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第6話 模擬戦っていうより?


はい、今後もよろしくどうぞ‼︎


 






「いけっ‼︎」



 イザークさんとの模擬戦とは比べ物にならない量の雷の槍、剣を出現させて無差別で放って行く。

 それをグランは紙一重で避けたり、弾いたりして防御していた。

 っーか、雷速に反応できる身体能力ってどういうこっちゃねん。


「あははっ‼︎サイッコーだわ、リジー‼︎」

「なんかムカつく‼︎」

「そりゃどうもっ‼︎」


 延々と魔法を発動し続けてもグランは守り続ける。

 というか、気づいたら二刀流になってるし。

 あ、今蹴りで落としやがった。

 この体力オバケめっ‼︎

 魔力切れ狙ってんのかっ‼︎


「むーかーつーくーっ‼︎」


『三重詠唱 習得』


 私は雷の槍、雷の剣、そして重力魔法を発動させる。

 グランは膝をつきそうになるが、「んっ‼︎」と叫ぶと魔法を無効化した。


「ねぇ、魔法無効化は反則だと思うのっ‼︎」

「俺も思った‼︎」


 私はグランを取り囲むように無数の雷を出現させる。

 そして、一斉に放った。


「いけぇっ‼︎」


 土煙が巻き起こり、グランの姿が見えなくなる。

 やったか?……と思ったけど、それはフラグだと後から気づいた。


「ふーっ……」


 煙が晴れて、そこにいたのは剣じゃなくて二刀流の刀を構えているグランさん。

 え、何それ。

 無駄にかっこいいんだけど。


「お前、カタナチートかよっ‼︎」

「残念‼︎武器全適性なんだよ‼︎」

「はぁっ⁉︎」

「ちょっと王宮で試しに扱ってたら、全部適性あったわ‼︎」

「ふざけっ‼︎」

「お前もそーだろがっ‼︎」


 なんか、一向に決着がつかなさそうになってきた……。

 それが向こうも分かっているからか、私達は互いに笑い合った。


「行くぞ?」

「うん」


 互いに最後の一撃と決めて、踏み込む。

 私は雷の一撃を。

 グランは特攻を。


 そして……。



 グランの姿が揺らいだ。



「へ?」


 グランの姿を視力的にも魔力的にも探ろうとすると、脳内アナウンスで『魔力探知 取得』と流れる。

 直ぐにそれを発動させるが……グランが魔法で移動した訳じゃないと把握した。

 転移のようで、転移じゃない。

 ってことは、普通に身体能力ステータスによる高速移動?

 え?マジで?

 とうとう人間辞めた感じなんすか?グランさん。

 思わずそんなことを考えてしまった私は、一瞬で目の前に現れた彼に反応が遅れる。


「っ‼︎」

「油断するなよ、リジー」


 間に合うか間に合わないか……防御魔法を発動させようとした私よりも先に、グランが動き出していた。


「俺の勝ち」

「んぐっ⁉︎」


 …………………へ?


