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第5話 悟り開いた両親ズ(笑)


今後も頑張ります‼︎よろしくどうぞ‼︎


 





 グランは仕事が早かった。


 そうとしか言えない。



 煌びやかな王宮の、応接室。

 あくまでも個人的な顔合わせだと言ってやって来たこの場所は、そんな空気じゃありませんでしたよ、はい。


 目の前のソファには、国王夫妻とグラン。

 テーブルを挟んだソファにはアースを抱いた私と両親、お兄様がいた。


「初めましてだな。エドガー、フリージア嬢。わたしはこの国の王ルーゼンヒルト・ファイ・ディングスだ」

「初めまして。王妃のグラティスですわ。うふふっ、グランヒルトに聞いていたように可愛らしいお嬢さんですこと」


 亜麻色の髪に琥珀の瞳を持つ国王陛下と金髪に翡翠の瞳を持つ王妃様は無駄にキラキラしている。

 両親(今更だけど、父はフリード、母はローズという)は国王夫妻に挨拶をしていた。

 そして……目の前で王子様のように微笑む、白の王族の衣装を着たグラン。

 彼はニコッと微笑んで、胸に手を当てた。


「わたしはグランヒルト・ファイ・ディングス。よろしくお願いします」

「エドガー・ドルッケンです‼︎よろしくお願いします」

「……………」

「フリージア?」


 返事をしない私にお父様が怪訝な顔をする。

 いや、ごめん。

 だってこんなグラン、ウケない訳ないじゃん。

 今、サイレントモードで我慢してるんだよ。

 それが分かっているからか、グランも笑顔のまま固まる。

 お前、私を笑わせ続ける気か。


「ふっ……フリージア…ドルッケンですわ……よろしく、おねがいします……」

「…………ぷっ‼︎」

「……………」


 貴族令嬢として相応しい感じ(でも、笑いは我慢してる)で挨拶してやったら、グランが噴いた。

 その瞬間、私の化けの皮は剥がれましたとも。


「おい、我慢したのになんで先にそっちが笑う」

「ごめん、無理だった」

「おい」

「いやいやいや、リジーにそれは似合わねぇわ。普通にしてくれない?サイレントモードはキツイ」

「それはこっちの台詞なんだけど?」


 思わずジト目で見たら、グランはケラケラ笑って私の手の甲にキスをした。

「ごめんな?」とか甘く微笑みながら言われたら、何も言えませぬよ。

 ムカつく。


「アースも元気か?」

『元気だよ、パパ〜』

「ママをちゃんと守ってるか?」

『うん‼︎』

「偉いぞ〜」


 うりゃうりゃとアースの頭を撫でるグランと、キャキャと興奮するアース。

 なんか……ほのぼのしてるけど、ちょいっと落ち着こうな?

 国王陛下達が固まってるから。


「グランヒルト……?」

「はい、なんですか?父上」

「いや、その話し方は……」

「あー……そういえば、父上達には見せたことなかったですね」


 グランはあっけらかんと言い放つ。

 国王夫妻はショックを受けたような顔をしていて……私も少し同情した。

 実の息子の本性を知らなかったって可哀想だもんね。


「猫被りしてたの?」

「猫被りなんて人聞きの悪い。必要以上に接してこなかっただけだ」

「グランさんや、そっちの方が酷いぞ」

「そうか?今でもリジーぐらいしか信用できないって思ってるぞ?」

「その信用度は何故ぞ……」

「同じチートだからな」


 サラッと毒を吐くグランは毒舌なんだね。

 もう国王夫妻は泣きそうになってるよ。

 というか、それはうちの家族もだね。

 私の本性を見て呆然としてるわー。


「つーか、どうやってこの顔合わせセッテイングしたの?」


 いやさぁ?

