3話
午前6時00分
割と僕はソッコーで死ぬ。
なぜか深夜の12時を回っても死ぬ。
死ぬ度に、僕は2018年7月6日に戻って転生する。
今回はカラスに転生していた。ベッドを蹴って、開けておいた窓から現場に飛び立つ。
午前7時??分
現場(らしき場所)にはコンビニが建っていた。
前々回は雑居ビルだった場所だ。
『昨日』と景色が違って見えるのは、気のせいだろうか? いいや、気のせいではない。
しばらくカラスの振りをして周囲を観察していると、『彼女』が通りがかった。
そろそろか。僕が翼を広げた瞬間、車がコンビニに突っ込んできた。コンビニの前を通りがかった『彼女』が「ひゃあっ!」と声を上げて尻餅を突く。
にわかに周囲が騒然とする。黒服の男たちはB級映画でよくある手口で『彼女』を車に連れ込み、さっさと現場から去っていった。
早いな。でも、今回は僕もカラスだ。空を飛べば、追跡ぐらいは出来る。
午前??時??分
黒服の男たちが運転する車を追って、僕は低空を飛翔し続ける。
カラスも結構疲れるな。というか、カラスの飛翔速度じゃ車の速度に追い付くの無理。しかも元々は人間だったわけで、カラスの体の使い方なんてわかりっこない。
ああ、今回もダメか。
悲観的な思いが込み上げてきたけれど、黒服の男たち(面倒なのでもう『あいつら』と呼ぶ)は何度か車を乗り換える機会があった。多分、警察とかを撒くつもりなんだろう。
でも、車を乗り換えれば乗り換えるほど、『あいつら』は一般人の動きに近くなっていく。交通ルールを守らないようなとんでもない運転方法を駆使しても、車を乗り換えて経歴を抹消していけば、やがては交通ルールを守らざるを得なくなる。
そんなわけで、遂に彼らも渋滞に引っかかった。僕はもう疲れ果てていたので、なるべく彼らの視界に入らないよう、車のルーフに乗ってみた。滑らないように、溝っぽいトコロに爪を引っ掛けておく。
こうしておけば、わざわざ飛ばなくてもこいつらの目的地に辿り着けるって寸法だ。
午後??時??分
数時間ほど車を走らせ、山道を登っていったところに、それはあった。
驚いたことに、こいつらの目的地は日本国内にある研究施設だった。
ていうか、日本にこんな施設あったっけ? 僕が最初に死ぬ時は、こんなの無かったような気がするけど。
黒服たちは車を近くの湖に投棄すると、『彼女』を連れて研究施設の中に入っていった。
参ったな。湖に車を捨てるとか大胆すぎるでしょ。
仕方ない。僕もあいつらの後を追うしかない。下手にあいつらに近づいたらカマキリの時みたいに殺されかねない。
僕がセキュリティゲートをくぐった瞬間、警報音が鳴った。それもそうか。警備員が警棒っぽい何かを構えてこっちに寄ってきた。
その内の一人、頭の禿げたおっちゃんが明確に僕に気づいた。
「ほー。君はカラスになってるのか」
え? 僕のこと知ってるの?
警備員の人たちは何も答えてくれなかった。
僕は警棒っぽい何かで死ぬほど叩かれて、案の定、死んだ。
午前6時00分
スマホのアラームが鳴った。
目を覚ますと、僕は猿になっていた。
ついでに、頭が禿げたおっちゃんがなぜかベッドの傍に突っ立って僕を見下ろしていた。
続きます。