 唇に触れる柔らかい感触。

 喰むように動かされるその温もりは……。



 ……………うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ⁉︎

 何してるのっ⁉︎ねぇ、マ・ジ・でっ‼︎



 何されてるって⁉︎グランの唇が私の唇に触れてるんだよっ⁉︎

 え、これってキス⁉︎

 前世含めてファーストキスがこんなムードもへったくれもないこんな時にするのっ⁉︎

 思考回路が残念でも、ファーストキスくらいはロマンチックにしたかったよっ⁉︎

 つーか、長い‼︎長い‼︎長い‼︎

 上手く息ができないんだけどっ……どうやってすればいいのっ⁉︎


 ぷるぷると震え始めた私に気づいたのか、グランがやっと唇を離してくれる。


「ぷはっ‼︎」

「んっ」

「っっっ⁉︎」


 でも、離れたと思ったら……口を開けた瞬間にもっと深くキスしてきやがった‼︎

 舌と舌が絡み合うこれって……あぅぅぅっ‼︎

 可愛らしい触れるだけのキスじゃなくてかなーりディープキスだった。

 これ子供がするヤツじゃない……。

 なんかエッチな音が身体中に響いて……スッと背筋を撫でられた瞬間、腰が抜けた。

 でも、倒れないように強くグランが抱き締めてくれて………。

 あ、思考が……溶けて……やばい…………。


「ふぁ……」

「よし、勝った‼︎」


 やっとキスを止めたグランは満面の笑顔で言う。

 顔が熱くて、思わず睨むが……グランはニヤリと笑っているだけで。

 ムカつくっ‼︎


「………酷い…ファーストキス……だったのにぃ……」

「俺もだぞ?」

「……も含めてだもん……エッチだぁぁ……」

「あ、マジか……それはごめん」


 ポロポロと涙が零れてしまって、グランがギョッとする。

 いや、お前の所為だからな。


「あぁ、泣くなよ。リジー」

「お前の所為だぁぁ……」

「あー、マジでごめん‼︎悪かった‼︎泣かないでくれ、リジー。そんなに俺にキスされるの嫌だった?」


 グランは服が汚れるのも構わずに地面に胡座をかくと、私を膝の上に乗せて向き合うような形になる。

 そして、目尻を拭いながら……彼の方が泣きそうな顔をした。



「俺のこと、嫌いになった?」



 嫌だったかと聞かれれば、嫌だった。

 でも……それはグランが嫌いだからじゃない。


「………こんなとこでファーストキスされたら、誰だって泣くもん。ムードのカケラもないもん」

「………あぁぁぁ…そりゃそうか‼︎ごめん‼︎リジーが可愛すぎて、キスしたくなって……そーいうの頭の中から消えてた‼︎」

「うぐっ」


 なんでそーいうの簡単に言うかなぁっ⁉︎

 顔……というか、身体中が熱くて仕方ないんだけどっ⁉︎

 ムカついてポカポカ殴るけど、全然ダメージにならんっ‼︎


「今度はちゃんとするから、許して?」


 蕩けるような外見年齢に似合わない笑顔を浮かべられて、私はそっぽを向く。

 ………この際だから、ちゃんとお詫びしてもらいましょう。


「………………甘い物、食べたい」

「勿論、用意する」

「ちゃんと、お詫びしてね」

「あぁ……甘やかしてやるよ」


 ………結局、グランの方が嬉しそうな顔してるんだけど。

 なんか悔しいぞ、こら。


『ママ〜、パパ〜。イチャついてないで戻ろ〜』

「イチャついてないっ‼︎」

「ママは素直じゃないなぁ?」


 アースの指摘に今更ながら周りに人がいたことを思い出す。

 グランに抱き上げれて、私は恥ずかしくて悔しくてまたポカポカ殴っていたが……体力おばけにスルーされた。



 ………っていうか、周りの皆様固まりすぎじゃね?

 どしたん?



「…………フリードよ……お前の娘は何者だ」

「………陛下。恐れながらそれは陛下のご子息にも言えることかと」

「というか、キスの方が印象強すぎてなんとも言えないわ……グランヒルト、そこまで手が早かったの……?」

「………ですわね、王妃様……」


 ………家族の皆さんが顔面蒼白っすね。

 周りにいた魔法使いさんや兵士さん達も。

 ………やりすぎたかも?