 ぶっちゃけると私とグランって公的な場では会ったことないんだよ。

 だから、さっき王妃様が言ってたグランから聞いたって、どういうこと?的な感じなんだよね。


「えー?そりゃあ、〝夢であったんです‼︎父上、母上‼︎ドルッケン公爵家のフリージア嬢と会わせて下さい‼︎〟……的な?」

「………ロマンチストか、お前……」

「公的なところで会ったことねぇーんだから、仕方ないだろ。逆に公爵令嬢と婚約するメリットってプレゼンした方がアウトだろ」

「なんで?」

「まだガキだからな?俺ら。一丁前にプレゼンとかしたら、疑われんだろ」

「あ、年齢のこと忘れてたわ〜」


 ケラケラと笑ったら、グランは呆れたような顔をした。

 仕方ないでしょ、グランと話してると年齢忘れるんだから‼︎


「さて。まぁ、面倒くさいからぶっちゃけますね?父上、俺はリジーと婚約します」

「「「「「はぁっ⁉︎」」」」」


 婚約の話を聞いてなかったのか、その場にいる人達が驚いていた。

 思わずジト目で見たら、彼はニヤリと笑った。


「リジーはあの雷柱の魔法を使った魔法使いですよ。そして、このアースドラゴンを従える者でもある。彼女はこれから沢山の輩に狙われるでしょう」

「………少し待て、グランヒルト。フリージア嬢があの雷魔法を使ったと何故知っている?……というか、アースドラゴンだと?」


 流石、国王陛下。

 グランの本性に動揺してても、そーいうところはちゃんと王様モードになるんだねぇ。

 でも、グランはそんな陛下に追い打ちをかけた。


「説明は後でします。俺はリジーの盾になるため、彼女と婚約します」


 もう少し説明してやれよ、グランさん。

 でも、下手にゲームの話とかしたら面倒だし……頭使うの苦手だし。

 面倒だというのは私も同じだから、全部任せちゃいますけどね‼︎


「信じられないな……」


 国王は困惑した顔で黙り込む。

 グランはそこに追い打ちをかけるように言った。


「父上達はこの婚約を許すか許さないからだけ決めて下さい」

「……少し、考える時間を……」

「じゃあ、リジーと国外逃亡します」

「「「「「はぁっ⁉︎」」」」」

「リジーを守れなくちゃ意味がないんだ。ならまだ、この国に留まるより旅をした方が安全だ」


 それはそうだろうね。

 アースドラゴンを連れてるし、魔法の力は強いし。

 下手に一箇所に留まってるよりは、旅してる方が安全かも。

 でも、グランも一緒に行くということはこの国の第一王子がいなくなるということ。

 そうすると政治的な問題も起きるんじゃないかな?

 国王陛下は難しい顔をして頷いた。


「………分かった……。フリージア嬢は公爵家令嬢だ。問題はないだろう」

「ありがとうございます‼︎」

「だが、きちんと説明しろ。どうやって二人は会った?アースドラゴンがなぜここにいる? 加えて、フリージア嬢が雷魔法の使い手だとは信じられん。一度、王宮魔法使いと手合わせをしてもらおう」

「え?」

「父上っ‼︎」

「さっきまでの会話を聞いている限り、フリージア嬢とは初対面ではないだろう?王子たるお前がどこで彼女に会ったかは重要だ。王宮を抜け出したということだからな」


 あちゃー。

 それ言われちゃあ仕方ないよねぇ〜。


「それに属性竜は国を滅ぼしかねん。そんな竜を従えてるとなったら……事情聴取するのは当たり前だろう。それに、手合わせはこの国にいる魔法使いの強さを把握するのには必要なことだ。文句は受け付けん」

