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第37話 牧原一家隊、参戦‼︎


懐かしの奴らが参戦だよ。

ギャグだよ、自分でもなんでこうなった思ったよ。

後悔はしてないよ。


お酒は20歳になってから‼︎


よろしくねっ☆


 







 皆さん、お久しぶりです。

 牧原数人、31歳です。


 異世界転移して早15年ほど。


 なんだかんだと妻達と幸せな生活を送っております今日この頃ーーーー。



 またいつものノリで、グラン君とリジーちゃんに拉致られました。






「いや、なんでやねん……」


 オレは思わず両手両膝を地面について項垂れる。

 オレの周りには、見渡す限りの木、木、木。

 一言で言えば、森。

 そして、今のオレ……寝起きスタイルのパジャマ。


「………………せめて……一言連絡とか……一回会ってから転移させて欲しかった……」


 オレが項垂れるのも仕方ないと思いませんか?

 昨日、いきなりオレの手元に広告が現れて、その裏に『明日、拉致するからよろしく‼︎協力してね‼︎』と書かれていて。

 名前書いてなかったけど、絶対グラン君達じゃん。と思ったら、まさかグラン君達に会わずにいきなり転移。

 ベッドで寝て、目が覚めたら森。

 流石のオレも一言ぐらい説明が欲しかったよ。

 そうやって項垂れていると……上空に魔力反応を感じた。

 思わず視線を上げると……そこには……。



 電子スクリーンに映る執事服姿のグラン君とメイド服姿のリジーちゃん(お膝抱っこスタイル)がいました。



 なんでっっっ⁉︎コスプレっ⁉︎


『皆さんお待ちかね‼︎ガルディア魔法学園戦闘合宿二日目の〜ゲリラ中継コーナーのお時間よ‼︎』

『担当は昨日に引き続き、冒険者パーティー《リインカーネイション》改め、王太子グランヒルトとその婚約者フリージアが担当するぞ』


 ………………え?TV放送ですか?



『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ⁉︎』



「うおっ⁉︎なんだっっっ⁉︎」


 遠くの森から響く驚愕の声にオレは思わずギョッとする。

 え?何?野太い声が凄いんだけど?


『あははははっ‼︎冒険者達の驚く声が聞こえるわ‼︎楽しい‼︎』


 画面に映るリジーちゃんはその綺麗な顔で大笑いする。

 グラン君は呆れたように溜息を吐いて、彼女の頭を撫でた。


『はいはい、徹夜でハイになってるリジーはちょっと落ち着け』

『はいは〜い。じゃあ、説明よろしくね?』


 リジーちゃんは彼の頬にキスをして、視線を横に向けて真剣な顔になる。

 それを見たグラン君も真剣な顔になった。


『さて……冒険者諸君に正体を隠していたことは悪かったと思うが、まぁ王太子が冒険者なんぞしてるのバレたら、色々と面倒だったので秘密にさせてもらってた。今ここでそれを明かしたのは、単に正体誤魔化すのが面倒になったからだ』


 …………。

 ………………………。

 ………………えぇぇぇぇ……。

 普通、そうやって正体明かすのって何かしらの重要な理由とかがあるんじゃないの?

 そんな誤魔化すのが面倒になったからとかでいいの?


『言っとくが、俺は王太子ってだけで至って普通だから……面倒臭がりだからな?ぶっちゃけ、王太子の座もアズに譲りたい……いい加減、暗殺者を始末するのも面倒くさ……』

『王家の闇を暴露るのは止めなさいよ。愚痴は後でいくらでも聞いてあげるから』


 ペシッとグラン君の顔を超テキトーに叩くリジーちゃん。

 うわぁ、グラン君にそんなことできるの君だけだと思うよ。


『まぁ、話を戻しまして。本日の参戦メンバーは、隣の大陸の勇者……槇原一家隊だ』

「我が家かよ‼︎」

『ちなみに、この槇原数人という男。隣の大陸のみならずこの大陸の女性までも妻にして……(《第Ⅲの魔王》含む)、現在の奥様数18名(増えました)。子供の数は52名。アンチハーレム派の俺はちょっと苦手な人だ』

