第39話 《運命的な出会い(中略)押し付けてしまおう作戦》(1)
スローペースでごめんね‼︎
一度体調が崩れると無駄に長引くタイプなので、かなりゆっくり更新になっております。ご了承ください。
いつも誤字・脱字を教えてくださってありがとうございます‼︎
今後ともよろしくね‼︎
ひたすらマッキーが生徒達に恐れられて、逃げられて、攻撃されてって感じの似たような日ばっかりだったから途中は端折って。
早くも最終日。
電子スクリーンに映る生徒達の顔は、歴戦の勇者と言わんばかりに雄々しい顔立ちになっていたわ。
思わず真顔になってしまうのも、仕方ないことだと思うの。
「なんなのかしら……無駄に画力が濃い感じの顔立ちは………」
イメージ的に言うなら、世紀末的(分かる人には分かる)な濃い顔立ちね。
グランは肩を震わせながら(本当は大爆笑したいみたい)……でも、爽やかな笑顔を浮かべて答える。
「ほら、頑張ったってことじゃないか?一皮剥けた的な?」
「………………………いや、一皮剥けたら顔が変わるとかないからな……?」
……………スイレンさんがグランにツッコミ入れて、凄い目で見てるけど……ちょっとこの際スルーで。
私は話を変えるようにパチンッと手を叩いたわ。
「とにかく、追い込むために始めた合宿だもの。これぐらい想定内(?)ってことで……《運命的な出会いを人工的に演出して、ヒロインをスイレンさんに押し付けてしまおう作戦》の最終段階を開始するわよ」
マッキーの恐れられようが面白過ぎて忘れかけてたけど、本来はこの作戦を決行するために去年より戦闘合宿を厳しくしたんだもの。
ちゃんと成功させなくちゃね?
作戦内容は簡単。
この合宿で疲労困憊(温室育ちの貴族子息令嬢達が、一週間近く野宿するなんて疲れないはずがないわよね)のところに、《第Ⅲの魔王》サンドラさんが聖女リリィに襲いかかる(※お兄様達も巻き込まれるけど、今回は仕方ないわよね)。
絶体絶命のところを《第Ⅱの魔王》スイレンさんが颯爽と助け出し……リリィがスイレンさんに一目惚れ♡
そして二人はカップルに……。
まさに《運命的な出会いを人工的に演出して、ヒロインをスイレンさんに押し付けてしまおう作戦》という作戦名の通りね。
「現時点で何か問題とか質問はあるかしら?」
私に聞かれて、スイレンさんはちょっと険しい顔をする。
さっきから何か言いたげにしてたから聞いてみたんだけど……彼は複雑そうな顔で答えたわ。
「…………というか……こちらとしては初恋の子と結ばれるのは嬉しいのだが……他の人の手を借りて……本当に彼女は惚れてくれるのか?」
…………………すっごい今更感があるけど……そんなことを気にしていたのね。
スイレンさんは人工的に演出ってところに、少し思うところがあるみたい。
まぁ、他人の手で仕組まれるのは嫌か………。
「なぁ、スイレンさん」
「な、なんだ?」
私の代わりに話しかけたグランの真剣な雰囲気に気圧されたのか、スイレンさんはゴクッと喉を鳴らす。
そして………彼は告げた。
「聖女が早めに特定の相手を持ってくれないと、政治的な問題が発生して……最悪、あいつは国外追放とかされる可能性があるんだぞ?」
「………………………………え〝?」
あ、スイレンさんの顔が引き攣ったまま固まったわ。
グランは酷く面倒そうに溜息を零した。
「だって考えてもみてくれよ。アイツ、俺に惚れたと思えば簡単にリジーに惚れたんだぞ?つまり、聖女は惚れっぽいってことだ。ってことは、コロコロ好きな人を変えるってことだろ?」
「…………………」
「聖女が好きになって、好きになられた方が本気になって。でも、次の時には聖女は違う人を好きになってる……そんなのが続いたら、泥沼化すると思わないか?」
「…………………………………」
「身分が高い奴までそれに巻き込まれたら……恋で暴走した奴らが一体何をするやら。自分の婚約者との婚約破棄はまだマシだろうが……聖女に貢ぐようになって、それを他の男と競い合って、横領したり、仕事を疎かにしたり……あぁ、色々と危険そうだ。そうなったら国を乱したとして、聖女は元凶として処分されるかもしれなーーーー」
「よし、速やかに作戦を決行しよう」
スイレンさんは即答する。
……………うん、まぁ……ね?
