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第52話 シリアス?物騒?まぁ、取り敢えず混沌的な説明会(1)


読んでくださり、ありがとうございます‼︎


【解説】

新キャラのカルディアとアルフォンスは、いつか書こうと思っていたネタの登場人物なのですが……著者の他作品のクロスオーバー(と言えるのか?)要素もあります。

ちょっとぶっ飛んだキャラ(?)かもしれないので、苦手な人は逃げようね‼︎


 







「ふ〜ん。ふ〜ん、ふふふ〜ん♪」





 どこか間の抜けた鼻歌を歌いながら、カルディアさん……いいえ、カルディア様は美しい髪とドレスが汚れるのも構わずに床に座り、楽しげに本を読む。

 そんな彼女の傍らに甘いフルーツティーの入ったティーカップを置いたアルフォンス様は……現れた時と同じように歪んだ空間を生み出し、そこから取り出した椅子に、腰をかけた。


「…………それは、空間魔法か?」


 グランはそう恐る恐る質問する。

 でも、空間魔法ならば適性のある彼なら見抜けるでしょうに……なんでそんなことを質問するのかしら?

 そんな私の疑問に答えるように、アルフォンス様は首を傾げながら、口を開いたわ。


「うーん、どうなんでしょうね。これは我が主人から借り受けている力ですので」

「…………カルディア様の?」

「そうです。ですが……どう説明するべきでしょうか。地味に面倒な事情があるんですよ」

「では……こちらの質問に答えてもらうのはいかがか?」


 スイレンさんがそう声をかけると、アルフォンス様は「それはいいですね。知りたいことだけ答えられますし」と言いながら笑う。

 いつもより緊張した面持ちをしたスイレンさんは……カルディア様とアルフォンス様を交互に見てから、恐る恐る口を開いた。


「まず聞きたいのだが……お二人の正体は〝りゅう〟か?」

「…………ふむ。()()()同じ〝りゅう〟ですから見抜けたのでしょうか。答えは〝イエス〟ですよ」


 アルフォンス様はそう言って、手を前に出す。

 すると……彼の腕がパキパキと音を立てながら、カタチを変えていった。

 それは白い鱗を持つ竜の腕。

 アルフォンス様は竜化した腕を持ち上げながら、話を続ける。


「僕も主人も正体は……《竜》です。ただし、僕らはそれぞれ異なる世界の《竜》になります」

「……異なる世界の、竜?」

「えぇ」


 薄っすらと笑うアルフォンス様を見て、何故か背筋に冷たい感覚が走り……思わずグランの手を握り締める。

 グランも同じ気持ちだったのか……私の手を握り返してくれて。

 私達は喉を鳴らして、次の質問をした。


「…………異なる世界って?」

「そのままの意味です。この世界には、平行世界だけでなくパラレルワールド、様々な運命の分岐によって無数……無限に等しい世界が存在します。まぁ、貴方方も()()()()()()()ようですから、想像はついていたかもしれませんが」

「「っっ⁉︎」」


 そう言われた私とグランは息を飲む。

 だって、何も話してないのに転生者だと見抜かれていたのだもの。

 アルフォンス様は驚愕に染まる私達を見て、笑う。


「見抜いた理由も後ほど、話させてもらいますね。まぁ……とにかく。世界は多種多様です。例えば、精霊王が守護する世界だったり……魔法使い、魔女によって幻想種と呼ばれるモノが召喚される世界だったり。僕がいた世界は、人々が魔法を使うために竜や魔獣が狩られていく世界で……主人がいた世界は、狂った(壊れた)竜達の世界だったようですよ」


