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第25話 唐突に始まる‼︎魔王の甥っ子お助け隊‼︎


やっぱり、ノリと勢いで生きてますw

そして、珍しく昨日も入れて四日連続更新するよw


よろしくね‼︎

 







 一週間後に戦闘合宿を控えた今日この頃ーーー。




 唐突に空から飛んで現れた魔王スイレンは、私達の前に正座して頭を下げたわ。


「お願いがあるのだ」

「……急に現れたと思ったら、どうしたんだ?」


 グランも驚いたのか、口に咥えていたクッキーを落としてるし(私がナイスキャッチして、お皿に置いたわ)。

 私も急にそんなこと言うから、驚いてしまったけどね。


「ちょっと、儂の甥っ子を助けてきてくれんか?」

「「助ける?」」

「そうだ。長らく放浪の旅に出ていた甥っ子が、やっと連絡してきたんだ」

「ん?魔族も他の大陸に行けるのか?」

「いや、魔族というのは正確には、儂の浄化の手伝いをしている者のことを示す。つまり、魔王領には魔族の龍人種と普通の龍人種がおるのだ。甥っ子は後者だな」


 あぁ、そうなのね。


「で?助けるってどうしたの?」

「…………急に連絡がきたと思ったら……どうやら牢屋の中らしくてな?至急抜け出さなくては、大変な事になるらしい」

「え?何したの?脱獄の手伝いをしろと言うの?」


 思わず聞いちゃった私は悪くないはずよ。

 だって、牢屋とか相当でしょう?

 犯罪を犯したってことでしょう?

 なのに脱走の手伝いとか……絶対、碌なことにならないわ。



「いや……詳しい話はよく分からないのだが。好いた女を救うために、抜け出したいのだとか」



 ………………うん、なるほど。


「「よし、行ってくる(わ)」」

「話が早くて助かる」


 そんな事情じゃ話を聞かなきゃね。

 戦闘合宿までの間、暇だったし。




 取り敢えず……スイレンさんから、手紙と甥っ子さんの居場所を聞き……グランの魔法で転移したわ。







 *****





 辿り着いたのは、いかにも牢屋ですって感じの場所で。

 目の前にいた囚人服の青年は、急に現れた私達にギョッとした。

 短い薄水色の髪に、スイレンさんに似た顔。

 完全にこの人がスイレンさんの甥っ子ね。


「初めまして。俺の名前はグランヒルト。スイレンさんの代理できた」

「私はフリージアよ。よろしく」

「えぇぇ……叔父上、どんな化物を助っ人に呼んだんだ……」


 失敬な。

 グランと一緒に睨むが、彼は萎縮することもなく頭を下げたわ。

 スイレンさんと違って豪胆ね?


「おれの名前は、スイハ。一応、《第Ⅱの魔王》スイレンの甥だ。長らく放浪の旅をしていた。わざわざ、第Ⅶの大陸(・・・・・)まで来てもらってすまん。よろしく頼む」


 ……………あら?


「私達がスイレンさんの代理だって疑わないの?」

「いや、どうせ疑ったって下手すりゃ殺されるだけだろーし。化物だろーがなんだろーが、助けてくれるならなんでも良いんだよ」

「やっばい。このテキトー感、俺、気に入ったわ」


 グランがケラケラ笑いながら、スイハさんを指差す。

 私も若干笑いながら、彼に手紙を差し出したわ。


「はい。取り敢えず、スイレンさんからの手紙よ」

「あぁ、ありがとう」


 スイハさんはそれを読み、一瞬で燃やす。

 おぉ……鮮やかな魔法。

 グランも少し感心した様子で、彼に質問した。


「で?好いた女を救うために脱獄するのか?」

「………いや、脱獄はやろうと思えばできるんだが。ちょっと脚が速い人が必要だったんだ。助けてくれるか?」

「詳しい話を聞かせてくれたらね?」


 スイハさんは頷くと、事の発端を話してくれたわ。


「えっと……俺がこの国に来て直ぐの頃かな。ちょっと馬鹿がいて……。まぁ、正確に言うと?とある公爵令息とデートしてたとある女(・・・・)に小さな男の子がぶつかって。両方転んで、女が手に擦り傷作ったからって令息がマジ切れして」

「あ、なんとなく先が読めた気がするわ」

「男の子に罵詈雑言吐くだけじゃなくて、殴ろうとしたから俺が先に令息を殴った」

「「うわぉ」」


 確かに先に手を出したら駄目だろうけど……。

 向こうも向こうね。

 なんで小さな男の子に罵詈雑言投げつけるかが分からないわ。

 ちょっと擦り傷作った程度なんでしょ?

