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第46話 頑張った王子様にお休みを


スロー投稿で、ごめんねっ‼︎

今回はシリアスとギャグのカオス感が半端ねぇーぜ☆

ついでに、今回は補足話が必要な気がするので……後日、マリカ目線の話も投稿します。

それまで待っててねっ☆


誤字脱字教えてくださってありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします‼︎


 








「さて、真剣な話をしよう。今後、マリカ嬢はどうするかだ」




 …………ピリッとした真剣な空気。

 グランの言葉にマリカ様は凜と背筋を伸ばす。

 どうやら真面目な話みたいね。

 グランの声音から察するに……この話には政治的な要素もあるってことかしら?

 …………あり得そうね。

 合宿は、ディングス王国の学園で行われたものだけど、大陸全土を使ったから、各国の承認を得ているんだもの。

 合宿への介入者の報告ぐらいは、国王達にしなくちゃいけなさそうよね。

 こういうことはグランのお仕事だから、私は下手に口を出さない方がいいでしょう。

 私は我関せずと言わんばかりの顔で、無言で元々飲んでいた紅茶を口に含んだわ。


「驚いたわ。今後どうするかなんて……あたくしが選べる選択肢はただ〝帰る〟だけかと思っていたのだけど」

「まぁ、確かに帰るというのも選択肢だ。だが、セーゲルの告白もあるからな。それ次第ではこの大陸に残る可能性もあるだろう?あるいは、奴を連れて帰るとか……な」


 そういえば……マリカ様はセーゲルに告白されてたわね。

 あの後、あいつどうしたのかしら?

 グランに託して、すっかり存在を忘れてたわ。


「………そうだったわ……あたくし、告白されてたのよね……」


 マリカ様は少し複雑そうな顔で目を逸らす。

 まぁ……好きな人がいるのに、他の人から告白されたら戸惑うのも仕方ないのかしら?

 でも、マリカ様の好きな人……ディラン様にはロゼさんという方がいるから、セーゲルのことを考えてみるのもいいと思うけどね。


「…………聞かせて頂戴」

「……何をだ?」


 マリカ様は真剣な顔で居住まいを正す。

 グランもそれに答えるように真剣な顔になったわ。


「あたくしは《境界の魔女》。魔王と同等格の存在ですわ。もし、この大陸に残ることを選択したら……あたくしは受け入れられるのかしら?」


 ほんの少し、緊張を帯びた声。

 グランもそれに気づいたのか、不思議そうな顔をした。


「………確実に受け入れられる」

「その理由は?」

「まず、俺とリジーが魔王より上の力を持つ。暴走しようが力尽くで制御できるし、一人ぐらい魔王と同じレベルの者が増えたって変わらない。この大陸では魔王と人間は友好関係を築いているから、力があるからと差別されることもないだろう。それでも人間と暮らしづらいと言うなら、魔王領で暮らすこともできるはずだ」

「……………そう、なの。第Ⅰ大陸とは違うのね」


 マリカ様は本当に驚いたような顔で、目を見開く。

 第Ⅰ大陸は魔王(&眷属)と他の種族敵対は対立してるのでしょうね、この感じだと。


「……もし、セーゲルを連れて行くとなったら、どうなるのかしら」

「どうもならない。S級冒険者が1人いなくなるが、やはり俺とリジーがいるから大概は問題ないな」

「…………」


 黙り込むマリカ様。

 その顔は今後自分はどうするべきなのかを悩んでいるようで。

 なんとも言えない沈黙が流れ、私が紅茶を飲む音だけが響く。

 そして……数分後、マリカ様は少し困ったような溜息を零した。


「…………ふふっ…困ったものね。長年生きてきて、それなりに即決即断ができるようになったと思っていたのだけれど……この件は直ぐに決められそうにないわ」


 本当に、困ったような声。

 ……私は、マリカ様を見つめながら、首を傾げた。


「…………別に直ぐに決めなくてもいいんじゃないかしら?」

「…………え?」


 私の言葉に、マリカ様は驚いた顔をする。

 いや、私も驚いてるわ。

 一応、交渉事になるからグランに任せようと思ってたのに……勝手に口を出てたんだもの。

 思わず〝やってしまった〟とグランの方を見る。

 でも、彼はその目で〝話を続けて?〟と言っているようで。



 ……我関せずムーブを気取ってたのに、勝手に言っても怒らないって……グラン、甘やかしすぎじゃない?



