11話(現在)
あれから何回転生を繰り返しただろう。
何百回か転生を繰り返して、量子情報体という存在に転生できた。
各国が秘密裏に作ったという量子コンピュータ群。その中で初めて生まれた命が僕だった。
僕はようやく、彼女と出会えた。
「ひーちゃん!」
クラウド化して実体を失った彼女の名を、僕は叫んだ。
ひーちゃん。
僕の幼馴染の名前(実は本名じゃないけど)だ。
量子の雲の中で、ひーちゃんは振り返った。
「よっちゃん……?」
ひーちゃんは学校の制服を着ていた。僕は……転生を繰り返しすぎたせいか、雲みたいな状態になっていた。
この状態でも、ひーちゃんは僕のことが分かるらしい。
「よっちゃんだよね?」
僕は返事できない。そもそも今の僕には声帯が無い。
ひーちゃんは僕をちょっと見て、色々と察したらしい。
「もしかして、今までずっと、わたしを守ろうとしてきたの?」
うん。
そうだね。
「ありがとう。なんだか、色々と苦労をかけちゃったみたいだね」
う~ん。確かに苦労はしたけど。
分かっているんだか、分かっていないんだか。
それにしても、改めて対面すると、なんだか緊張する。
今までだって、こんな風にひーちゃんと接したことなんて無かった。
緊張しすぎて、変な汗が出てきそうだ(実際には出ないけど)。
とにかく、僕は聞かなければならない。
ひーちゃん。
僕のことをどう思っているのか、教えて欲しい。
続きます。