「えっ⁉︎そんなの知らなかったんだけど⁉︎マッキーとか親しそうなあだ名つけといて、グラン君は苦手意識持ってたの⁉︎」

『え?逆に苦手意識持ってないと思ってたの?』

「そういや最初っから扱い酷かったですね‼︎つーか、会話できるのかよ‼︎」

『当たり前だろ。お前の声もゲリラ中継中だぞ』

「当たり前じゃないからなっっっ⁉︎」


 あぁ……この我が道を往くゴーイング・マイウェイ感はグラン君だな……。



 超・つ・か・れ・る☆



『まぁ、そんなこんなで。奥さん達には詳しい話通してあるけど、マッキーには何も言わずに拉致……ごほんっ、来てもらいました』

「ねぇ、今拉致って言いましたよね」

『勇者一家隊は敵になったり、味方になったりと……各々の自己判断で行動してもらうことになっている。要するに時間限定のレイドモンスター……または助っ人キャラ扱いだ』

「オレのツッコミは無視ですか」

『詳しくはこちらをご覧ください』

「説明投げたよ‼︎」


 グラン君が画面に表示したのは、マキハラ一家隊の取扱説明書……まさかの取説かよ。





 ☆☆☆




 マキハラ一家隊の取扱説明書



 マキハラ一家隊に遭遇すると、戦闘になったり、30分間の時間制限付きの助け人(スケット)になってくれたりします。

 遭遇者の気分次第なので、一回目に会った時には戦闘、二回目に会った時は味方になったりします。


 当たるも八卦当たらぬも八卦。



 なお、それぞれの系統が分かりやすいようにスカーフをつけているので、パーティー役割ロールの参考にしてください。



 勇者(万能型攻撃寄り)……白。

 《第Ⅲの魔王》(万能型魔法寄り)……黒。

 盾役タンク……茶。

 攻撃アタッカー……赤。

 魔法ウィザード……青。

 支援スカウト……緑。

 回復ヒーラー……黄。






 追記。

 マキハラ一家には完全なるご好意で協力頂いております。



 このマキハラ一家の個人の意思に基づく行動に文句がある奴は、王太子グランヒルトと、その婚約者フリージアまでお申し付けください。





 ☆☆☆





 これ、逆らえないヤツやん。


 誰も文句言えないヤツやん。



 王太子とその婚約者……公爵令嬢に文句言えって、言える奴いないだろ。


『さて……じゃあ、ここいらで冒険者モードに』


 ………え?これ以上、何やらかす気なんだ?

 グラン君はニヤリと笑うと、大きな声で宣言した。



『冒険者ども、聞け‼︎今回、このクエストでMVPに輝いた奴には、魔王陛下が直々に造る超高級品の清酒……《魔月下 水龍の滝》を一本くれてやる‼︎喜べ、魔王陛下のご好意だぞ‼︎ちなみに、Sランク冒険者のセーゲルはもう馬鹿やらかしてMVPにならないことが決まってるから、他の奴らの確率上がってるからな‼︎』



 …………………え?酒?

 そんなんでテンション上がるか?



『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお‼︎酒ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ‼︎』



 だが、オレの予想に反してビリビリビリと空間が震えるかのような歓声が鳴り響く。

 さっきの驚きの声より大きいってどういうことだよ‼︎

 というか、酒でそこまで気合い入れるのかよ、冒険者って⁉︎


『酒が飲みたきゃ働けっ‼︎だけど、ちゃんとクエスト内容守れ‼︎クエスト内容を逸脱して、やりすぎて生徒達の合宿の邪魔しやがったら潰すからな‼︎』

『じゃあ、今回のゲリラ中継を終えるわ。またね〜』


 最後に不吉なことを言い残して電子スクリーンが消える。

 ……………あぁ……相変わらずアイツら、嵐みたいだな……。

 そう思った瞬間、オレの顔にベタッと何かが張り付く。


「うぉっ⁉︎」


 オレは慌てて顔を触るが、それはなんだか地味に硬いモノで。

 何事かと思ったら……オレの手元に一枚の紙が転移させられてきた。



『呪いの仮面。一度ついたら解呪するまで取れない。付けた理由、ガルディア魔法学園には貴族令嬢が多いため、お前のハーレムメンバー……ハレメン入りしたら政治的な問題になり、面倒なため。終わったら外してやる』




「だからせめて、一言ぐらい言ってからやってくんないっすかねぇっ⁉︎」





 オレの叫びは森の中に響き渡った。







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