 ……………確かに、前世の記憶がある以上、異なる世界が存在するんだろうとは思っていたけれど。

 呆然とする私達を見ながら、「次の質問は?」と彼は聞いてくる。

 一番先に我に返ったスイレンさんは……次の質問をした。


「では、何故異なる世界で生きておったお二人は……この世界に?」

「それは勿論、《死神の使徒》として……そこの魂魄、魂を回収しに来たからです。あぁ、ちなみに。《死神の使徒》ゆえに貴方方が転生者であることを見抜きました」


 …………あぁ……質疑応答形式は、失敗だったかもしれないわね。

 質問に答えてくれてはいるのだけど……私達が知らないことが多すぎて、話の全容を理解することができないもの。

 スイレンさんも同じように愚策だったと思っているのか……顔を歪めていたわ。


「ふふっ……どうされました?」


 アルフォンス様はこちらの苦悩を理解しているかのように、クスクスと楽しげに笑う。

 今まで黙って話を聞いていた姉御はそんな彼を見て、「だぁぁぁ‼︎」と叫ぶと、バンッ‼︎とテーブルを叩きつけた。


「話がくどい‼︎もっと分かりやすくして‼︎」

「…………そちらの要望に従っただけなのですが」

「でも、分からないモノは分からないんだよ‼︎」


 あ、あ……姉御ぉぉぉぉぉ⁉︎

 ちょっと貴女、無鉄砲すぎないかしらぁぁぁぁ⁉︎

 アルフォンス様はかなり譲歩してくださってるのに、更に我儘を言うなんてっ……どうなることかっ……‼︎

 思わず姉御を止めようとした瞬間……。



 バサリッと本が落ちる音がした。




「……………うーん。飽きた〜」




 ぽつりと呟かれた言葉に、私達の動きが固まる。

 本を投げ出して、ゾッとするほど仄暗い金色の瞳をこちらに向けるカルディア様。

 その異常な姿に、私達は息を飲んだわ。


「アルぅ〜……()()()()、飽きたぁ〜……早く行こぉ?」


 幼さを感じさせる口調なのに、何故か()()()

 私だったら返事を返したくないと思うのに……アルフォンス様は変わらぬ調子で返事をする。


「駄目ですよ。まだ説明が終わっていません」

「やぁ〜」

「やぁ〜じゃありません。ちゃんと責務は果たしましょう?」

「やなの‼︎飽きたの‼︎つまんないっ‼︎やだぁぁぁ‼︎」


 子供のように叫ぶカルディア様から、じわじわと先ほど感じた威圧のようなモノが出始める。

 再度震えだす私達の身体。

 癇癪を起こした子供のような彼女を見て……アルフォンス様は大きな溜息を零したわ。


「………………はぁ……すみません。一時間ほど席を外しても?」


 アルフォンス様はそう言うと立ち上がり、駄々を捏ねるカルディア様を抱き上げる。

 ……………どうやら、一時間ほど席を外すのは決定事項みたいね。

 けれど、カルディア様は嫌がる子供のようにアルフォンス様を拒絶する。


「やぁっ‼︎」

「はぁ……黙ってください、主人」

「むぐっ……‼︎」

「「「「ぶふっ⁉︎」」」」


 チュッ……と軽いリップ音をたてながら、唐突に始まったキスシーンに私達は思わず噴き出し、慌てて目を逸らす。

 ちょっ……待って頂戴‼︎

 なんでいきなりキスシーンが始まっちゃうの‼︎


「んん〜‼︎」


 カルディア様の抵抗するような声が聞こえるけれど、徐々にその声が小さくなって……最終的には聞こえなくなる。

 そして、目を逸らし続けた私達に声がかけられたわ。


「では、少し退席しますね」


 その声に視線を戻せば……何度の出現か分からない空間の歪みの中に入ろうとするアルフォンス様達の姿。

 けれど、入る直前に振り返ると……存在感が消えかけたいた半透明少女を一瞥したわ。


「あぁ、申し訳ありませんが。回収対象に逃げられたら困るので、ちょっと世界と切り離しておきますね」

「「「「えっ?」」」」

「《隔界》」

『っっっ⁉︎』


 ピキンッ‼︎


 半透明少女の周りにガラス板のようなモノが展開され、透明な箱に詰められた状態のようになる。

 バンバンと中からその板を叩きつけているようだったが……そのあとは一切聞こえなくて。

 アルフォンス様はそれを確認すると「では、少々お待ちを」と告げて、歪んだ空間の中に消えていった。

 消え去ると同時にカルディア様からの威圧からも解放されて、私達は詰めていた息を一気に吐き出す。

 そして、若干涙目になりながら……グランの肩に凭れかかったわ。


「もぅ……なんなの。分からないコトだらけだわ‼︎」

「………あー……俺らチートだと思ってたけど……上には上がいたな……あの二人はヤバい。色々とヤバい」

「あのお二人が規格外なのは、儂の方がよく分かっとるわ‼︎同じ〝りゅう〟なんて言われたが……レベルが違いすぎる‼︎」

「…………ごめん。ちょっと、あたしの行動軽率すぎたかも」

「「「姉御リリィはもう文句とか言わないで頂戴(くれ)‼︎」」」

「はいっ、黙ってます‼︎」




 それから約一時間。



 アルフォンス様が謎空間から戻ってくるまで……私達は疲労(ある意味、心労に近い)を労わるように大人しくしていたわ(半透明少女を気にしてる余裕なんてなかった)。








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