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第14話 重い話はハリセン一閃


シリアスクラッシャー‼︎


よろしくどうぞ‼︎


 







 雷鳴と剣戟の音が鳴り響く訓練場。



 その音の原因となっている私とグランは、至ってほのぼのとした会話をしていた。




「ねぇ、思うんですよ。グランさんやい」

「なんですかねぇ、リジーさん」

「たまーに、ジャンクフード食いたくならない?」

「なるわ」


 グランさん、食い気味に反応しましたな。


「だよねぇ……今度、作りません?」

「やりますか」

「って、なんでそんな会話しながら戦闘訓練できてんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」

「「煩い、マッキー‼︎」」


 私とグランが思わず、一瞬だけ手加減の効果を弱めにしてしまう。

 そうしたら、思いっきりマッキーがフライアウェイした。


「「あ。」」


 グランが思いっきり地面を蹴ってフライアウェイしたマッキーの側に行く。

 そして、マッキーを荷物持ちして地面にふわりと降り立った。


「よっし、誰も何も見てないっと」

『いや、普通に見てたからっっっ‼︎』


 そう叫ぶのは、訓練場の片隅で私達の実技訓練を見ていた各国の王子王女達……。

 赤毛の男の子がレッド様といって、ファディ王国の王子。

 青みががかったプラチナブロンドの美少女がスゥー様で、アクス王国の王女。

 モスグリーンの青年と茶髪の青年がグリーム王国とラム王国の王子……エイジ様とラウゼン様というらしい。

 え?どういう状況かって?



 旅の金がなくなった隣の大陸の勇者を私達の実技訓練の実験台(指南役として少しの期間だけ雇ってあげた)にして、その訓練を留学に来た王子達が見てたよ☆



「なんなんですの……この子供達……ふざけてるでしょう……」


 アクス王国の王女スゥー様は、どこか遠い目をしながら呟く。

 エイジ様とラウゼン様も頷いていた。








 無事に同盟が締結されて早一ヶ月。



 私の敵対ボス化をあまり気にする必要がなくなったから、よっしゃ‼︎冒険者稼業に集中できるぜ‼︎と思ったら……この留学と。


 なんかグランの優秀さに感銘を受けたらしい王様達は、将来の王達にそのノウハウを学んできなさい……的な感じで留学させてきたらしいよ。

 まぁ、ほらね?

 私とグランがそこら辺の子供よりも頭が良くて、無駄に戦力があるから……教育もドンドン高度になっていっておりまして。

 というか、攻略対象&悪役令嬢スペック&チート様のおかげなんですかね?

