第75話 第1回ダンジョンアタック〜マリカ&セーゲル(7)〜
先に言っときます。
今回の文章は読みづらいし、ちょっとおかしい(ホラー感がある??)けれど……
そーゆー仕様です(`・ω・´)!!!!
よろしくどうぞっ( ・∇・)ノ
ーーもう既に……何度、打ち合っただろうか?
大剣を振り下ろす。槍の穂先で弾かれる。
槍先で鋭く突いてくる。剣の刃を当てて軌道をズラす。
近づいては離れて。離れては近づいて。
時間が経つごとに激しさを増す攻防に、いつの間にか俺の口角が持ち上がっていく。
あぁ……この後の戦闘のことを考えればセーブしなくてはいけないのに。ここで出シ切る訳にはいかないのに。
楽しクて。愉シクテ。興奮ガ抑え切れナイ。
血ガ燃える。血が滾ル。モットモット闘争をと、本能が叫ブ。
『っ‼︎』
互いノ武器がブツかり合ッテ拮抗しタ瞬間ーー間近で俺の顔を見タ王女が、息を飲む。
その隙ヲ見逃さズに。俺はクルリッと大剣を回転さセて、その身を斬り裂イタ。
『クッ……‼︎』
後退すル王女。身体ニ傷は……ナイ。
代わリに、後ろにイた人魚ガ崩れ落チる。アァ、《身代わり》カ。
「『…………』」
無言ノ睨み合イ。互イに視線で、闘気デ、牽制シ合う。相手の次ノ手を読んデハ潰して。潰シテは読んデ。
牽制しツツも、足に力を込メル。ソノまま弾丸のヨウに前に飛び出ソウとしたトコロでーー……王女がフッと、力を抜イタ。
『…………時間切れ、だな』
「…………ア?」
戦闘欲ガ昂り過ぎて相手の言葉がヨク理解出来ない。
でも、モウ向こうに闘う気がナイのだけは、分かっタ。
『決着は我が女王陛下の下で、だ。セーゲルよ』
そう告げらレタ次の瞬間、王女と俺ラを囲ンでいたソノ配下達は目の前から消エテいた。
……。
…………。
………………強制的に終わラセられた所為でちょっとずつ冷静にナル、が。
…………不完全燃焼感が、半端ジャないんだが……??
「…………」
「セーゲル」
顰めっ面をしナがら無言のまま立ち尽くしていたら、マリカから声をかけられタ。
緩慢な動きで振り向くと、彼女ハちょっと強張った顔をしている。
俺は首を傾げながら、ゆったりとした声でその名を呼んダ。
「…………マリ、カ?」
「…………かなり長い間、打ち合っていたものね。一定時間が経過してしまったのでしょう」
「…………あァ……それ、か」
一定時間の戦闘時間の経過。ソレで向こうは撤退したのか。
この後にある女王戦のために、一定以上の疲労を蓄積させるべきだっタのに。下手を、打ったナ。
「……すまない……失敗、シた」
連戦に次ぐ連戦。ダからこの《真珠の海廊》では、短期決着が攻略のコツだと言うのに。
…………もっと×りたくて。もっとタノシイ時間が長引いて欲しくて。
無駄に遊ンでしまったから、あの敵を殆ど消耗させることが、出来なかった。
「大丈夫よ、セーゲル」
ふと、頭に何かガ触れる。
それは、柔らかくて細い、マリカの、手。
「そういうこともあるわ。別に今の内に体力を削っておけば後々が楽になるだけで、別に楽にならなくても貴女とあたくしならば容易く乗り越えられるのだから。それほど気になさらないで?」
「…………マリカ」
俺の頭を撫デながら、マリカはそう励ましてれた。
じんわりと、彼女ノ柔らかな声が染み渡っていく。昂り過ぎていた闘争心が、穏やかに凪いでいく。
そう、だな。生きているんだから、失敗ぐらいするか。