全て可能性の話なんだけどね?
信じやす過ぎじゃないかしら?
私はコソッと彼の耳元に囁く。
(ねぇ、グラン?全部、可能性の話なのに……そんなこと言っていいの?)
(大丈夫、大丈夫。ヒロインが逆ざまぁとかよくある展開だろ?それに、もし本当にそうなったら迷惑被るのはこっちなんだ。ここで確実にスイレンさんにあの聖女を押し付けた方が得策なんだよ。いやぁ、スイレンさんが単純で助かったわ)
………………グランさん、グランさん。
貴方、ニヤリと笑った笑顔がスイレンさんよりも魔王らしいんだけど。
とっても黒いのだけど。
「よし。んじゃあ、作戦を決行する。サンドラさん、準備はいいか?」
『うむ、構わぬよ』
グランはサラッと話を話を変えて、念話でサンドラさんに声をかける。
私はジト目でグランを睨みつつも……最終確認に移行したわ。
「予定通り、聖女がいるパーティーNo.001は魔王領にいるわ」
『うむ、こちらも確認した。かなり疲弊しているようだな』
サンドラさんの言う通り、リリィ達は一番敵が弱いディングス王国から徐々に敵のレベルがアップするような順番で回らせたの。
まぁ、先に強い敵に当たって最後の方が弱い敵だと気が抜けちゃうと思ったからね。
だから、今、リリィ達がいるのは魔王領の森の中で……いつ敵に襲われるかピリピリしてると思うわ。
魔力が溜まっているおかげで、多少地形が変わっても直ぐに戻るから……サンドラさんには本気を出してもらえる。
近いからスイレンさんも直ぐに駆けつけられる。
まさに一石二鳥の舞台ね。
私はリズベットさん達にも念話を送る。
「リズベットさん達は予定通り、他の生徒達に注意してくれる?」
『りょーかいだよ〜』
パーティーNo.001を強襲するのは、魔王の1人。
違う大陸ゆえに本領を発揮することはできないらしいけど……細心の注意を払わなきゃいけないもの。
だから、ちゃんと見ていても、他のパーティーの監視が疎かになってしまう可能性がある。
リズベットさん達はそんな〝もしも〟を考慮して、他の生徒達に注意を払ってくれると名乗り出てくれたわ。
でも、本当はちゃんとリアルタイムで見たいんじゃないかって思っちゃうの。
だって、この作戦を考えた時にすっごく乗り気だったし……だから、まさに裏方に回ると言われるとは思ってもなかったの。
私は少しばつが悪い気持ちになりながら質問する。
「リズベットさん、ハルトさん。本当に良いの?リアルタイムで見なくて……」
リズベットさんはそう聞いたのに驚いたのか、少し黙り込む。
そして、優しい笑い声を漏らしながら……私の質問に答えた。
『うふふっ、フリージアちゃんは優しいなぁ。でも、大丈夫だよ?私達は大人なので、録画で十分なのです』
『俺はリズが良ければなんでも良いよ』
『だから、気にしないで。大人に甘えなさい?』
「……………………分かったわ」
そこまで言われて、無下にすることはできないもの。
私は息を吸って、電子スクリーンに映った聖女リリィを見る。
そして、作戦開始を告げーーーーーー。
チュドォォォォォォォォォォォォォオオォォォォォンンンッッッ‼︎
「「「なんか降ってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」」」
る前に、リリィ達の所に〝何か〟が降ってきてそれどころじゃなくなったわ。




