第56話 第1回ダンジョンアタック・海底ダンジョン編
※???視点からグラン視点に移ります。
久しぶりの二日連続更新だよ‼︎
では、今回もノリと勢いとで進んでいきます。ぶっちゃけ、前回のタイトルで分かっていたとは思いますが(笑)
それでは、今回もよろしくどうぞっ╰(*´︶`*)╯
悠々と深い海を泳いでいた。
我が人生は海と共にあり。
潮の流れに身を任せ、長い永い時を泳ぎ生きてきた。
いつか穢れに染まるその日まで、我は泳ぎ続けることを選択した。
しかし、時に我が身を素材として得んと、無謀にも挑んでくる者がいた。
だが、我はいつもそれを簡単に退ける。
他愛ない。なんて脆い。
そんなにも弱いのならば我に挑まねば良いのに。
死に急ぐなど、なんと愚かしいこと。
だが、その日は違った。
最初はいつもと同じと思ったが……気づいた時にはもう手遅れであった。
簡単に刈り取られた首。
死と共に与えられた蘇生。
遥か高みにいる生き物に、心が震えた。
「ごめんなさいね、一方的に殺して。でも、貴方に協力してもらおうかと思ったら、殺して穢れをリセットさせた方が良いってアース達に言われちゃったから」
「殺しといてなんだけど、協力してくれるか?」
我らは弱肉強食。
強者に従うのは当たり前であるというのに、その2人は心配そうにそう聞いてきた。
ゆえに我は……ううん。ボクは満面の笑顔でそれに答えた。
『勿論、協力します‼︎とう様、かあ様‼︎』
*****
リジーが立てた計画。
それは、強制的に2人になる環境に追いやって、腹を割って話し合いをさせようという内容だった。
うん。色々と考えるのが面倒になったと言うか……自分達で解決させようとか思ったとも言う。
まぁ、そんなこんなで……。
まるでこの計画のために用意されたかのようなダンジョンがあった訳でして。
某日ーー色々と準備を終えた俺とリジーは、アクス王国の海辺に並んだ参加者達の前で仁王立ちしていた。
「という訳で‼︎第1回、ダンジョンアタック・海底ダンジョン編〜‼︎」
「いぇーい、季節感若干無視の水着回〜‼︎リジーの水着が見れた時点でもう目的の6割は達成してる〜‼︎」
「…………どうにも積極的だと思ってたら、それが目的だったのね?」
「じゃなきゃ積極的に手伝わないわな」
俺の隣に立ったリジーは呆れたように溜息を零す。
そんな彼女が着ているのは、俺の瞳の色と同じ翡翠色のオフショルダータイプ(とか言うんだっけ?)の水着。白いフリルがついたスカートから覗く生脚が大変魅力的だな。
後、真っ白なお腹が出てて可愛い。
いやぁ、本当に眼福、眼福。このために頑張ったと言っても過言ではない。
余談だけど……俺の水着は潜水する時に着るようなピチピチした水着を着ていたりする。
閑話休題。
ニコニコとリジーを見つめていた俺に、彼女はちょっと頬を赤らめる。そして、ペチッ頬を軽く叩いて抗議してきた。
「いやらしい目つきは禁止よ」
……おっと。
どうやら無意識にそういう目で見てしまったみたいだな。
いや……リジーが可愛い過ぎるんだから、仕方なくない?
でも、あんまりそういう目で見過ぎて怒られたり……もう二度と水着を着てくれなかったりしたら困るから、俺は素直に謝ることにした。
「ごめん。取り敢えず、いやらしくない目つきで見るのは許して」
「それなら許すわ」
「やったね」
((((それは良いの(か)……?))))
参加者達の心の声が聞こえた気がしたけど、いいんだよ。
どうせ見るのは止められないし。ほら……俺ってば、王太子の前に欲望に素直な思春期男子(笑)だから。
好きな女の子の水着姿なんて、見ないでいれるはずがないだろう?
