第43話 難しい話はグランに全部投げます(笑)
おーいえす、スローペース。
遅くてごめんね、でもよろしくね。
むむっ、あと少しで50話……いや、今回で50部ではあるんですけどね?
特別話を用意するべきか……リクエストを受け付けるべきか……。
まぁ、その時にならぬと分かりませんぬ‼︎(`・∀・´)
前回のあらすじ〜。
フェロモン姉さんが空からフォーリン♪
クールぶってたセーゲルが(性的な)オオカミさんになっちゃったわ☆
「リジー、なんかちょっと変なあらすじ考えてんだろ」
学園の応接室のソファに座って、事情聴取用の書類をまとめていたグランがジト目で見つめてくる。
私は頬に手を添えて、笑顔で答えた。
「うふふっ、気・の・所・為・よ・♡」
「嘘つけ。完全にお疲れモードじゃねぇか」
まぁ、えぇ。
疲れてんのかと言われたら疲れてるわ。
あのフェロモン姉さんを連れて学園に戻って。
グラン達は事情聴取のために応接室に来たけど、私は生徒達の診察を保険医の先生と一緒にしてたの。
弱い人にはフェロモン姉さんの固有能力の影響はないらしいけど、一応、全員診てみないとね。
具合悪い人とかいるかもしれないし。
取り敢えず、生徒達は全員大丈夫だって分かって、そこから直ぐにここに直行して……。
一応寝ていたけれど、分身の魔法を約一週間維持し続けた後のこれは流石の私も(精神的に)疲れるのよね。
私の疲労具合に気づいたのか、グランは少し苦笑しながら手招きをしたわ。
「おいで、リジー」
「……………」
グランは甘やかすような優しい声で私を呼ぶ。
まぁ、うん。
甘やかしてくれるなら素直に甘えるとしましょう。
私は彼の膝の上にちょこんと座る。
すると、グランは私の頭を撫でながら優しく額にキスを落とした。
「ごめんな、色々やらせて。ありがとう、お疲れ」
「貴方も色々やってたでしょ。グランもお疲れ様」
「あぁ」
二人で笑いあって、彼の肩に頭を預ける。
こんな落ち着いた触れ合いで癒されるってことは、結構グラン不足だったってことかしら?
案外、私もイチャイチャ好きだったのね。
「………部屋に来るなり、あたくしの目の前でイチャつくとか良い度胸してるわねぇ……」
ピリピリッとした殺気に私は剣呑な光を宿した瞳を、目の前のソファに座る魔女に向ける。
グランの方に至っては同じような殺気を返しながら、ゴキッと手を鳴らしたわ。
「そちらこそ、いきなりを殺気を向けて来るなんて良い度胸をしているな。俺のリジーに喧嘩を売ってるなら……潰すぞ」
ぞくりっ……‼︎
「っっっ……⁉︎」
私に向けられた訳じゃないのに、背筋がゾッとするような殺意。
彼女はまさか人間であるグランから空間が軋むほどの威圧を放たれるとは思ってなかったのか……ガタガタと震え始める。
………フェロモン姉さん、それなりに強い方だと思っていたけど……私達ほどじゃないみたいね?
「な……なんっ………」
「こちらに怒気を向ける理由はなんだ」
有無を言わさぬグランにフェロモン姉さんは押し黙る。
そして………。
フェロモン姉さんはガバッと顔を両手で覆って叫んだ。
「好きな人と違う女の子がイチャイチャしてるのを見せつけられた後に、他人さえもイチャついてるところを見せられたら怒りたくもなるに決まってるでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ⁉︎」
「「………oh……」」
思わず発音が良くなったのは仕方ないと思うわ。
フェロモン姉さんはグスグスと涙を零しながら、話を続ける。
「あの人が眠りについて千年ほど……いつかあの人が目覚めたら告白しようと思ってたのよ?なのに、いつの間にか知らない女の子と親しくなってるし。あたくしに見せたことないような甘くて柔らかい笑顔を向けてるし」
「「………………」」
「別に、別に……その女の子のことは嫌いじゃないわ。良い子だって分かってるもの。《境界の魔女姫》として恐れられていたあたくしに隔たりなく接する子だもの。でも、あたくしの好きだった人に愛されるあの子が羨ましくて。悔しくて、妬ましくて。あたくしだって、想いを伝えたかった。でも、あたくしは素直になれなくて悪戯みたいなことしかできなくて。彼の気を引きたくて……なのにどうして殺し合いしかできないの?素直に、想いを伝えて……この気持ちに区切りをつけなきゃって思ってるのに、どうしてあたくしはっ……‼︎」
私とグランは互いに顔を見合わせて、フェロモン姉さんに視線を向ける。
ちょっと千年とか殺し合いとか話の所々に気になるところがあったけど……目の前にいるこの人は、その恋心に終わりを迎えられてない、可哀想な人だった。
…………確かに、そんなのを見た後に他人のイチャつきまで見せられたら苛立つわよね。
「えっと……フェロモーーー」
「リジー、マリカ嬢だ」
フェロモン姉さんと呼びそうになったところをグランにフォローされる。
危ない……流石に空気読まなさすぎだったわ、あの呼び名は。
私はこほんっとワザとらしく咳をして、マリカ様の方を向いた。
「マリカ様。私の名前はフリージア・ドルッケン。フリージアと呼んで頂戴」
「ぐすっ……《境界の魔女姫》と基本呼ばれているけれど、分かりやすい名前はマリカよ」
「はい、マリカ様。ぶっちゃけ、私とグランはこのイチャつきがデフォルトだから……マリカ様がそのように怒鳴られても、変えることはできないと思うわ」
「…………えぇ……ごめんなさい、八つ当たりしたわ」
マリカ様は胸の谷間に手を突っ込むとちり紙を取り出し鼻をかむ。
………え……?
貴女のお胸は四次元なんですか?
「リジーさん、リジーさん」
「はっ‼︎」
グランに耳元に声をかけられて、私は我に返る。
危ない、溢れんばかりのお胸に注視しちゃってたわ。
なんの話をしていたのだっけ……あ、そうだったわ。
「えっと……まぁ、とにかく。マリカ様がまだその恋心を終えられていないというのは分かったわ。その気持ちは貴女自身が区切りをつけなきゃいけないから、私達にはどうすることもできない。だけど……話を聞くぐらいならできるわ」
「…………フリージア……?」
「話すことで楽になることもあると言うでしょう?だから、ね?」
マリカ様はポロリっと涙を零す。
そして、その見た目に似合わない子供みたいな大きな声で泣き出した。
私は彼の膝から降りて、マリカ様の隣に座って背中をさする。
グランはそんな私達を見て苦笑しながら呟いた。
「…………うーん……この大陸に来た話からなんか恋愛話にシフトチェンジしてるが……まぁ、いいか。うん。事情聴取は終わってるし、報告は俺がすればいいだけだし」
あぁ、そういえば……マリカ様が空から落ちてきた(飛んできた?)から事情聴取してたのよね。
一応、合宿は国の許可もらってるけど……何かあったら報告しなきゃいけないし。
……………うん、そういう面倒くさい話は全部任せたわ。
戦闘面では役に立てるけど、政治的な問題とか大人との腹の探り合い系はグランの十八番だもの。
グランみたいな仕事ができる男(腹黒とも言う)が婚約者で、果報者ね。




