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戻るべき日  作者: 半間浦太
2/17

2話

2話

午前6時00分


 亀になるのは二度目だった。

 テレビのリモコンを押して、ディスプレイ上の日付を見る。西暦2018年7月6日。『昨日』と同じだ。

 急いで犯行現場に向かけなければ。だけど、亀の体で移動するのは骨が折れる。重労働と言ってもいい。

 とにかくも、僕は階段を転げ落ちながら家を出た。




午前9時??分


 散々階段を転げ落ちたせいで、体のあちこちが痛い。

 けれども、今後彼女が味わわされる苦痛を思うと、それぐらいが何だという気持ちにはなる。

 亀の歩で現場に向かうと、既に多くの人たちが集まって、遠巻きに拉致現場を観察していた。

 情報が錯綜しており、火災が起きただの、爆弾テロが起きただの、割とでたらめな言葉が飛び交っていた。

 警察も現場を調査してくれているが、黒服の男たちを追跡するのは(多分)困難だろう。

 今回の犯行には間に合わなかったようだ。僕は項垂れながら近くの公園に向かった。




午後??時??分


 夕暮れの公園で、僕は黄昏ていた。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。


 彼女に命を助けられた時から?

 そうだ。あの時、確かに僕は死んだ。僕の意識は拡散した。


 どこかで見た論文(確か量子力学系だった気がする)によると、意識の正体は、脳の微小管に存在する物質らしい。

 生物が死ぬと、脳の微小管が微小管としての機能を停止させ、そこから意識が拡散する。

 そうして意識だったものは宇宙へと拡散していき、時間をかけて再び有機物に結びついて、新しい命になるんだとか。

 転生みたいだな、と思った。

 そして、どうやら『彼女』は、拡散した意識を集めて元の器に戻せるらしい。

 簡単に言うと、死人を蘇生できる、ってことになる。

 理屈は知らない。出来るんだから出来るんだろう。

 でも、一度拡散した意識を元の器に戻すには、相当な苦労が必要らしい。

 ここから先は完全に僕の私見だけど、あの論文を下敷きに考えるのであれば、宇宙には沢山の生物の意識が転がって、しかも混ざっている可能性がある。

 となると、一旦拡散してから無理やり元の器に戻された僕の意識には、様々な生物の意識が混じっている可能性も捨てきれない。


 考え事をしている間に、いつの間にか夜になっていた。亀の体だと、何もかもが遅いのかもしれない。

 公園の時計はどこだったっけ。確か、公園には時計があったはずだ。

 公園を隈なく探し回って、ようやく時計を見つけた。

 体はもうガタガタだった。ひーこら言いながら時計を見上げると、時を刻む針は12時を指そうとしていた。

 やばい。時間だ。

 カチッ。

 僕の意識は、暗闇に落ちていった。




午前6時00分


 スマホのアラームが鳴った。

 目を覚ますと、僕はカラスになっていた。



続きます

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