俺に見つめられたリジーは恥ずかしそうに頬を赤らめる。だけど、ワザとらしく咳払いをすると……話を切り替えるように、海へと親指を向けた。
「まぁ、とにかく。早速行きましょうか」
「いや、ちょっと待って⁉︎いきなり連れて来られて、水着に着替えさせられた理由を聞きたいんだけどっ⁉︎というか、どこに行くつもり⁉︎」
困惑しきった顔で叫ぶのは……薄桃色と白のワンピースタイプの水着を着た姉御こと(真)リリィ嬢。
多分似合ってる(俺的にはリジー以外の人はどうでもいい)けど、自分には似合わないと思ってるのか……若干恥ずかしそうなリリィ嬢に、リジーはにっこりと微笑んだ。
「今から海底ダンジョンに行くの。だから、水着よ?」
「成る程……ってなんで⁉︎」
凄くノリツッコミだな?
まぁ、理由も聞かずに連れて来られて、いきなりダンジョンアタックするよって言われちゃそういう反応するよな。
「というか……儂らも呼ばれたのはなんでだ?」
「それ、あたくしも知りたいわ」
「……………」
なんとも言えない顔でそう質問してきたのは、浴衣?(温泉とかで着るヤツらしい。名前が分からない)を着たスイレンさんと黒いビキニ姿で豊満な胸を惜しげもなく晒すマリカ嬢。
ちなみに、マリカ嬢の隣に立った一般的な水着を着たセーゲルは「マリカ嬢が来るよ」って言ったら直ぐについて来ました。
チョロいな、セーゲル……。後、お前、胸元見過ぎだから……バレて叩かれても知らねぇぞ。
まぁ、好きな人の水着姿なんて見たらそうなるのも分からなくもないけどさ。
そんなことを考えていた俺の代わりに、リジーがスイレンさん達の質問に答えてくれた。
「だって、海底ダンジョンは3ルートを同時攻略しなきゃいけないの。流石に1人、1ルートじゃ心配だから……2人組になるように、スイレンさん達にも来てもらったのよ」
そう……今回のダンジョン、特殊な仕組みになっていて。3ルートを同時に攻略しなくちゃいけないっていう、パーティー分断系ダンジョンなんだってさ。
それぞれのルートを進み、中ボクを撃破。中ボクから落ちた鍵で、ダンジョンボクに挑む部屋に続く扉を開けることができる。
ちなみに、各ルートは遅い人だと一ヶ月ぐらいかかるらしい。まぁ、こんなんでも精鋭揃いだからとっととクリアできるだろ。多分。
リジーの説明に召集されたメンバーは〝だから、呼ばれたのか〟と納得した顔になる。そんな彼らに俺はニヤリと笑いかけた。
「ちなみに……チーム分けは勿論、俺とリジー。スイレンさんとリリィ嬢。マリカ嬢とセーゲルな?」
「えっ……⁉︎」
俺の言葉に、リリィ嬢は息を飲む。
……まぁ、スイレンさんと気まずいままだもんなぁ。
でも、このチーム分けを変えるつもりはない。
「なんか文句ある?スイレンさんとセーゲルは前衛、リリィ嬢とマリカ嬢は後衛。普通に考えて前衛と後衛を組ませると思うんだけど?」
「で、でもっ……このチーム分けである必要はっ……」
「必要があるのよねぇ。悲しいことにセーゲルはソロ歴が長すぎてパートナーのことを慮ることができないわ。戦闘慣れしていないリリィさんじゃついていけない。だけど、マリカ様なら空も飛べるし多少の無茶も大丈夫でしょう?」
「それに、戦力的にスイレンさんとリリィ嬢が組んだ方がバランスが良いんだよ。魔王なスイレンさんとSランク冒険者のセーゲル。強いのは確実にスイレンさんの方だし」
「……………うっ……」
俺らに言い負かされたリリィ嬢は押し黙る。
まぁ、ぶっちゃけると……ただの後付けの理由だから、別にリリィ嬢とマリカ嬢を交換しても良いんだけどね。
