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第58話 第1回ダンジョンアタック〜マリカ&セーゲル(1)〜


ひさーしぶりーどこーろーではーないーこぉーしーんー……。


という訳で……。

お久しぶりでございます。スランプだった島田です。

長々とどころではない年単位で更新しなくて、申し訳ありません。

これからちょっとずつ更新再開(?)出来るように頑張りますので、気長〜にお待ちいただけたら幸いです。

目指せ。二週間に一回、確実更新☆


それでは今後ともよろしくお願いします〜( ・∇・)ノ


【久しぶりだからね。簡単な前回までのあらすじ】

水着回? いいえ、ダンジョンアタックだよ!

〜グランはリジーの水着が見れて満足です、を添えて〜



 






 転移させられた先はーー揺れる光が差し込む、白亜の神殿の前だった。



 傷一つない石造りの神殿。下手をしたら、そこら辺の国の王宮よりも広いかもしれない。

 そんな巨大な神殿をドーム状の膜が覆っている。膜の外はゆらゆらと水面のような揺らめきが広がっている。きっとその先には海面があるのでしょう。

 なんせここは海底ダンジョン。海の底にあるダンジョン。きっと、このドームのおかげで、呼吸が出来るようになってるのでしょうね。

 兎にも角にも……ダンジョンとは思えない美しい光景に、あたくしは思わず見惚れてしまった。


「………なんて美しいのかしら……」

「海底ダンジョンで最も美しいとされる《海底神殿》のルートか」


 その言葉にあたくしは、振り返る。

 そこにいるのは勿論、Sランク冒険者であるセーゲル。彼は警戒をした面持ちで辺りを見渡している。

 …………なんていうのかしら。初対面からアレなところしか見ていなかったから……真面目にも出来るのねって、驚きが隠せないわ。

 そんな風に驚いていると、セーゲルが声をかけてくる。


「マリカ嬢」

「…………何かしら?」

「ダンジョン攻略の経験は?」


 そう言われて、あたくしは遠い記憶を遡る。


「経験はあるけれど、遥か昔の話だわ」

「そうか。なら、初心者と思っても?」

「まぁ、そうね。でも、あたくしは《境界の魔女姫》。そんじょそこらの初心者と一緒にしないでもらいたいわ」

「分かっている。取り敢えず、ダンジョン攻略に関する知識の共有、戦闘スタイルの確認をする。……本当は、アタック前にやるべきだったんだが。ひとまず、このスタート地点は安全区域だから、ここで作戦会議を行ってから攻略を開始する」

「え、えぇ……了解したわ」


 あたくしはとても驚いた。それはもう目を見開いて、思わず動揺してしまうぐらい。

 けれど、こんなにも驚いてしまうのも仕方ないと思わない?

 だって、あたくしが知っているセーゲルはなんて言うか……お馬鹿さん、なのよ。

 ……急にプロポーズしてきたと思ったら、「好き好き」言いながら追いかけてきたのよ?

 そんなこと初対面でされたらお馬鹿さんって印象しか抱けないじゃない。

 だから、こんな真面目なセーゲルに驚かずにはいられなくて。……普段の残念さを知ってるからか、少しだけ格好良く見えなくもなかったわ。………ほんの少しだけ、よ‼︎


「まず、ドルッケン嬢も話していたが……本ダンジョンは3つのコースをそれぞれ攻略していく必要がある。1つ目がこの《海底神殿》コース。その名の通り、海底に沈んだ神殿を進んで行くことになる。敵性魔物は人魚系の魔物だ。2つ目のコースは《海底大海原》。海の底を歩いて進むコースだ。敵性魔物は海洋生物系。最後が《海底洞窟》コース。洞窟の中を進むコースだな。敵性魔物は半魚人系になる」

「ちょ、ちょっと待ちなさいな‼︎」

「?なんだ?」


 ペラペラと語られたダンジョン説明に、あたくしは思わずストップをかけてしまう。

 止められて不思議そうに首を傾げるセーゲルが悪い訳ではないのだけど……余りにも淀みなく説明するんだもの。気にならずにはいられなかったのよ。


「随分と詳しいのね?貴方、このダンジョンを攻略したことがあるの?」

「いや、ないが?」

「???ないのに、こんなに詳しいの??」

「……挑戦したことがなくても、ある程度有名なダンジョンの情報は事前に入手しておくモノだろう?」


 ある程度有名なダンジョンの情報は、事前に入手しておくモノ??

