第53話 シリアス?物騒?まぁ、取り敢えず混沌的な説明会(2)
読んでくださり、ありがとうございます〜‼︎
うわぁ……二日連続とかいつぶりだろぉ……。
まぁ、今後ともよろしくねっ☆
「大変失礼しました。お待たせしてすみません」
「「「「……………いえ……」」」」
謎空間から戻ってきたアルフォンス様は……カルディア様を連れていなかった。
代わりに………。
………………何故か、彼の艶っぽさが増していたわ。
上気した頬に、熱っぽい吐息、着崩れた服。
これはアレなの……いや、疑うまでもなくアレなのね?
肉体的に黙らせてきた的な感じなのかしらっっっ⁉︎
「あ、あの……カルディア様は一体……?」
ぶふっ⁉︎
まさかのスイレンさんがカルディア様のことを聞いて、私達はギョッとする。
けれど、アルフォンス様は気を悪くすることなくそれに答えたわ。
「あぁ……怖がらせちゃいましたかね?でも、仕方ないんです。主人の性質ですから」
スッと目を細めたアルフォンス様の、瞳が怪しく光る。
「言ったでしょう?主人がいた世界は狂った竜の世界だと。つまり、異常性を持つ竜が暮らす世界だったらしく……あの方の行動基準は〝好奇心〟。つまり、面白いか面白くないかが一番重要で。まぁ、言ってしまえば……簡単に国を滅ぼせる力を持った、飽き性な子供なんです」
「「「「え〝?」」」」
…………簡単な国を滅ぼせる力を持った、飽き性な子供?
…………それ、かなり危険じゃないかしら?
「まぁ、僕が眷属となり……空間・世界に関する力、《世界》の力を受け入れるついでに、その異常性も分かち合っているので……アレでもだいぶ緩和された方なんですよ?」
アルフォンス様はにっこりと笑いながら、そう告げる。
………………なんか、コレ。これ以上、聞いたら正気度が削られそうだわ。
「まぁ、とにかく。寝かしつけてきましたから、暫く主人は起きてきません。ご安心ください」
「「「「は、はぁ……」」」」
私達は思わず目を逸らしてしまう。
どう反応しろと言うの、コレに‼︎
アルフォンス様は私達の言いたいことが分かっているのか、おかしいモノを見ているかのようにクスクスと笑う。
そして、肩を竦めながら答えたわ。
「いい加減、真面目に話を進めましょうか。意地悪し過ぎてしまいましたし……皆さん、とっとと我々に退散して欲しいでしょうしね」
「「「「っ‼︎」」」」
ぶっちゃけ、それは間違いではないから何も言い返せない。
アルフォンス様は気まずさに目を逸らす私達を見ながら……さっきの質疑応答で告げた答えを細くするように説明を始めたわ。
「では、勝手に説明させて頂きます。先ほども言いましたが、世界は無数に存在します。そこに生きる魂が死ぬと、《死神》と呼ばれる方によって魂の浄化をされ、異なる世界へ生まれ落とされます。つまり、新たな命に生まれ変わらせていると言うべきでしょうか。魂は数多の世界を循環させられているのです」
「…………魂の浄化?」
「はい。ですが、魂の質によっては魂の浄化に対抗するモノが現れたり、虫食いのようになったりもするそうです。それが転生者……前世の記憶を持つ者になります。ちなみに、その虫食いの記憶を持つ人が新たに生まれ変わった世界で、前世の世界の記憶を本にしたり、ゲームにしたりしているらしいですよ?」
「「っっっ‼︎」」
それを聞いた私とグランは大きく目を見開く。
乙女ゲームに転生したと思っていたけれど……まさか逆だったなんて‼︎
けれど、私はふとあることに気づいてしまう。
「で、でもっ……ゲームだと様々なルートとかあるわよね?そうなると……微妙に話が噛み合わないわ」
元々起きたことがゲームになっているならば、ルートなんてなくなるはず。
そこら辺は作った人の妄想で補っているってことなのかしら……?