俺は自身の両頬をバチンッと叩いて、意識を切り替える。
「よし。すまなかった、切り替える。失敗をいつまでも引きずっていては、ダンジョン攻略も上手くいかないからな」
余計なことに気を取られて、ダンジョン攻略に失敗しては元も子もない。ほんの少しの油断が命取りなるのだから、切り替えの速さは重要だ。
「えぇ、そうね。では、小休憩を挟んでから先に進みましょう」
だが、冷静になったつもりで多少はまだ冷静じゃなかったんだろう。
この時の俺は気づいていなかったんだ。
俺に気づかれぬように溜息を零した彼女に。
険しい表情で俺を盗み見る……マリカの姿にーー……。
*****
あたくしはセーゲルにバレぬように気をつけながら、溜息を零す。
大剣と槍がぶつかり合う中ーーセーゲルに違和感を感じた時にはもう、その変化は起きていた。
爛々と笑う敵の王女に呼応するに、獰猛に笑い始めたセーゲル。激しくなっていく攻防。
そして……柔らかな群青色の髪に混じった、炎のような紅色と。
じわじわと色濃くなっていく、肌。
まるで滲むように。染まっていくように。
その毛の根元が紅色に染まっていくことに。その白かった肌が浅黒く変わっていくことに。驚愕を隠せなかった。
何かがセーゲルに起きている。明らかな変化ーーいいえ、変質が生じている。
今すぐ割り込んで、何が起きたのかを解明したかった。けれど、この状況であたくしが動けば……相手にこちらを攻撃をさせる理由を与えてしまう。
乱戦になってしまったら。
セーゲルを変質させている〝何か〟に、火を焚べてしまいそうに思えてしまって。
だからあたくしは動けなくて。
あたくしは、見守るしかなかった。ただ、その闘いが終わるのを待つしかなかった。
そうして……その時が、くる。
『…………時間切れ、だな』
時間制限による敵の撤退。
強制的に戦闘を終わらせられたセーゲルは不完全燃焼なようだったけれど、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
それと同時に引いていく紅色。ある程度経った頃には、彼の髪は元の群青色へと戻っていたわ。勿論、肌の色も。
けれど……。
(……セーゲル)
今はもう、セーゲルの姿は元の通り。どこもおかしなところはない。
しかし、セーゲルの〝何か〟が、確実に変わってしまっているのを。あたくしは感じ取ってしまっている。
永く生きてきたあたくしでも分からない、先ほどの現象。
この変質が良いモノなのか悪いモノなのか。それすらも分からないから。あたくしは彼が大丈夫なのかと、不安を抱かずにいられない。
「よし、行こう」
あたくしの懸念に気づかぬセーゲルは、そう言って先に歩き出す。
ハッと我に返ったあたくしは慌てて後を追い、隣に並ぶ。そして、チラリッと横顔を確認しながら、恐る恐る問うた。
「…………セーゲル」
「ん?どうした?」
「その……先ほどの戦闘で、疲れてなどは、いない?体調は、大丈夫かしら?」
「……あぁ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」
足は止めないまま、彼はあたくしが自分の心配してくれるのが心底嬉しいと言わんばかりの笑顔で、返事を返してくる。
……どうやら、本人の自覚する異常は生じていないようね。それどころか、あの戦闘前よりも足取りが軽くなっているから……体調は良いぐらいなのかしら?