 え?じゃあ……。


「…………貴方……ダンジョンの情報を先に、頭に叩き込んでいたってこと?」

「あぁ。俺は基本ソロだからな。情報こそが命綱だ。ギルドはダンジョンの情報を公開してくれている。まぁ、有料だが……それでも知らないのと知っているのでは、生き残れる可能性は明らかに後者の方が高い。よって、俺はギルドで定期的にダンジョンの情報を買い、頭に叩き込んでいる」

「……………」


 あたくしは間抜けにもポカンッ……と口を開けて固まってしまったわ。

 だって、そうでしょう?

 ずっとお馬鹿なセーゲルだと思っていたのに……。こんな……こんなところで……‼︎Sランク冒険者セーゲルとして、ちゃんとしてるところを見せてくるなんて‼︎……なんか、狡いじゃない‼︎


「……話を戻すぞ。このダンジョンは3つのコースの中ボスを撃破すると、鍵が手に入る。そうすればダンジョンボスへと挑むことが出来るようになっている。以上が大まかな説明だ。分からないところはあったか?」

「…………」

「マリカ嬢?」

「ふぇっ⁉︎だ、大丈夫よ⁉︎」

「………?そうか。なら、話を進めるぞ」


 ……はっきり言って、そこから先のことはあんまり覚えてないわ。彼からの質問にはちゃんと答えられていたとは思うけれど、少しぽけっとしてしまったの。

 …………もう何度目になるか分からないけれど。それでもっ‼︎そうなってしまうのも仕方ないじゃない⁉︎

 だって、だって‼︎真面目なセーゲルが悪いわ‼︎見直させるようなことをする彼が悪いわ‼︎



 なんでそんな格好良いところ急に見せてくるのよ、お馬鹿っ‼︎




 *****





 マリカ嬢から、どこか呆然とした顔で見つめられる。



 何かしてしまったかと不安になるが、生憎のここは既にダンジョン内。安全圏内セーフティーゾーンとは言え、油断してはならない。

 俺は逸れそうになる意識を戻して、作戦会議を進める。


「これもドルッケン嬢が言っていたが、俺は前衛を努めた方が良いだろう。大剣を使うからな。得意属性は火。だが、このダンジョンは水属性の魔物が多いため、相性が悪い。マリカ嬢は何が得意だ?……あぁ。俺達は今、実況中継(?)なるモノをされているから、他人に自分の情報を教えたくないと言うのならば言わなくても良い。しかし、教えてもらえる範囲で教えてもらえるなら有難い」


 どういう原理だか分からないが……このダンジョンアタックはあの合宿の時のように中継(?)されていて、各国の王族を始めとした偉い人らが見れるようになっているらしい。

 つまり、ここでの会話も丸聞こえ。そこまで多い人数だとは思わないがそれでも、不特定多数に自分達の戦闘スタイルや情報が知られてしまう状況という訳だ。

 冒険者の中には自分の戦闘スタイルなどを公にしない奴も少なくはない。後ろめたいことがあって公にしない場合もあるが……自分の技術を他人に盗まれたくない。特殊な力を持っているが故に、勧誘などで煩わしい思いをしたくないという者もいる。