 もうほぼ、グランの帝王学&私のお妃教育も終わり気味になってるんですよ(笑)。

 だから、見せるとなると巨大な力の訓練になる訳で。

 ぶっちゃけ訓練しなくても余裕なんですが……護身術とかは必要だよね‼︎と、この国の騎士団の人達相手にしてたら、騎士団の人達の心が折れちゃったヨ。

 私達みたいな子供(手加減してる)とほぼ対等な模擬戦をしたのがいけなかったらしい。

 ………という訳で、お金稼ぎに精を出していたハーレム男ことマッキーを、雇ったとさ。



 で、マッキーはそこそここの国でも有名だから……流石に子供相手に勇者はないだろうと思ってたんでしょーね。

 今まさに、子供の逆襲を見せつけたがゆえに……各国の王のお子様達は驚いていると。



「あの……手加減という言葉を……」

「安心しろよ。死んで直ぐならリジーが生き返らせてくれるから」

「任せろ☆」

「なんかそれはそれで怖いっっっ‼︎」


 マッキーはとうとう顔を両手で覆って崩れ落ちる。

 仕方ないじゃないか。

 騎士相手だと手加減しても死にそうなんだもん。


「やっぱグランとやるのが一番かなぁ」

「えー?でも、リジーとやると周りの建物が壊れるかもしれないから駄目だって」

「結界張るもん」

「…………はぁ……仕方ないなぁ」


 グランは苦笑しながら、私に歩み寄ってくる。

 そして、ヒョイと私を抱き上げた。


「っ⁉︎」

「その前に休憩な。水分取らないと体調崩すから」

「えー。大丈夫〜」

「熱中症になるかもしれないから駄目。嫌がるなら口移しするぞ」

「…………うぐっ……分かったよ……」


 王子達が座っていたお茶会セットの元へ近づき、グランが椅子に座る。

 そのまま私もグランの膝の上に座った。


『………………』


 王子達が目を丸くして固まっているけど、私はそれを無視して侍女が入れてくれた紅茶を飲む。

 ふんわりと良い香りがした。


「美味しいねぇ」

「まぁ、王家御用達の茶葉だからな。リジー、このクッキーも美味いぞ」


 口元に運ばれたクッキーをモソモソと食べる。

 あ、マジや。

 とっても美味しい。

 グランは黙々と食べる私を見て、楽しそうに笑っていた。


「美味しい?」

「うむ」

「なら、後でお土産で包んでやるよ」

「流石グラン‼︎愛してる‼︎」

「俺も愛してるよ」


 クスクスと笑うグランにぎゅうっと抱きつけば、グランも強く抱き返してくれる。

 あぁ……この体温、無駄に落ち着く……。

 そこでグランは「あ、そーだ」と思い出した。


「マッキーも休憩すれば?」

「サラッと忘れてたよね。酷くね?グラン君」

「ほら……勇者だけど、ハーレムガールズがいないとお前の存在感薄いから」

「マジで酷いっっ‼︎というか、そんな同情するような顔止めてっっ‼︎」


 マッキーも嘆きながら椅子に座って侍女に入れてもらった紅茶を飲む。

 そして、私達を見て苦笑した。


「相変わらず仲良いね。他の子達、固まってるよ?」

「…………どうして?」

「普通は婚約者でもこんなにベッタリしないからだろ」

「えー?そうなの?」

「そーなの」


 でも、私達はかなりくっついてるよね?

 抱き締め合うことは多いし……いつも手を繋いでるし。

 子供なら普通じゃないの?


「普通じゃないからな。オレ様んとこの婚約者なんてスッゲー怖いからな」


 レッド様がそんなことを言ってくる。

 つーか、オレ様とかウケる。


「普通はそこそこの仲か、政略結婚って割り切ってるものですわ」

「うんうん、確かに。それか、好きだけど素直になれないとか?」

「そうですね。こんなにべったりしてる婚約者同士の方が逆に珍しいですよ」


 ふぅん?

 まぁ、どうでもいいけどね。


「というか……グランヒルト王子はとても素晴らしい、幼いながらに王子としての人格と才能が溢れていると聞いていましたが、なんかヤンチャな子供って感じですね」


 ラウゼン王子がそう言ってくる。

 うーん……私達のコントみたいな会話を見て、こんな誇張した説明したのかな?


「……まぁ。あんた達とは将来、王として接することになるからな。最初っから仮面被って接してたってつまんないだろ」

「でも、それが逆に弱みになることにならないかしら?」

「…………じゃあ、逆に聞くけど?弱みを握ってどうしたいの?」

『えっ⁉︎』


 まさかそう聞かれると思わなかったのか、王子達は狼狽する。

 それを見てグランは余裕のある笑みを見せた。


「弱みってのは相手を脅すための材料だ。で?俺の弱みを握ったとしてあんたらは何をする?というか、この程度の弱みで俺を脅せるとでも?」

「何をって……」


 レッド様が困惑したような顔になる。

 他の子達も。

 グランはそんな彼ら(肉体年齢的には歳上もいる)に教えるように話し始めた。


「例えば、最強の冒険者がいたとしよう。彼は誰にも従わない孤高の狼だったが……とある悪徳貴族が彼の家族を人質に、彼に自分の配下に入るように脅した」

「……最悪な展開だねぇ……」

「横領している貴族がいて……そいつを利用して他の共犯者達も含めて一網打尽にするために、その証拠を突きつけて協力させることだって脅しだろ?ただ、それが脅すに値する弱みであるかが大事だ」


 …………なんか難しい話になってきたぞ?


「冒険者は家族を人質に取られたかもしれない。でも、彼は例え家族が人質に取られても救い出せるような力があったら?家族自体が強くて、救う必要がなかったら?もう脅す材料にならないよな。悪徳貴族の方は……極端な話、暗殺者に殺されて脅したことすらなかったことにされるかもしれない」


 ………王子達は真剣に聴いてるけど、私はもう頭がキャパオーバーです。

 もう右から左へ受け流すつもりで、私は目を閉じた。


「という訳で、弱みってのは脅す材料として成り立って初めて弱みとも言えるんだよ。言っとくが、俺は既に竜ぐらいなら余裕で殺せるし、今回の同盟にも一役買っている。現時点でそこそこ功績を残してる俺を、たかが性格が悪い程度の弱みでどうこうできるとでも?」

「……………確かに……性格がヤンチャってだけじゃ、弱みにすらならないわね」

「そういうこと。王族ってのはいかにそういうドロドロした世界で、清濁併せ呑むように生きれるかが大事……って。なんで俺は、こんな真面目な話してるかな……止めだ、止め。なんで俺は〝弱み〟程度の会話でこんな話をしたんだよ……俺はこんな深い話がしたい訳じゃないのに」


 グランはパタパタと手を振ると、それ以上何も言わずにクッキーを食べ始める。

 王子達は改めて、グランを尊敬の眼差しで見てるんだけど……その前に。


「グランさんやい」

「なんですかね、リジーさん」

「4歳児の言葉じゃないわー、今の。悟り開ききって棺桶に片足突っ込んだお爺ちゃんなの?」


 そう……今のグランはかなーり色々と達観して、早熟し過ぎてる。

 まぁ、私も人のことは言えないけどさぁ?