 意味不明だわ。


「そしたら、その公爵令息ってこの国の第一王女の婚約者だったらしくってさ。本当は自国の人間じゃなかろうと、王女の婚約者を殴った訳だから即処刑らしかったんだが……王女の結婚が近いからって恩情で、こうして牢屋にドボンになったんだ」

「ん?じゃあその女は王女だったのか?」

「いや、恋人らしい」

「「えっ」」

「ついでに言うと、牢屋に入れられたのが一ヶ月くらい前。王女とそいつの結婚式は三日後です」


 いやいやいや、待って?

 おかしくないかしら?

 なんで結婚一ヶ月前なのに、他の女とデートしてるの?


「おれが牢屋に入れられてからさ。王女が会いに来たんだよ」

「………………随分と、不用心だな」

「おれもそれ言った。でも、彼女はおれが自分の碌でもない婚約者の所為で牢屋に入れられたことを謝って。それどころか、おれが旅してきた話をして欲しいって願ったんだ」


 スイハさんは目を細めて……柔らかく笑う。



「この国は王位継承権が男女関係なしで与えられるらしくて。ずっと王位を継ぐ勉強しかしてこなくて。政略結婚をして、女王として、子を産む道具として……永遠にこの国に囚われるから、その前におれの話を通して〝世界を見てみたかった〟んだと」



 ………………あぁ……それは。

 なんだか、それは少し。



 …………………哀しいわ。



「王女さんも、馬鹿なんだよ。相手がその女と浮気し続けるって分かってるのに結婚するんだ。政略結婚だからって。仕方ないからって。おれの国が、羨ましいって。ただ一人を真摯に愛することができる、おれが羨ましいって。あんな、泣きそうな顔で……笑うんだよ」


 スイハさんはその王女様の顔を思い出したのか、泣きそうな顔になる。

 グランも……少し難しい顔で、彼に告げた。


「…………………お前も、泣きそうな顔してるぞ」

「…………おっと、すまん。これは、おれの自己満足。我儘だ」


 スイハさんはパチンッと両頬を叩くと、真剣な顔で私達を見る。

 その先をなんとなく察していたけれど……私達は彼の言葉を待った。



「おれは、王女さんを攫う。憎まれてもいい。嫌われてもいい。でも、幸せになって欲しい。あんな屑の嫁になんてなって欲しくない。だから……全てが終わったら、おれはこの国に殺されてもいい。代わりに、王女さんを逃がしてやって欲しい。助けて、くれるか?」



 ………………そう告げるスイハさんは、酷く真っ直ぐな瞳で私達を見ていて。

 グランは、大きな溜息を吐いたわ。


「もし、俺達が逃がしても……彼女が自らこの地に戻ったら?」

「それはそれで世界を旅することになるんだ。構わない」

「お前は、彼女をこの国から攫う代わりに、この国に殺されるつもりか?」

「あぁ。命をかける」

「なんで、お前がそこまでする」

「なんで?そんなの……決まってるだろう?」


 グランの強い言葉に、スイハさんは怯まなかった。

 それどころか……優しく、笑った。



「惚れた女が幸せになれないなんて、男の矜持が傷つくからだ」



 …………………………ふふっ。



「うわぁ……無駄に格好いいぞ、こいつ」

「そうねぇ。ちょっと録画してたから後でその王女様に見せてあげましょう」

「ナイスファインプレー」

「………………………は?」


 グランとハイタッチして、ニマニマと笑う。

 あ、スイハさんは意味不明って顔ね。


「ついでに、王女様のどこに惚れたの?」

「え?え?えっと……互いの話をしてた時に、あいつがどんだけ頑張って何を学んできたとか、真剣にやってきたとか……いや、真剣にやってきたんだとかは言わなかったけどな?雰囲気で伝わってきて……あぁ、真面目なんだなぁって思って……真剣な顔も、拗ねた顔も、笑った顔が可愛くて………」

「うわぁ‼︎惚気だぞ、惚気‼︎聞いたか、リジー‼︎甘い‼︎砂糖吐きそう‼︎」

「私はこういうの好きよ‼︎」


 キャーキャーと楽しげに笑う私達に、スイハさんは余計に険しい顔になっちゃったわね、

 ごめんなさいね。

 でも、なんかこう……面白くって。


「いいね。好いた女のために国を敵にまわすとか格好いい。じゃあ、そんな勇気ある青年のために協力しますかね?リジーさん?」

「そうね。ちょっと本気で脅してやりましょうか、グランさん?」


 ニヤリと悪ーい笑みを浮かべる私達は、きっととーっても恐いでしょうね。

 …………………流石のスイハさんもビクッとなってたし。


「じゃあ、ドラマチックな花嫁強奪作戦、開始だー‼︎」

「おー‼︎」

「………………えぇぇぇ……こいつら、ノリの差が激しいだろ………」




 私達はこんなんだから、真面目に受け止めたら負けなのよ。





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