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第20話 リジーのトラウマ、グランの逆鱗


今後もよろしくお願いします‼︎


 







「おはようございます、フリージアお姉様‼︎」



 いつぞやのようにグランが私を迎えに来て、後からリリィが来た朝の女子寮前。

 でも、言われた言葉は前と全然違ったわ。


「「………………」」


 私はなんとも言えない顔になり、グランに至っては、もう表情が一切分からない真顔。

 一体、何が起きたのか……リリィは私のことを〝お姉様〟と慕うようになってしまったの。

 私の方が歳下なんだけどね。


「お姉様。今日の昼食、ご一緒してもよろしいですか?」


 ………もし、この子に尻尾があるならブンブン振ってると思うわ。

 グランはそんな彼女を見て、私の腰をガシッと抱き締める。



「リジー。これはどういうことだ」



 …………………怒ってるわぁ。

 真顔だけど纏ってるオーラがヤバイわぁ……。

 どういうことって聞かれても……私が聞きたいわ……。


「お姉様を責めないで下さい、グランヒルト様‼︎」


 リリィは私がグランに怒られると思ったのか、慌てて駆け寄ってくる。


「私、反省したんです」

「…………あ〝?」


 グランの威圧に「ピッ⁉︎」とリリィが泣きそうになるけれど……彼女は手をギュッと握り締めて、仁王立ちする。

 ……………仁王立ち(笑)。



「フリージアお姉様は私が酷いことを言ったのに……私に寄り添って下さいました‼︎私に優しくして下さいました‼︎」



 いや、してないわよ。

 単に精神安定魔法を常時かけてあげたぐらいよ。



「そんな優しくて清らかなフリージアお姉様の大切な方を取ろうなど……なんと愚かしいことだろうと分かったんです‼︎今はもうグランヒルト様のことなんて何とも思いませんし、邪魔をしようとも思っていません‼︎私は、フリージアお姉様の幸せのために精進したいと思います‼︎」



「「…………………………」」


 ……………え?この子、頭大丈夫?

 グランも考えるのが面倒になったのか、「そうか」と言って私の腰を抱いて歩き出す。

 そんな後ろをリリィは慌てて追いかけて来たわ。


「フリージアお姉様、お昼はっ……」

「俺と食うからお前は駄目だ」

「なら、夕飯はっ……」

「リジーは(俺の)部屋で食べている」


 ………何故かグランが答えてるわ。

 まぁ、昼食は確かにグランと一緒に食べているし……夕飯時はグランの部屋で一緒に食べているものね。

 間違いじゃないから良いでしょう。


「じゃあ、その後に一緒にっ……」

「あーもうっ‼︎リジーは俺とイチャイチャするんだから、お前にやる時間はない‼︎他を当たれ‼︎」


 あ、キレた。

 周りにいた生徒達(男子生徒達も合流してる)はグランの言葉に顔を真っ赤にして固まっているし。

 ………どうするのかしら、グランったら。


「…………俺は独占欲が強いんだよ‼︎男でも女でもリジーに過剰に近づく奴は容赦なく潰す‼︎以上っっ‼︎」

「あら、開き直ったわね」

「仕方ないだろ⁉︎こいつ、このまま許せばリジーにストーキングしそうなんだからっ‼︎」

「……………え?」


 キョトンとする私に、グランは耳を寄せて告げる。


(こいつ、昨日の夜中……リジーの部屋の前で二時間ぐらいうろちょろしてたらしいぞ)

(…………え〝?)

(影に監視させてた)


 ゾワッ……背筋が凍りそうになり、慌ててグランに抱きつく。

 昨日は……自室で寝たのよね。

 つまり、私が寝てる部屋の前でリリィが徘徊……。


(グラン。今日からまた貴方の部屋で寝るわ)

(だろうな)