でも、そんなことしちゃったら折角立てた計画が本末転倒になるし、下準備が全部パァになる‼︎
結構面倒だったんだから、何が起きようともスイレンさんとリリィ嬢、セーゲルとマリカ嬢のチームで行ってもらうつもりだった。
そんなタイミングで、新しく増えた家族が勢いよく海から顔を出した。
『とう様、かあ様‼︎』
愛らしい声をあげたのは、ヘビに似たタイプの属性竜ことアクアドラゴン。
デフォルメされた身体でペチペチと陸に上がって来たアクアは、俺らの方を向くと尻尾をブンブン振った。
『とう様、かあ様。準備完了です‼︎』
そう告げたアクアは、まるで子供みたいに目をキラキラさせていて。
俺とリジーは直ぐにアクアの頭を撫で撫でした。
「おっと。ごめんな?準備を任せちゃって」
「ありがとう、アクア。流石だわ」
『いえいえ‼︎海はボクの領域ですから、ボク以外に適任はいません‼︎』
言葉には出さないけど頭を擦り寄せてくる様子は子犬みたいだな……。
ドラゴンは子犬だったのか……?
「ちょっと待て⁉︎なんでアクアドラゴンがっ⁉︎」
撫で撫でし続けている俺らに、スイレンさんはそう迫ってくる。
俺はキョトンとしつつ……〝そういえば言ってなかったな〟と思い出した。
「今、いるのはアクス王国なんだけど……ダンジョンアタックをするに当たって、一応俺の国とアクス王国に事前に通達しておいたんだよ。何かあった時のために」
「そうしたら、アクス王国の王女様が『この前の合宿の中継も大人気だったの。そんな面白そうなことをするから、また中継してくれる?』なんて言われてしまってね?」
『海中内のサポート要員兼中継係としてボクも同行することになっているんです‼︎』
そうなんだよなぁ。そのためにアクアドラゴン狩りました。
いや、マジで一方的に殺ったのに、よく協力してくれるよ。本当に感謝しかないな。
本当は海中で何かあった時の救助要員としか考えてなかったんだが……俺らがダンジョンアタックに集中できるようにって、ドラゴンズが自らダンジョン中継を担当すると名乗り出てくれた。
そんな感じで……海中内の映像をアクアがライトに転送。ライトとアースが協力して、スクリーンみたいに映像を映すことになっているらしい。ちなみにファイはアクス王国のスゥー王女と一緒に実況解説するらしい。
…………立派になったな、ドラゴンズ。
「という訳で。今回のダンジョンアタック、かなりの規模になっているから、中止はできません」
「「「…………」」」
流石に国家規模だと思ってなかったのか……リリィ嬢とセーゲル、マリカ嬢の顔色が悪くなる。
……これ。実はウチの国でも国王とか弟とその婚約者とかちょっと偉い人達も中継見てるんだよって言ったらもっと顔色悪くなりそうだな。
この中で唯一俺らに耐性(?)があるスイレンさんは、遠い目をしながらポツリと呟いた。
「……なんでグラン殿達が動くと大事になるんだろうな……?」
スイレンさんは大きな……それはもう大きな溜息を吐いて、頭を抱える。
止めろ、人をトラブルメーカーみたいに言うなよ。
どちらかと言えば俺よりリジーの方がトラブルメーカーだからな。
「まぁ、とにかく‼︎ここでグダグダしてても話は進まないわ‼︎早速、行きましょう‼︎」
リジーの合図に俺は頷く。
それを見たスイレンさんはハッとして、「ちょっと待っーー」って言いかけたけど、俺が転移を発動させる方が速かった。
「んじゃ、略式《転移》っとな‼︎」
転移する瞬間の皆の顔の驚きようは、それはもう凄かったです。