 まだ、子供のままでいてもいいじゃん。

 だから、私は子供みたいにワザと喧嘩を売る。

 そうすれば、グランは子供みたいに怒ると思っーー……。



 パキッ。



 グランが持っていたクッキーが真っ二つに割れる。

 あ、これはヤバいヤツや。


「ふーん……棺桶に片足突っ込んだお爺ちゃんねぇ……」

「グ……グランさん?」

「いや?リジーは俺が4歳なのに達観し過ぎてるから、俺が子供っぽい態度を取るようにワザと喧嘩を売ったんだろうけどさぁ?」


 グランは優しく微笑んでいるけど、目が笑っていない。

 あ、これは。



「誰がお爺ちゃんだ、誰が。言っていいことと悪いことがあるだろーが」



 あ、お爺ちゃんって言うのは禁句だったんっすね⁉︎

 というか、これは子供っぽい怒り方なのか⁉︎

 いや、微妙に違うわな‼︎


「テメェ……地味に俺の方が精神年齢上なのを気にしてるのに……よくもお爺ちゃんなんて……」

「あれぇ⁉︎グラン、そんなの気にしてたの⁉︎」

「お前が子供っぽ過ぎるから、たまに自分がロリコンなのかって錯覚する時があるんだよ‼︎」

「肉体年齢は1歳しか違わないのにっ⁉︎」

「ウルセェ‼︎精神年齢にこんなに差があったら、そこそこ気にするわっっ‼︎」


 いやいやいや‼︎

 でも、グランだって私と同じテンションでよく話してるじゃん⁉︎

 精神年齢気にするっ⁉︎


「言っとくが、お前との会話はお前のテンションに合わせてる感じだからな?」

「えっ⁉︎心の声読んでるっ⁉︎」

「お前の顔は、本音が出やすいんだよっ‼︎」


 グランは私のほっぺたをふにょん〜と引っ張る。

 地味に痛い。


「ひゃあほんひょうのぐひゃ……」

「流石にほっぺ引っ張ってたら分かんないな」


 手を離されて、両頬を撫でる。

 あぁ、私の可愛いほっぺが真っ赤になっちゃったかもしれないじゃないか。


「じゃあ、本当のグランの性格って?」

「楽して生きたい」

「変わんないじゃん」

「………今の俺ってどんな性格なんだろーな?」

「え?それ私に聞く?」


 まさかそんな重い系の質問されると思ってなかったから私はギョッとする。

 グランはちょっと困ったような顔をした。


「……いや、だって……前は根暗、無口、引きこもりの三拍子揃ってたんだよ。唯一得意なことはRPGの演技ロールプレイ

「あぁ……」

「でも、今は紳士的な態度だってできる。腹黒いことだって、脅しだって、子供っぽいことだってできる。前の記憶に引きずられてるのか……俺自身がを分かってない気がする。なんか、どれが本当の自分だか分かんないんだよ」

「………………グラン……」


 私は彼の顔を見る。

 そして……ハリセンで思いっきりその頭を叩きつけた。


「ぐふっ⁉︎」

「相談内容が重いわっっ‼︎」


 グランは頭を押さえながら悶える。

 私お手製のハリセンですからね。

 グランにだって効きますよ。


「痛いっ‼︎」

「あんたが重いこと相談するからだわ‼︎自分が自分を分からなくても、別にいいじゃん‼︎別にこーしろあーしろ言ってる訳じゃないんだから、長い人生でテキトーに自分を探せ‼︎」

「重い言っときながら普通に回答してるぞっ⁉︎」

「取り敢えず、グランは私を甘やかしておけばオッケーなの。理解した?」

「あ、はい」


 ……………ん?

 なんか、最後変なこと言った気がするけど……よし、忘れておこうっと。

 なんか会話がどんどん斜め上になっていったけど、あーもう面倒くさい。


「マッキー‼︎憂さ晴らしだ‼︎模擬戦付き合って‼︎」

「えぇっ⁉︎」

「拒否権はナーシっ‼︎」


 もう、面倒なことは身体を動かして忘れよう‼︎

 脳筋だからね‼︎





 私は逃げようとするマッキーを鎖で捕まえて、再び模擬戦を開始するのだった……。







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