第42話 《運命的な出会い(中略)押し付けてしまおう作戦》(4)
ヤンデレ臭がする……苦手な人は逃げなされ……。
これは昨日の話が長すぎて2分割された後半です。
たまったま2日連続投稿になっただけですので、スロースロー投稿ペースは変わりませんぬ。
よろしくね☆
私とグランがこの場に到着するなり、シリアス?何それ美味しいの?って感じになって数十秒後ーーー。
「取り敢えず、解散でいいかしら?」
「いや、駄目だって」
ペシッとグランに頭を優しく叩かれて、ツッコミを入れられたわ。
いや、だって解散してもいいと思わない?
なんか、あやつらイチャついてるわよ?
追いかけっこと言う名のイチャつきよ?
アレ、海辺とかだったら余計に馬鹿が付く感じのカップルに見える感じよ?
(※リジーさんは、シリアスムードから一気にゆるゆるムードになったため、ノリも緩くなっております。)
グランは私の本音を見透かしたようにジトッとした目でで見てから、大きな溜息を吐く。
そして、スタスタとお兄様達の方へ歩いて行ったわ。
「取り敢えず……無事だったか?」
「こっちは問題ないよ」
エドガーお兄様はニコニコと笑いながら、クレマチス様の腰を抱く。
……………あら?
私の視線に気づいたのか、クレマチス様は困ったように笑ったわ。
「婚約することになりましたわ」
「まぁ‼︎おめでとうございます。お兄様、クレマチス様‼︎」
「あぁ、やっと?おめでとう、2人とも」
「ありがとう。リジー、グランヒルト様」
エドガーお兄様は嬉しそうに笑う。
なんとなく、お2人はそんな感じがしてたけれど……どうして今まで婚約してなかったのかしら?
そっちの方が謎だわ。
「先にとっとと婚約して外堀埋めればよかったのに……惚れてもらってからとか、気長だなぁ」
「あ、そういうことなのね?」
私の言葉にグランは驚いた顔をする。
「リジーは知らなかったのか?てっきりエドガーから聞いているかと……」
「聞いてないわよ。お兄様の恋愛話って一切聞かなかったから……どうしてかしら?って思ってたぐらいだわ」
「あははっ。リジーって結構顔に出るからね。ちょっとでも僕の恋愛の話が出て、クレマチス嬢に逃げられたら困るからね。徹底的に情報規制をしたよね」
………………ん?
「俺が協力しました☆」
グランはピースサインをするけれど、何かしら……。
なんか、お兄様から……グランに似た黒さが滲み出て………。
「取り敢えず、クレマチス嬢に惚れられなかった時のために用意しておいた媚薬はどうする?」
グランさん?
「あぁ……後で使うかもなんで、取っといてくれるかい?」
お兄様っ⁉︎
「というか、リジーと使うという手もあるよ?」
「あー……それは無理かも。俺もリジーも状態異常の耐性がある……いや、無効化するだろうから」
「なるほど。それはどうしようもないね」
…………………アレについて直接言葉にしてないけれど……正体になんとなく予想がついて、思わず真顔になったわ。
なんとなく、だけど。
……………お兄様、最終手段として既成事実を作るつもりだったわね⁉︎
というか、グランもお兄様も腹黒っっっ‼︎
いつの間にこんな似た2人にっっっ………⁉︎
「ク、クレマチス様……」
「大丈夫ですわ、フリージア様。エドガー様が腹黒なのはとっくのとうに知ってますもの。なんとなく、殿下が入学してからは〝あ、エドガー様は殿下に似たっぽい……〟とかなんとなく悟っておりましたし……。なんでこんな男、好きになったのかしら……」
フッと諦めたような顔のクレマチス様。
あぁ……うん。
なんか、ごめんなさいね。
なんとなく手綱を締めきれなかった私の責任のような気がしてきたわ。
「まぁ、その話はおいおいするとして……スイレンさんも大丈夫だったか?」