 しかし……彼女はなんてことがないように、自分の能力を答えてくれた。


「あたくしは前衛、中衛、後衛、なんでも出来ますわ。でも……そうね。得意なのは後衛かしら?得意属性は無。加えて、固有能力として《境界》という力があるわ」

「………《境界》?」

「えぇ。《境界》を定め、亜空間に繋いだり……《境界》を敷いて、断裂したりするのよ」

「…………⁉︎」


 それは……それはなんていう能力なんだ‼︎

 はっきり言って、規格外の力だ。亜空間に繋ぐなんて、上手く使えばどれだけの利益を生み出せるか。彼女に物資を運搬してもらえば、軍事利用だって出来てしまう。

 この情報を聞いているのは国の偉い奴らばかり。聞き漏らしてなければ、今のでマリカ嬢の力の有用性を知ってしまったはず。

 このダンジョンアタックが終われば、彼女は引く手数多になるだろう。時に、無理やり引き抜こうとする輩も出てくるかもしれない……。

 俺は不安を抱き、彼女に質問した。


「それは……今ここで、俺に教えてしまって大丈夫だったのか?」


 ーーこれから、マリカ嬢は大丈夫なのか?

 そんな俺の不安を感じ取ったのか、マリカ嬢は笑顔を浮かべた。妖艶に、けれどどこか背筋がゾッとするような恐怖を感じさせる笑みを。


「お忘れ?あたくしは《境界の魔女姫》。魔王と殴り合いの喧嘩が出来る女よ。煩わしいことをしてくる輩は、()()()()をするだけだわ」


 …………そう言いながら、グッと拳を持ち上げるマリカ嬢。

 どうやらその話し合い、拳を使う系の話し合いらしい。

 俺は思わず苦笑してしまう。きっと、彼女ならば俺なんざが守らなくても有言実行してしまうだろう。

 初対面の時の敵対。その時に俺は、それだけの力がマリカ嬢にあると知ったのだから。

 これから行うダンジョンアタックで……マリカ嬢に手を出すのは得策ではないと、俺と同じように人々は知ることになるだろう。



 ーー《境界の魔女姫》の、その真の力を。



「そうか。では、マリカじょーー」

「…………〝嬢〟は、いらないわ」

「…………え?」

「〝嬢〟と呼ばれるほどあたくしは若くはありませんし。こちらも貴方を呼び捨てにしてますもの。ダンジョン攻略には疎いあたくしだけれど、ダンジョン攻略は信頼がモノを言うと聞いたことがあるわ。咄嗟になれば、敬称なんてつけてる暇もないでしょうし。ですから……えぇ。敬称を省くのも1つの信頼構築だと思いなさいな」


 パサリッと髪を払いながらそう言うマリカ嬢ーーいや、マリカの頬はほんのり赤い。

 分かっている。ダンジョンではほんの少しの油断が命取りになる。咄嗟の時にならば敬称なんてつけていられない。

 だから、彼女もそうしろと言っているのだし。他の女冒険者達なんかも……敬称なしの呼び捨てで、名前を呼んでいるのに。

 なのに……あぁ。なんでだろうな。

 ただ呼び捨てでその名前を呼ぶだけなのに。なのに、ほんの少しだけ……緊張してしまう。


「………ごほんっ。では、改めてマリカ」

「……えぇ」


 少しだけぎこちない空気になるが……これでは下手なミスを犯しかねんと判断した俺は、一度大きく深呼吸をして頭を切り替える。

 それから彼女の目をしっかりと見て……その言葉を口にした。


「貴女より遥かに劣る若輩の身ではあるが……Sランク冒険者セーゲルが前衛を張らせてもらう。という訳で……背中は任せた」

「あら……」


 どこか驚いた顔のマリカ。

 何か変なことを言ったかと首を傾げたが、彼女はクスクスと笑いながら俺の隣に立った。



「お任せなさい。しっかりと、任されて差し上げるわ」





 こうして……俺達《海底神殿》組の、ダンジョンアタックが開始された。





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