アルフォンス様は「それもそうなんですが……」と言葉を区切る。
そして、無表情に近しい顔で告げた。
「……………元々起きたことがゲームになっているのか。ゲームを主に新たな世界が産まれたのか……それは僕にも分かりしれない話なんですよね。そういったのは、僕らが認識できない枠組みの話でしょうし」
その言葉に、私達は言葉を無くしたわ。
…………なんか、深く考え出したら思考の坩堝に嵌って、抜け出せなくなりそう。
「話を戻しますが……時に、その浄化から逃げ出して勝手にどこかの世界に行ってしまう魂や、周りに悪影響を及ぼす欠陥魂なんてモノが出てしまいます。まぁ、《死神》様曰く『たった1人で無限にも近い魂を管理してるんだから、手が回らないんだ‼︎こんちくしょう‼︎』とのことで。ゆえに、魂を管理する《死神》の使徒である僕は《死神》様から魂を見抜く力を譲渡され。世界を渡る力持つ主人と共に世界を旅し、それらの魂を回収する役目を負っているのです」
「…………ん?」
それを聞いたグランは思わずと言った様子で首を傾げる。
そして、彼に質問した。
「えっと……アルフォンス様は《死神の使徒》として、その魂を回収しにきたということでいいのか?」
「えぇ、彼女は浄化から逃げた方の魂ですね。魂のまま彷徨うということは、ある意味、皮膚がない状態で出歩いているようなモノ。浄化を受けずそのままでいたら……魂は摩耗して、消えてしまう。生まれ変わることすらできなくなってしまいます。貴方達風に言うなら、魔物になる可能性も出てきてしまう。そうならないように回収したいんですが……」
その話で、この子が姉御に取り憑いていた理由も納得したわ。
本当に……生まれ変われなくなってしまいそうだったって事なのね……。
「でも、何故今頃なんだ……?もっと早かったら、リリィ嬢は……」
スイレンさんは、ぽつりと呟く。
………そうね……それには一理あるわね……。
もっと、早くきてくれたなら……姉御は十年という時間を無駄にしなかったはずなのに。
けれど、アルフォンス様は困ったような顔で肩を竦めたわ。
「それは、本当に申し訳ないと思ってますよ。でも、僕がこの役目を負ったのはここ最近のこと。それに……僕らはどこに行ってしまったか分からない魂を、数多の世界を巡って探すんです。一度、その世界に降り立たないと……僕は回収対象である魂を見つけられない。だから、今頃と言われても……」
「…………それじゃあ、仕方ないね」
「だがっ……リリィ嬢っ……‼︎」
「スイレン陛下。あたしのことを思ってくれて……ありがとう。でも、アルフォンス様も悪くないんだよ。これは、仕方ないことじゃないか……」
シンッ……と静まり返った応接室。
姉御は、アルフォンス様の方を向いて……言葉を紡いだ。
「アルフォンス様……どうか、この子をお願いします。あたしの十年を使ったんだ。消えられたら寝覚めが悪いったらありゃしない。ちゃんと……生まれ変われるように、してあげて欲しい」
一番被害を被っていた姉御は、彼に頭を下げて半透明少女のことをお願いする。
…………凄いわ、姉御。
私だったら、自分の人生を奪った存在のために頭なんて下げられない。
姉御という人の人徳が、よく分かるわ。
「はい。責任を持って回収……いいえ。引き取らせて頂きます」
アルフォンス様はそう言って、半透明少女の方に手を向ける。
彼女はこれから何が起こるのかと怯えて、閉じ込められていた透明な板を叩きつける。
けれど、彼はそんなことを気にせず……閉じ込めていた結界のようなモノを解くと、彼女へと声をかけた。
「さて。喋れるくせに何も語らなかった魂よ。十年という時間を君のために消費したのに関わらず、ここまで言ってくれた彼女のために……せめて最後に何か言った方が良いのでは?」
『っ……‼︎』
少女はビクリッと身体を震わせ、姉御の方へと視線を向ける。
そして……ボロボロと涙を零しながら、頭を下げた。
『ごめん、なさい……』
「……………」
『貴女の、時間を奪って……ごめんっ……なさいっっ……‼︎』
姉御はその謝罪に言葉を詰まらせる。
その顔は、怒っているような泣いているような、哀しんでいるような複雑な顔で。
けれど……姉御が告げた言葉は。
「…………どうか、生まれ変わったら幸せになって欲しいかな」
最後まで、優しい言葉だった。
『っっ……‼︎ごめんなっ、さいっっっ……‼︎』
半透明少女は、アルフォンス様に謎空間に入れられるまで謝罪の言葉を言い続けた。
なんとも言えない空気が流れて、上手く言葉が紡げない。
けれど、今は何も言わないべきだと……思ったわ。
「…………では、僕は役目を果たしましたので。そろそろお暇させて頂きます」
「…………最後に聞かせてくれ」
グランは立ち去ろうとする彼は声をかける。
その声は、純粋な疑問を問うようだった。
「貴方とカルディア様は、どうして共に?」
「……………おや。そこが気になりましたか」
「あぁ。だって、貴方は《死神の使徒》だと言うのに……《竜》だと言うカルディア様の従者であるように語るから。純粋に気になって」
「…………うーん……」
アルフォンス様は顎に手を当てて、考え込むように黙り込む。
………別に考える必要はない質問だと思うのだけど。
「…………それには聞くも涙な事情があるんですが……うん。語るのは止めておきましょうかね」
「…………語るのは、止める?」
「えぇ。だって、つまらないじゃないですか。語るのは簡単ですが……いつか皆へと紡がれる物語として知って頂けた方が楽しそうです」
クスクス、クスクス。
アルフォンス様は楽しげに笑いながら、軽い口調で告げる。
「安心してください。僕らの物語は、どこかで語られた竜の話より狂気的ではありませんから♪」
「ぶふっ⁉︎そんなこと言われたら、安心できないのだがっ……⁉︎」
「あははっ‼︎では、皆さん。さよなら。きっと実際には二度と会わないと思いますが……どこかで僕らの物語を見つけた時に、物語を介してお会いしましょう」
そう言った彼はこちらの挨拶も聞かずに、最初に現れた時と同じように歪んだ空間の先に消えて行く。
残された私達は……シリアスというか、物騒というか……とにかく混沌的な説明を終えて消えた二人に対して……嵐のようだったと思ったわ………。
いつかカルディアとアルフォンスの物語を書けたらいいな‼︎