「………グランさん……やりすぎたっぽいっすよ」

「いーんだよ、敢えてだから。力があるって見せた方が下手に手を出そうと思わないだろう」


 そう言われれば、納得だね。

 返り討ちになるリスクを理解しながら喧嘩売ろうと思わないもんね。


「後さ、俺のスキルめっちゃ増えてんだけど見る?」

「…………見る」

「ステータスオープン」




 名前:グランヒルト・ファイ・ディングス

 職業:第一王子

 レベル:46


 体力:6350

 魔力:1300


 物理攻撃:6800

 魔法攻撃:100

 物理防御:150

 魔法防御:140

 速さ:1650

 運:110


 魔法:光属性 無属性 空間魔法

 特技:武器全適性 二刀流

 スキル:言語理解 状態異常耐性 詠唱短縮 攻撃力上昇 空間属性最適性化 狂化 挑発 威圧 手加減 魔法無効化 超集中 自動体力回復 瞬間強化 瞬歩

 称号:転生者 苦行を乗り越えた者 攻略対象 戦闘狂 フリージア溺愛家




 うわぁ……なんかどんどんおかしくなってるぅ……。

 というか、最後の称号、何。


「グラン、最後の称号、何」

「へ?……あ、本当だ。なんだこれ」


 どうして〝フリージア溺愛家〟なんて称号ついてんの。

 てか、そんな称号存在するんかい。


「どうしてステに私を溺愛するって載ってんの。おかしいでしょ……」

「俺に聞くなよ。勝手に追加されてくんだから‼︎」


 あんな行動してんのに、実際に文字にされると恥ずかしいのか……グランの顔がちょっと赤くなる。

 そして、ぶっきらぼうに言ってきた。


「お前もステ、見せろよ」

「いいよ、ステータスオープン」




 名前:フリージア・ドルッケン

 職業:悪役令嬢(攻略対象グランヒルトに溺愛され中)

 レベル:50


 体力:530

 魔力:5750


 物理攻撃:110

 魔法攻撃:3500

 物理防御:250

 魔法防御:4700

 速さ:60

 運:50


 魔法:全属性

 スキル:言語理解 詠唱短縮 精度上昇 魔力消費量減少 魔力充填 二重詠唱 雷属性最適性化 手加減 詠唱破棄 三重詠唱 魔力探知 自動魔力回復

 称号:転生者 苦行を乗り越えた者 竜殺し 鳴神姫 グランヒルトの溺愛対象




「「……………」」


 ねえ、ステータス。

 どうして君はそんな表示なの?


「………本当は、俺とお前のステの表示が化物チックとかツッコミ入れた方がいいんだろうけど……溺愛表示が謎すぎてそっちに意識がいく……」

「それな」


 ………取り敢えず、溺愛関連のことは置いておいて。

 グランに抱き上げられたままお父様達のところに戻ったら、お父様達は若干、狼狽していた。

 ごめん、恐がらせる気はなかったんだが。

 しかし、ここでまさかの反応を示したのはお兄様だった。


「リジー‼︎リジーはとても強かったんだね‼︎」

「え?まぁ……」

「僕にも教えてくれるかい?」

「え、いいけど……」


 お兄様は目をキラキラさせて嬉しそうにはしゃぐ。

 ヤバイ、なんかちょっとジーンってする……。

 恐がられるより、こうやって好意的に反応してもらった方が嬉しいもんね。


「俺も良かったら教えるよ、エドガー」

「ほんとうですか、殿下‼︎」

「あぁ」


 グランも私を下ろしながら、少し嬉しそうだ。

 それに伴って、兵士達もバッとグランに駆け寄る。

 彼らは口々に「我々にも教えて下さい‼︎」と言っていて……彼はちょっと面食らっていた。

 恐がられると思ってたからね。

 うん、びっくりだ。


「………ふむ…どうやら我らが子供達は互いが同じだと分かっているからこそ、寄り添うらしい」


 国王陛下の言葉に私とグランは振り返る。

 その瞳に滲むのは恐怖かと思っていたら、どうやら呆れていたみたいだ。

 ……普通、恐がると思うんだけど……強いね。


「グランヒルト。人前でフリージア嬢にキスをしたのだから、きちんと責任を取りなさい」

「当たり前です」

「よろしい。では、ドルッケン公爵家令嬢フリージア嬢と我が息子、グランヒルトの婚約を認めよう」


 その言葉に私達は頭を下げた。

 そうだよ。

 婚約するために動いてたはずなのになんで余計な模擬戦までしたし。

 でも、力を見せつければ手を出そうと思わないようになるってグランが言ってたから仕方ないのかな?

 …………なんか、人前でキスしてるの披露しただけの気もするけど。


「リジーも殿下を支えられるよう、頑張りなさい」

「はい、お父様」


 お父様の言葉に私は頷く。




 こうして、私とグランはゲームより3年ほど早く、婚約者になった。




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