「リジーを王宮魔法使いと戦わせるのか?」


 グランはジロリッ‼︎と国王陛下を睨みつけた。

 次の瞬間、陛下は「ひいっ⁉︎」と悲鳴をあげて顔面蒼白で震え始める。

 私は思わずグランの頭をチョップした。


「痛いっ‼︎」

「さり気なく威圧を発動すな」

「げ。何故バレたし」

「顔面蒼白だわ、あんたの父親が。私のために怒ってくれるのは嬉しいけど落ち着け。つーか、お前が王宮抜け出したからだかんな」

「ちぇっ」


 グランは拗ねたように抱きついてくるから、されるがままにしておく。

 まぁ、私のために睨んだもんね。

 それぐらいは許してしんぜよう。


「………フリージアも説明しなさい」


 お父様にそう言われちゃったら話さなきゃね。

 という訳で。

 私達は説明した。

 王宮(公爵家)を抜け出して、私がアースドラゴンに喧嘩売って勝って、グランに会ったということを超簡潔に。

 あ、ついでに私とグランを両親と慕うようになったことも言っといた。


「「「「……………」」」」


 それを聞いた両親ズは頭を抱えてしまう。

 あはは〜、悩ませてごめ〜ん‼︎


「……アースドラゴンには二人で勝ったのか?」

「いいえ、私だけですよ?」


 国王陛下の質問にサラッと答えたら、両親ズの顔が固まった。

 というか。


「多分、グランもそれぐらいできるよね?」

「うーん……できるんじゃないか?」

『パパもできるよ〜‼︎つよいも〜ん‼︎』


 アースの肯定で、もう両親ズは何も言わなくなった。

 うーん…このままじゃ話進まなそうだなぁ……。

 仕方ないから、私から聞いてあげることにした。


「えっとー。王宮魔法使いさんと戦えばいいですか?」

「俺も一緒に……」

「グランが参加したらオーバーキルだろーが。相手が死ぬよ」

「………否定できねぇ……」


 えぇ、私達はチートですからな。

 多分、国家兵器並みだぞ、今。

 それを聞いた陛下達は顔を引きつらせているけど、仕方ないよね。


「………取り敢えず。グランは今後、王宮を抜け出さないよ……」

「ソーデスネ」

「………まだ何か隠してるな?」


 国王陛下がジトっとした目で見るが、グランがニヤリと、大人顔負けの威圧ある笑みを浮かべる。


「父上も切り札は全て明かさないでしょう?俺もそうですよ」

「…………」

「まぁ、リジーに会いに抜け出すでしょうが……迷惑はかけませんからご安心を」


 私のこめかみにキスをするグランは、さっきと変わって色気ある笑みを浮かべる。

 こら、そんな笑みを見せるからお父様達が固まっちゃったじゃないか。

 でも、考えるの面倒になってきたわ。


「よっし。とっとと魔法使い倒しに行くぞー‼︎」

「おー」

『おー‼︎』


 思考放棄した私に、グランとアースが乗ってくれる。

 でも、思ったら王宮魔法使いって調査に行ってんじゃね?


「…………確か、残ってる王宮魔法使いで腕利きは……イザークか?」

「えぇ」

「なら王宮訓練場に急いで招集しよう……殺さないよな?」


 心配そうな顔の国王夫妻に、私は「殺しませんよ〜」と呆れ顔になってしまう。

 グランに私達の案内を託して応接室を出て行くと……お父様達は思いっきり息を吐いた。


「……リジー…お前は一体……」

「ごめんなさい、お父様。ご迷惑をおかけしまして。ちょっとグランと意気投合しちゃいまして」


 てへぺろ☆とちょっとあざとく笑ってみる。

 グランはそれを見て噴き出しながら、頷いた。


「まぁ、意気投合っちゃ意気投合だな。ほら、行くぞ」


 グランに手を引かれて歩き出す。

 部屋を出ようとした瞬間、「あ、一緒に来ますか?」とか今更ながらにお父様達に言ってた。

 お父様、もう顔が引きつってるのがデフォルトになってきてるよ。










 訓練場なるものにやって来た私達は、側にいる顔の険しい国王夫妻&魔法使いやら兵士やらと正方形の石の上に立つ男性を見た。

 浅葱色の髪と瞳の、臙脂色のローブを来た男性だ。


「初めまして、イザークと申します。そちらがかの雷魔法の使い手フリージア嬢ですかな?」

「フリージア・ドルッケンです。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」


 頭を下げると、イザークさんも頭を下げてきた。

 うん、挨拶は大事だよね。

 さて。

 私はアースをグランに預けて、前に進む。

 殺さないようにするには手加減しなくちゃね。

 殺そうとはしてないけど………できる気がしねぇ……どうしよう……。


『手加減 習得』


 異世界チートあざまーすっ‼︎


「…………両者、準備はいいな?」


 私達が頷くと、国王陛下が私に目で殺すなよ?と言ってる気がした。

 しつこい。

 そして、国王陛下が「始めっ‼︎」と叫んだのと同時にイザークさんが詠唱を始めた瞬間ー。


「《我がーー》」

「んっ‼︎」


『詠唱破棄 習得』


 脳内アナウンスさんと共に、イザークさんを取り囲むように雷の槍が無数に展開していた。

 うはー、壮観だね‼︎

 それを見たイザークさんは固まり、グランとアースを除いた人々も硬直していた。

 あははっ、チート凄ぇ‼︎


「ま、いり……ました……」


 イザークさんが降参するから、私も魔法を解除する。

 しんっ……とした空気の中、両親ズを見たら……もう悟り開いた顔してたよね。

 なんだろう……あんな顔の石像とかいそう。

 なんて馬鹿なことを考えていたら、グランが元気よく声をかけてきた。


「リジー‼︎俺とも模擬戦してみよーぜ‼︎」

「えぇ……グランと?」

「今の俺がどれくらいなのか、調べてみたいんだよ」

「………まぁ、いいけど」


 グランはアースを地面に置いて、呆然としていたイザークと入れ替わる(というか、無理やり退かせてた)。

 そして、シュンッ‼︎とその手に光の剣を出現させた。

 え、なんか無駄に格好いい。


「手加減できるかな……あ」

「覚えた?」

「覚えた」


 どうやらグランも手加減を覚えたらしい。


 ………思ったら、本気でやるのは初めてかも。

 向こうも同じなのか、目線で通じ合う。



 二人でほくそ笑んで……次の瞬間、合図もなく模擬戦は始まった。





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