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第13話 我が道を往く–ゴーイング・マイウェイ–


シリアスなはずなのに、コメディが強いという事実。

後悔はしていない。


よろしくね‼︎


 






 静まり返った会議室。


 ファディ国王が口を開くよりも先に、私は彼の頭にハリセン(魔法製)を叩きつけた。



 バチコーンッッッ‼︎



 グランは頭を押さえて睨んでくるけど、私はドスの利いた笑顔を返す。

 すると、彼はヒュッと息を吸った。


「グランさんやい」

「はい、リジーさん」

「報・連・相って知ってるか?」

「報告・連絡・相談です」

「実行しろや」

「申し訳ございませんでした」


 グランは直角九十度で頭を下げる。

 それを見て、私はやっと溜息を吐いた。


「…………流石に、こんな子供達が強いとは思えないんだが?」


 ファディ国王にそう言われて、私とグランはそっちに向く。

 私達が口を開く前に、スイレンさんがケラケラと笑いながら否定した。


「何を言うか。儂よりもうーんと強いぞ?力量が測れぬのはそれほど、差があるからだろう」

「………おれが弱いと言いたいのか?」

「あぁ。はっきり言って、儂だって相手にしたくないレベルなんだぞ?お前じゃ相手にすらならんよ」

「………あ〝?」


 ねぇ、どうしてあんたら二人はバチバチしてるの。

 視線で喧嘩するのやめい。


「ってか、力技は最終手段じゃなかったの?」

「そりゃあ最終手段にしたいけど……魔王と国王が戦ったら、どうなる?どちらかが負ければ、民はどう思う?魔王領とファディ国の溝がより深くなる可能性もあるだろ。元々、敵対……対立する立場なんだから」