 私はグランの腕を抱き締めて、リリィを見る。

 リリィは私に見られて、頬を赤くして……これはヤバい感じがするわ‼︎

 なんか危険な感じがする‼︎


『危険察知 習得』


 なんか久し振りにアナウンス聞いたわね⁉︎

 というか、凄い今更感溢れるスキル習得したわ‼︎

 私は意を決して、リリィを見ながら……伝える。



「私、グランとイチャイチャしてる時間が大切なの。だから、貴女と一緒にいる時間はないわ」



 リリィはそれを聞いて目を大きく見開く。

 そして、絶望したような顔になったわ。


「フリージアお姉様……」

「それに私の邪魔をしないのでしょう?なら、グランとの時間も邪魔しないで」

「っっ‼︎」


 私の邪魔をしないって自分で言ったんだもの。

 ちゃんと、その通りにしてもらわないと。


「あぁ……そうですね……」


 リリィは顔を伏せる。

 その姿はあざとらしいくらいに可愛らしげで……なのに、私は何故か恐怖を覚えたわ。

 リリィは勢いよく顔を上げて、微笑む。



「なら、影から見守ります‼︎フリージアお姉様の幸せのために‼︎」



「「…………………は?」」


 私とグランは互いに身を寄せて、絶句する。

 リリィは無邪気な笑みを浮かべていて。

 私は思わず叫んだわ。


「いや、影で見守られる方が幸せになれないわよっ⁉︎」

「フリージアお姉様のために頑張ります‼︎」

「話が通じないっっ‼︎」

「お姉様、また後で‼︎」


 リリィはそれはそれは煌めいた笑顔を見せながら、先に去って行く。

 ギギギッ……と鈍い動きでグランを見上げると……彼は「馬鹿リジー」と呆れた顔をしていたわ。


「うわぁぁぁぁぁっ、ストーカー‼︎私にストーカーがぁぁぁあっ‼︎」

「っ⁉︎落ち着け、リジー‼︎公爵令嬢の仮面が剥がれてる‼︎」

「剥がれたっていいわよ‼︎ストーカーが現れたことの方が問題よ‼︎」


 なんで、どうしてこうなったのよ‼︎

 ちょっとヒロインがストーカー宣言ってアウトじゃないのっ⁉︎

 私の精神をゴリゴリ削るためにそんな発言してるのっ⁉︎

 なんで⁉︎脳内お花畑(あの女)は一つ間違えるとストーカーになるのっ⁉︎

 ストーカーは鬼門なのよ‼︎

 私、前世でもストーカーされてっ……警察沙汰になったことがあるんだからっ……。

 私は震える手でグランの服を掴んだ。


「グラン、ずっと一緒にいて‼︎」

「………リジー?」

「もうストーカーは……」


 怖かった……知らない男の人がずっと私を見てて……写真とか、電話とか……。

 前世のことを思い出して思わず泣き出しそうになったら、グランが慌てて抱っこしてくれたわ。

 ………うぅぅぅぅぅ……。


「リジー。大丈夫だから今日は休み時間ごとにお前に会いに行ってやるから……な?俺が側にいるから。大丈夫だから」

「グラン〜………」

「俺がお前を守るよ」


 ………グランの温もりに安心する。

 その声の真剣さに涙が溢れる。

 ………流石のグランも私の状態が不安定だと分かったのかしらね。

 私の背中をポンポンと撫でてくれたわ。




 だから……彼の顔がどんな顔になっているのか、私は知らなかったの。





 *****





 リジーを教室に抱っこしたまま連れてきた俺は、彼女を席に座らせてその頬を撫でる。

 僅かに残る涙の跡。

 ………この様子から見ると…〝ストーカー〟に何かしらのトラウマがありそうだな。

 俺はそんなリジーを安心させるために、優しく微笑む。


「リジー。大丈夫か?」

「グラン……」


 頬を寄せる姿は可愛いが、その心に影を落としたあの女は許せないな。

 俺が大切にしているのは国よりも、家族よりもリジーだ。

 だから、あの女は許さない。

 俺の逆鱗に触れたんだから……。


「大丈夫だ。心配しないでくれ。俺がなんとかしてやるからさ」

「………グラン…」

「また後で」


 俺はリジーの額にキスをして一年の教室を後にする。



 ………さて……どうしてやろうかな。

 一番早いのは……転移で他の大陸に飛ばすことだが……それじゃあ戻ってきてしまうかもしれないしな。


 リジーを悲しませたんだ。

 もう二度と近づこうなんて思わせないように、してやらないと。

 心の底から……生きていたことを、後悔させてやる。



「………………覚悟しろよ……聖女……」





 俺は小さく呟いた。







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