「ほら、リジー。続けて」


 じーっと見つめて黙ってたからか、グランは苦笑しながら催促する。

 私はこくっと頷いて、マリカ様の方へ視線を戻した。


「……自分のこれからのことを決めるのよ。簡単に決められる訳ないわ。いくらでも悩んで、悩み抜いて、後悔がない選択をした方がいいと思うの」

「…………でも……」

「気にしなくていい。元々伝えようと思ってたが……直ぐに返事を求めている訳じゃないから、考えてから決めてくれて構わない。俺が話す前に、リジーが先に伝えてくれたけどな」


 そう苦笑するグランは私の手を撫でる。

 …………仕方ないじゃない、思わず言ってたんだもの。


「……そう……随分と優しい(・・・・・・)のね。この大陸の(・・・・・)人間(・・)は」

「「………………」」


 ぽつりと溢れた言葉。

 その声は酷く悲しげで……私は、彼女が何かを隠していることが分かってしまった。



 …………何かを押し殺して、人間()達に接してるのに、気づいてしまった。



「………どれくらいの猶予があるのかしら?」


 私達が気づいたこと(・・・・・・)に気づいたのか……マリカ様は無理やり話を変えるように質問する。

 グランは何か言いたそうな顔をして……でも、諦めたように息を吐いて、その質問に答えた。


「好きなだけ」

「え?」

「何日でも、何ヶ月でも、何年でも悩めばいいさ」

「…………だいぶ寛大なのね」


 もう何度目か分からない驚き顔。

 ちょっと重苦しい空気だけど、グランはそれを気にせずフッと笑う。

 あっ……グランが何しようとしているか、察し。


「ぶっちゃけ、数ヶ月ぐらいは悩んで欲しいぐらいなんだ」

「どうして?」

「理由は簡単」


 グランは笑う。

 だけど、私は分かっていたわ。

 無駄に一緒にいるから、分かってしまう。




 …………………こいつ、シリアスブレイクする気ね?




「ただでさえ合宿終わったばっかりだし……報告書作るの面倒くせぇし……ぶっちゃけ、マリカ嬢が何を選ぼうがどう動こうがどうでもいいし……報告は後で良いって国王達の言質は取ってあるから、問題ごと(報告)は後回しにしたい……リジーとのイチャつきが足りない……」



「「………………」」


 ぴーよぴよぴよ。

 どこかでヒヨコの鳴き声が聞こえる気がするわね。

 グランはぐでっと脱力しながら、私の肩に寄りかかる。

 …………マリカ様は、真顔になりながら……本当に遠い目をしたわ。


「………………うん。2人があたくしが知ってる人間とはかなり違うってのが、よく分かったわ」


 その言葉に私はムスッとなり、反論する。


「今の言葉で何が分かったのかが少し謎だけど……私まで一緒にしないで欲しいわ‼︎違うのはグランだけよ‼︎私だって、流石にこんな重苦しい雰囲気放ってる人……本人の前でシリアスブレイクはしないもの‼︎」

「一緒にしないで……とか酷くない⁉︎お前も案外、本人前でシリアスブレイクしてると思うけどね⁉︎」

今回は(・・・)黙ってたわ‼︎」

今回は(・・・)じゃねーか‼︎俺だってこの人が無駄に〝過去に人間と何かありました〟ムーブ気取ってなけりゃこんなこと言わねぇーわ‼︎流石にマリカ嬢が空から降ってきた時にかなりシリアスしたのに、またシリアスとか面倒くさいじゃねーか‼︎」


