笑う。

 その笑顔を見たわたしは、ドキッと胸が高鳴って……じわりと頬が熱くなりました。


「こちらこそ、ありがとうございます。大事に、いただきますね」


 はっきり言って……わたしには、料理の才能がないのでしょう。

 それでも、こんな素敵な笑顔を見れるなら思ってしまう。



 カメリアを喜ばせるためならば……また、料理をしても良いかもしれないと……。




 *****



【セーゲルside】



「好きだっ‼︎結婚してくれっ‼︎」

「ふにゃっ⁉︎」

「そして、バレンタインのお返しだっ‼︎受け取ってくれ‼︎」

「あ、ありがとう……」


 昨年のように魔王屋敷のマリカの部屋に突撃した俺は、告白と共にホワイトデーのお返しであるクッキーサンドを渡す。

 そうするとマリカは頬を赤くしながらそれを受け取った。


「今年もその、迷惑をかけて悪かったわね……。また、その……あたくしのチョコは、討伐しなくちゃいけなくなったのでしょう?」


 確かに、今年のマリカチョコレートも冒険者ギルドで暴れまくった。それなりに大変だった。

 しかし……。


「確かに……去年より活きが良かったが。マリカのチョコレートは冒険者達の共同戦闘の訓練に、凄く適してたぞ」

「…………なんですって??」

「冒険者ギルドのギルド長からの伝言だ。『最近の冒険者共は弛んどるからのぉ。良い刺激になったわい。また来年も頼むぞい』とのことだった」

「また来年も頼む⁉︎⁉︎本気で言ってるの⁉︎⁉︎」

「??本気も本気だが??」


 叫ぶマリカはパカンッと口を大きく開けて固まる。

 目の前で手を翳してみたり、頬をツンツンしてみたりしたか……容量過剰を起こしたらしい。再起動しない。


 俺はマリカの手からクッキーサンドが入った袋を奪い、開いた口に放り込んでやる。



 反射的にモグモグと食べ始めた彼女を見て……俺は食べてもらえたと、満足するのだった。




 *****



【スイレンside】



「という訳で……グランヒルト殿達の手伝いでクッキーサンドを作ってな。折角だから、共に食べよう。リリィ嬢」

「うわぁぁぁ‼︎すっごっ……‼︎美味しそうだね‼︎」


 魔王屋敷の茶の間にて。

 テーブルの上に乗ったクッキーサンドの山々を見て、リリィ嬢はそれはもう目をキッラキラさせながら喜んでいた。


「今回は沢山の種類のクリームがあるぞ。是非、お気に入りの味を見つけてくれ」

「へぇ〜‼︎陛下、陛下。これ、何味があるんだい?」

「うむ。他の皆と共に作ったミルクチョコレート味と、ホワイトチョコレート味。そして……こちらは儂が個人で準備したジャムを混ぜたクリームだ」

「ジャム??」

「そうだ。固めに泡立てた生クリームにジャムを混ぜるだけなのだが……案外コレが美味くてな。ジャムさえ準備すれば沢山の味を作れるのだ」


 物流の要となった魔王領には、沢山の食べ物が集まるようになった。

 けれど時として、運んでいる内に果物などが傷んでしまうこともある。そういうモノを安く仕入れ、ジャムに加工して備蓄しているのだ。何かあった時のためにな。

 今回はそろそろ使わねばならぬと思ったジャムを使った。そのためかなり種類がある。

 苺、桃、葡萄、林檎、無花果、橙……ついでに南瓜やサツマイモといった甘味の強い野菜などで作ったジャムも、使ってみた。

 これだけ作ったのだから、リリィ嬢の気にいる味があると良いのだが……口に合うだろうか?