「………え。グランったらそこまで考えてたの?」

「お前みたいに考えなしじゃないんだよ」


 流石にこの言葉には周りにいた人達も驚いたようで。

 ゆっくりとルーゼンヒルト国王へと向き直った。


「貴方の息子、優秀過ぎない?」

「頭良いね、グランヒルト君」

「というか、本当に子供か?」


 女王陛下達がそう言うが、ルーゼンヒルト国王は苦笑するばかり。

 ごめんね、私達の所為でストレス与えて。

 将来ハゲないでね‼︎


「しゃーないなぁ。協力してあげるよ、グラン」

「サンキュー、リジー。では……そういうことで。どちらと戦いますか?」


 一気に威圧を放ったグランに、その場にいた人々が顔面蒼白で震え始める。

 冷や汗がぶわりと湧いているのがよく見えるね。

 ファディ王はやっと、グランのヤバさが分かったみたい。

 目を大きく見開いて……震える手で指差した。


「こっ……こっ……こっ……」

「グラン、ストップ。このままじゃ話にならないから。ニワトリ化してるから」

「………手加減込みの威圧だったんだが」

「お前、この前ファイアードラゴン瞬殺してレベルアップしてるでしょーに」

「あ、そーだった」

『ファイアードラゴンを瞬殺⁉︎』


 テヘッと誤魔化すグランに、その場にいた人々が凍りつく。

 まぁ、驚くよね‼︎


「…………つまり……おれはファイアードラゴンを瞬殺するような子供と戦うということか……?」

「ちなみにリジーはアースドラゴンを瞬殺してます」

「てへっ☆……って、ノリでぶりっ子反応しちゃったじゃん‼︎」

「すると思ったわー」


 またギャーギャー言い合う私達。

 それを見て、ファディ国王は顔面蒼白で……某深夜アニメのメガネ司令のように手を組んで俯いた。


「…………信じたくないが……先ほどの威圧は……まさか……」

「ちなみになんだが……グランヒルトよ」


 俯くファディ王を見たルーゼンヒルト王が、グランに声をかける。

 グランは「なんでしょうか?」と首を傾げた。


「………殺さないよな…?」

「殺さないように努力はしますけど、力量差がありすぎると手加減してすら死んでしまいそうですよね」

「あー……確かに。グラン、ファイを倒した時、首チョンパだったもんね」

『ファイ?首チョンパ?』


 不思議そうにする皆さんに、私は〝首チョンパ〟と言う言葉がないことを悟る。

 そして、分かりやすく説明した。


「ファイアードラゴンの首を、剣で切り落とすってことです」

『……………………』

「てへっ☆」


 今度はグランが誤魔化すように、あざとく笑う。

 流石のファディ王もそれを聞いて、手を挙げた。



「賛成しよう。切実に、死にたくない」



 それは多分、賢明な判断だね‼︎

 グランはそれを聞いて、ニヤリと笑う。

 うわぁ、悪い笑顔だなぁ。


「では、只今より契約魔法を施行します」

『はっ?』


 グランの言葉に従って、彼の前に契約魔法の書類が出現する。

 チラリと視線で合図をされましたからな。

 はいはい、お手伝いですね。


「リジー」

「了解。魔力量的には、第Ⅱ大陸全居住者に適応すればいいんでしょう?」

「あぁ」

「んじゃぁ……グラン、契約内容を設定して」


 契約魔法はその名の通り、契約を結んで破れないようにすること。

 今回の私の役割は、この契約魔法をこの大陸に住む人々全員に適応するように、魔力を供給すること。

 グランはゆっくりと、契約内容を口にした。


「《契約:この大陸内において、個人的にも、国家的にも戦争と名のつく争いを禁止する。対象:第Ⅱ大陸全居住者に適応。備考:なお、魔物は適応外とする。加えて、個人間のいざこざや小競り合いについては容認する》」


 ………なるほどねぇ。

 これで戦争は起こせないし、魔物討伐とかは問題なし。

 冒険者同士のいざこざとかも問題なしと……マジでグラン、頭が良いな。

 私は思いっきり魔力を供給する。


「よっし、《契約魔法、発動》」


 パァァァァアンッッッ……。

 書類が光となって弾けて、空中に溶けていく。

 おぉ、綺麗だね‼︎


『…………………』

「ちょっと待て、グランヒルト‼︎今の魔法はなんだ⁉︎」


 ルーゼンヒルト王が慌てながら聞いてくる。

 ありゃりゃ、もしかして?


「俺が作った魔法ですね」

『作った魔法っっ⁉︎』


 絶句する王達をスルーして、グランは大きく伸びをする。

 そして、私に微笑んだ。


「さて。これで戦争回避は確実だな。リジー、褒美を所望します」

「はい?」

「だって、事実ここまで頑張ったのはリジーのためだぞ?」


 …………あー…もしかして。

 私が中ボスになるから、その回避のために?

 ……………うぐっ……。


「顔、赤くね?」

「うっさい、馬鹿グラン」

「馬鹿でもなんでもいいから、ご褒美ちょーだい」


 彼は私の肩に両手を置いて、至近距離で見つめてくる。

 蕩けるような視線に、じわじわと顔の熱が上がる。

 いや、まぁ……ね。

 グランが私のために頑張ってくれたのは嬉しいですよ。

 死亡回避のために、ここまでしてくれたんですから。

 だから、ご褒美を所望するのは……まぁ、うん。

 正当な要求なんでしょーけど。

 ………………一体、どうしろと。


「……………うぅぅぅ……」

「あー……うん。キャパオーバーしたのな。初心いリジーは仕方ないなぁ……」


 グランは満面の笑顔を浮かべながら仕方なさそうな声を出すという器用なことをしながら、私を片手で抱き上げる。

 私は恥ずかしさの余り、彼の首に顔を埋めた。


「じゃあ、詳しい話は父上に任せますね。では、皆様。失礼致します」



 そのまま、私達は会議室を後にした。





 *****





 わたしは、この上なく我が道を往く息子の背中を見つめながら……溜息を零す。



 まぁ、確かに。

 契約魔法なんて凄まじいモノを発動して、もう戦争をできなくしたのなら……同盟の内容については大人の話になるだろう。

 だが、息子よ。



 お前は色々と規格外過ぎる………。



「ディングス王」

「………なんだ、アクス女王」

「グランヒルト王子、あの婚約者との婚約を解消してウチの娘と婚約しない?」


 ………なんてことを言い出すんだ。

 今、この場にグランヒルトがいないことを喜ばずにいられない。


「…………グランヒルトに国を潰される覚悟があるのなら、本人に直接言うと良い」

「あ、流石にそれは遠慮するわ」


 アクス女王も流石に国が滅びるリスクを負ってまで婚約したい訳ではないらしい。

 あぁ、その選択の方が皆、幸せだろう。


「取り敢えず……我がグリーム王国から、王子をこの国に留学させても良いかな?グランヒルト君と一緒にいさせたら、学ぶことも多そうだし」

「儂の国もじゃ。年齢的に孫が来ることになるかの」


 それにファディ国とアクス国も同じようなことを言ってくる。

 …………まぁ……各国の王にそう言われたら……受け入れるしかないが……。


「その……子供達のプライドが根元からたたき折られる可能性があるが……構わないか?」

『………………』





 結局、傲慢になるよりはマシだという結論に至り……。


 同盟内容を決める前に、各国から王族の留学が行われることが決定した。






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