そうマジマジとセーゲルを観察している間に、随分と海廊を進んでいたらしく。先の方に列を組んだ人魚達が見えてくる。
『…………やっと、来ましたか』
列の最後方にいたティアラをつけた眼鏡の人魚が、カチャリと眼鏡のブリッジを押し上げながら溜息を零す。
彼女は手にしていた杖をタクトのように振ると、淡々と配下達に命じた。
『時間稼ぎで充分です。相手の体力を削りなさい。必ず前衛と後衛、2人組で事に当たること』
『シャッ‼︎』
『宜しい。お行きなさい』
ーーブワリッ‼︎‼︎
散開する人魚兵達。その動きは訓練された兵そのものだった。
チッ……最後の王女は典型的な司令官タイプのようね。兵達の動きには乱れがない。これはかなり……苦戦しそうね。
『シャァ‼︎』
「っ、セーゲル‼︎」
「クソッ‼︎気をつけろ、マリカッ‼︎」
突進攻撃でセーゲルが後方に吹っ飛ばされる。その所為であたくし達は分断されてしまう。
合流できぬよう、一瞬であたくし達は個別で敵に囲まれた。
「《氷よ》‼︎」
あたくしは数十個の氷の礫を飛ばして、囲む敵達を攻撃する。
けれどそれを敵の盾役が塞いで、その影で魔法を構築していた魔法兵が反撃してくる。あたくしはそれを身を回転させることで回避して、チラリッと敵越しにセーゲルの方を確認する。
あっちも同じように囲まれているけれど……特にスピードタイプの兵士2匹に反撃の隙もないくらいに攻撃されて、防戦一方になっているようね。
『シャァァァァァッ‼︎』
「‼︎」
目を逸らすことは許さないと言わんばかりに、また魔法攻撃が襲ってきてあたくしは慌ててそれを防ぐ。
あぁ……もう‼︎本当にやりづらいわ‼︎
敵の攻撃に慣れてきて反撃に出ようとすると、メインで敵対する相手が変わる。削っても、完全に倒し切る前に交代されて。後方に回復役がいるから直ぐに復帰してくる。だから全然、敵が減らない。後、無駄に盾持ちが堅いわ。
勿論、それ以外にも……メインで敵対している敵以外の、嫌がらせのようなちょっかい攻撃もされる。地味に嫌なタイミングで、それも軽い攻撃の中に時々重い攻撃も混ぜて翻弄してくるモノだから……そちらにも意識を割かなくちゃいけなくて。肉体的な疲労よりも、精神的な疲弊な方が蓄積するわね……。
最も嫌なのは王女の命令通り、決して深入りしてこないこと。
こちらが重い攻撃をぶち込もうとしても素早く距離を取られたり、盾持ちに防がれるから上手くいかない。絶妙な連携で、連続するかのように攻撃されるから落ち着く間もない。つまり、《境界》が使えない。
作戦通りに王女を攻撃したくても、王女自身が素早く移動し続けているし、あたくし達を囲む兵達の間に隙がないから抜けそうにもない。
本当に時間稼ぎ。こちらの体力だけが削られていく。
あたくしは「チッ」と舌打ちを零す。次々と放たれる攻撃に対処するしかない状況に苛立ちを隠すことができなかったわ。
『時間ですね。撤退しましょう』
熟練された動きに翻弄されていたけれど、その言葉が響いた瞬間ーー人魚達は逆らわず、速やかに後退した。
本当、気持ち悪いぐらいに躾けられてるわね。お前達。
撤退が決定してしまった時点で、これ以上の戦闘は無意味。あたくし達からの攻撃は絶対に通らない。
だからあたくし達は後追いなんて無駄なことはせず……王女から告げれる言葉を、大人しく聞くしかなかったわ。
『あなた達は陛下の御前に馳せ参じる権利を得ました。全ての決着は陛下の御前にて。では、先に行ってあなた達が来るのを待っていますよ』
そう言い残して、王女は先に行く。
残されたあたくし達は大きな溜息を零して……お互いに視線を向けた。
「体力切れでの撤退は2体」
「……3番目はギリギリ時間切れだが、《身代わり》を発動させるまでは削った。が……最後のは普通に時間切れだったな」
「最後の王女だけ体力が万全のまま、女王と戦わなくちゃいけなくなってしまったということね」
本当なら全匹、体力を削っての撤退にしたかったのだけど。
まぁ、この《真珠の海廊》を乗り越えられただけ良いとしましょう。
次はいよいよ、女王戦ーー。
あたくし達は改めて気合を入れ、海廊の先へと進んだわ。