「た、食べて良いかい?」

「勿論だとも。さぁ、どうぞ」

「‼︎いただきますっ‼︎」


 リリィ嬢はパクリッとクッキーサンドを食べて、幸せそうに頬を緩ませる。

 言葉にしなくても分かる。どうやら彼女の口に合ってくれたらしい。


「美味しい〜♪」


 その言葉を聞いて、儂は安堵した。それになんだか、嬉しくなってしまって……。

 幸せそうに食べる姿を見つめていたら、儂の煩い視線に気づいたリリィ嬢が少し恥ずかしそうに目を逸らした。


「そ、そんなに、食べてるとこを見ないでおくれよ。恥ずかしい」

「む……すまんな」

「……ほら、陛下も食べておくれっ‼︎陛下が言ったんだろう⁉︎一緒に食べる方が美味しいんだって‼︎」

「むぐっ‼︎」


 リリィ嬢がテーブルの上に乗っていたクッキーサンドを掴んで、口に突っ込んでくる。

 ふむ……これは、無花果ジャムか。砂糖だけではない、無花果自体の甘さが良い感じだ。美味い。


「美味しいねぇ、陛下」

「…………うむ。そうだな」


 2人で和やかにクッキーサンドを頬張る。



 それはとても、穏やかな時間であった。




 *****




【グランヒルトside】



「今年はまったり傾向の気配を察知‼︎」

「シリアスじゃなければ良いんじゃないの?」

「それな」



 王宮の私室に転移した俺は、先に拉致っておいたリジーからのツッコミに素直に頷く。

 ぶっちゃけどうでも内容でもあったので、早々にその話は終えた。


「はい。ホワイトデー」


 という訳で本題、今日の大本命。

 ソファに座るリジーの隣に座りながら、俺は手に持っていたクッキーサンドが入ったラッピング袋を渡す。

 事前になんのために拉致られたのかを察してたリジーは「ありがと〜」とお礼を言いながら、早速ラッピング袋を開けた。


「あら。クッキーサンド。…………コレ、レーズン入ってる?」

「入ってないぞー。苦手だって聞いてたからな」

「……覚えてたの」

「リジーのことで覚えてないことの方が少ないよな」

「変態め」

「褒め言葉として受け取っとく」


 本当は覚えてもらえてて嬉しい癖に、素直じゃないリジーは軽く罵ってくる。本当、素直じゃないなぁ〜……。

 ほんのりと頬を赤く染めてちゃ、照れ隠しだってバレバレだぞ?

 リジーは気まずくなったーー勿論、そう思ってるのはリジーだけーーのを誤魔化すように、パクリッとクッキーサンドを食べる。

 プレーンクッキーに挟んだミルクチョコクリームと、ココアクッキーに挟んだホワイトチョコクリーム。クッキーとクリームの甘さがくどくなり過ぎないように、甘さは控えめ。でも、しっかりと甘い。

 甘い物が好きなリジーは嬉しそうに笑い、直ぐにクッキーサンドを食べ終えてしまった。


「ご馳走様。美味しかったわ」

「お粗末様。満足してもらえて何より」


 さて。

 バレンタインデーの時はリジーからのサービスで素晴らしい時間を過ごせたけれど。今日はどうなるかーー……。


「グラン」

「…………」


 ーーにっこり。

 柔らかく微笑んだリジーの顔を見て、悟る。

 アッ、今日は健全デーですね……と。


「今日はアース達を愛でて過ごしましょうね」

「…………えー?」

「偶には仔共達を甘やかしてあげなさいよ、()()?」


 止めて‼︎リジーに〝パパ〟とか言われたら変な扉開いちゃうかもしれないだろっ‼︎

 …………と、ふざけるのもここまでにして。

 まぁ、確かに偶にはアース達と遊ぶのも良いかなって思ってしまったから、俺は大人しくそれに従うことにした。


「んじゃ、行くかー」

「えぇ」




 それからどうなったって?

 ご想像の通り……なんか家族孝行する休日のお父さんみたいに、めっちゃくちゃアース達と遊んでやりましたよっと。



 多分、体力チートじゃなかったら死んでたと思う。


 見た目はちびっ子でも、本性は竜'sなんでね……。






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