第54.5話 魔王は月夜を見て、何を思う
2日連続ぅ……。
第53.5話、割り込みました。
スイレンさん目線‼︎
解説は後書きに‼︎
よろしくねっ☆
グラン殿の転移によって、屋敷に帰った儂は……そのまま誰にも会わずに、自室の窓辺に座り込み……月を肴に一人で酒を飲んでいた。
今日は1日で色んなことがありすぎた。
隣の大陸からの飛来者。
Sランク冒険者の求婚。
そして、聖女リリィとの出会いと……明かされた真実。
「………………結構、キツイのぅ……」
儂が出会ったのは、本物のリリィ嬢ではなく……あの偽物の方で。
そして……偽物の少女は、本物のリリィ嬢の身体を……十年間も奪っていた。
しかし、偽物の方は《死神の使徒》に連れて行かざるを得ない理由を背負っておって。
偽物のリリィ嬢は……この世界から消えた。
「…………はぁ……これから、儂はどうすればいいんだろうな……」
儂はぽつりと呟く。
魔王の座を甥っ子に明け渡したら、初恋の少女を探しに行こうとしていた。
けれど、今はそれも叶わない。
儂が出会った少女はこの世界にいるが……いないのだ。
だが、この感情は……今だに、初恋の少女へと向かっている。
出会ったのは本物のリリィ嬢ではなかったと分かっても……リリィ嬢に愛しさを禁じ得ない。
これではただ、リリィ嬢という肉体であれば、中身が誰であろうと良いようではないか‼︎
儂は自分の抱く感情に……泣きそうになる。
どうすれば良いのかが分からなくて、全てを放り出したくなる。
「………………ただ一人を愛する、一途な一族……か」
これまでそれは、とても素晴らしいことだと思っていたが。
今は少しだけ、重い呪いのようにも感じてしまっていた…………。
スイレンさんが昔出会った初恋の少女は、リリィの身体に違う魂が入った存在でした。
だけど、違う魂がこの世界から去り、本物のリリィになったのに……スイレンさんは今だにリリィに愛しさを感じます(溺愛一族だからね)。
でもそれは、彼女の肉体だけを愛しているようだし、本物のリリィには迷惑なのでは……どうすればいいのだ……と。
悩んでいるという、お話でした。