 ギャーギャーと言い合いをする私達に、目の前のマリカ様がバンッと強くテーブルを叩きつける。

 そして、ピクピクと頬を引きつらせながら告げた。


「ね、ねぇ……普通はあたくしが翳を帯びた雰囲気出してても、口に出さないものじゃないのかしら?なんで、本人を前にぶっちゃけたのかしら?」

「あんたのことなんか気にしてやる義理がないからだけど?」

「貴方、あたくしの扱いが一気に雑になってないかしらっっっ⁉︎」

「残念。俺はリジー以外の扱いは基本的に酷いんだよ」

「…………えぇぇ……?」


 マリカ様はそれを聞いて複雑そうな顔になって、脱力する。

 ………はぁ……いつもはグランが締めるのに、今日は私がどうにかするじゃない。

 私はこのままじゃ終わるものも終わらないと思ってパンパンッと手を叩いたわ。


「はいはい、このままいくと話が終わらないからまとめるわよ〜。締め方が雑とかいう文句は受け付けないから〜」

「ざーつー」

「文句は受け付けないって言ったでしょ、グラン‼︎というか、貴方、すっごく疲れてるわね⁉︎だから、今日、私より先にシリアスブレイクするなんてことしたのねっ⁉︎」

「あははは〜……はぁ……疲れた。帰ろっと」

「急にマジトーンになるの止めなさい」

「無理。ひとまず、諸々の後始末はエドに託した。マリカ嬢は一週間ぐらいは王宮で暮らせるようにしてある。人間と一緒にいたくないなら、魔王のところへ。詳しい話とかは後日にしてくれ。もう無理だ、疲れた。今日はこれ以上、できない。無理」


 …………あ……これ……。

 私はグランの頭を抱き撫でながら、困った気分になってしまう。

 そして、マリカ様に頭を下げたわ。


「ごめんなさい。今日はここまでにしましょう。本当に疲れてるみたいだから」

「えっと……ごめんなさいね」


 マリカ様は彼の疲れてる原因が自分であることが分かっているからか謝ってくる。

 私はふるふると首を横に振った。


「大丈夫よ。マリカ様は王宮に行く?それとも魔王領?」

「…………魔王領にする、わ」

「なら、転移させるわ。また後日、会いましょう」

「え?転移?」

「またね、マリカ様」

「待っーーー」


 問答無用でマリカ様を魔王屋敷の入り口に転移させ、私もグランを抱いたまま彼の部屋……ベッドの上へと転移する。

 そして……苦笑したわ。


「お疲れ様、グラン。お休みなさい」

「…………うん、お疲れ……おやすみ」


 ほんの一瞬で眠るグラン。

 私は倒れる前に気づけたことに、ホッと息を零した。




 ………グランはいつも頑張っている。

 王太子としての政務に、学園生活、それに私のこと。



 グランは頑張って頑張って、頑張りすぎて……唐突に倒れる。



 最初に倒れたのはいつだったかしら?

 数年に一度単位だし、滅多に倒れることはない。

 最初以降は実際に倒れる前に私が気づいて強制的にベッドに連行している。

 チートで身体機能特化であるグランは、肉体的な疲労ではなくて、精神的な疲労で倒れるんだと思うわ。

 グランの精神を健康に保つために、強制的に意識を落として動けなくするんだと推測している。

 俗っぽく言ってしまえば、〝現実逃避〟?

 寝ている間は問題ごとを考えなくて済むから、休息になるんだと思うわ。




 今回もグランはとても動いてた。

 私も多少は手伝ったけど、各国との打ち合わせやら調整やら、国王達への報告やら難しいことは全部グランが担当して、準備して。

 合宿期間中も監視とか頑張って……マリカ様が降ってきたらその対処して、またその後始末……。

 身体は元気でも、精神が疲れない訳ないわよね。

 仕事ができるからって、無理しすぎなのよ。

 まぁ……私が面倒くさいってグランに仕事を丸投げするのが悪いんだけどね。

 でも、私だって……。



「貴方は私が昔『面倒なことはやりたくない』って言ったから、そのまま私を甘やかしてくれているんだろうけど……私にだって貴方の手伝いくらいできるのよ?」



 彼の記憶をほんの少し分けてもらって、私は起き上がる。





 グランが起きるまでには、合宿の後始末を終えておきましょうか。









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