グランは私からのジト目を避けるように話を変える。
急に話を振られたスイレンさんは、どっかから取り出して飲んでいたらしいお茶に噎せたわ。
「ゴホッ⁉︎きゅ、急に話を振られたから驚いた……あぁ、うん。もう着いた時点でアレだったからな。一応、警戒して結界を張っていただけだ」
「え?領域干渉内では魔法の使用に制限があるんじゃ……」
「え?」
グランとスイレンさんは互いに顔を見合わせて黙り込む。
そして、ゆっくりと私の方を見たわ。
「はいはい、解析魔法ね」
ぶっちゃけ、固有能力まで解析できるか謎なんだけど…………あ、できたわ。
「領域干渉型固有能力・《境界》。固有能力所有者を基準として、所有者と同等かそれ以上の者の行動を強く制限させる力がある。それ以外の者は弱めの制限……ってことらしいわ」
つまり、スイレンさんが動けたのは……。
「………………………」
スイレンさんは真顔になって、どこか遠くを見つめる。
私達は慌ててスイレンさんを励ましたわ。
「えっと……あの、一応俺らを除いたらスイレンさんも最強格の一人だから‼︎だから、そんな凹むなって‼︎」
「そ、そうよ‼︎スイレンさんはちゃんと強いわ‼︎だから、そんなに落ち込まないで‼︎」
「………………ふふっ。でも、お主らといると自信がなくなるんだよなぁ……」
「「…………………………」」
あぁ……それは、ごめんなさいだわ………。
「………………取り敢えず。セーゲルがあの女の人押し倒し始めたから、止めるか」
グランに言われてそちらを向けば、フェロモン系美女が顔を真っ赤にしてセーゲルに押し倒されていて。
あらあら、このまま始まっちゃいそう(何がとは敢えて言わない)な雰囲気だわ。
私はハリセンを持ってスパコーンッッ‼︎とセーゲルの頭を強打した。
「この作品はR-18ではないわよ‼︎」
「グフッ⁉︎」
別に実の兄の新たな一面を知って疲れたからって八つ当たりをした訳じゃないわ、決して。
セーゲルの身体がフライアウェイして、ばたりと地面に倒れ込む。
あっちはグランに任せるとして……私はこっちの女性ね。
「大丈夫だったかしら?」
「うぅ……助かったわぁ……」
彼女は差し出した私の手を取って、顔を真っ赤にしたまま起き上がる。
薄水色の長い髪に、翡翠の瞳。
溢れんばかりの豊満な胸元が丸見えな扇情的な水色の濃淡ドレスと、とんがった帽子。
いかにも、魔女って感じの服装ね。
彼女はゆっくりと頭を下げた。
「助けてくれてありがとう。あんなに押しが強い男は初めてで動揺しちゃったわ」
そう言った彼女はポワポワとした頬を覆うように両手で押さえる。
フェロモン系な見た目に反して、初心な反応なのね。
「まぁ……私達もアイツには、クールなイメージしかなかったから、ちょっと驚いてるわね」
「あら?そうなの?」
だって、本当に一匹オオカミ風(孤高的な)だったもの。
だから、この女性を追っかけてるのを見て、結構驚いたぐらいなのよねぇ。
一瞬、オオカミ違いじゃない‼︎ってツッコミ入れたくなった程度には。
「取り敢えず、詳しい話は場所を移してでいいかしら?貴女のお陰で、大騒ぎになったのよね」
「あら……まぁ、確かにいきなり空から降ってきたら騒ぎになるかしら?流石に申し訳ないことをしたわね。素直に従いましょう」
彼女はにっこりと笑う。
どうなら大人しく私について来てくれるみたい。
取り敢えず、空から飛来した彼女に事情聴取しなくちゃいけないから……合宿はここまでかしらね。
そういえば……何かを忘れているような………。
「これ、我々、完全に空気だよな……」
「ですねー」
「…………そうですね……」
そう呟くのは、完全な空気になっていたマルーシャ様、ノーチス様、聖女リリィの3人で。
あ、《運命的な出会い(中略)押し付けてしまおう作戦》…………。




