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私、魔法少女なんてキャラじゃない!

作者: 星宮 空音

『先日も魔法少女リボンが悪の怪人オレノンジャーを退治してくれましたね』


『ええ、彼女がいなければ、世界は混乱、果ては滅亡していたかもしれませんね』


『しかし、魔法少女リボンはどのような子なのでしょうか』


『それは謎のままですね』


 そんな話がテレビから聞こえてくる。魔法少女リボンは日本各地に出没する、怪人を倒してくれる。我らがヒロイン。そう、そして私、守山華林もりやまかりんのもう一つの顔だ。


 本当は魔法少女なんてしたくない。したくないけど……。誰かに知られる方がもっと嫌だから、他の誰かに頼ることすら出来ない。


 別に、知られたらカエルになるとか言う縛りがあるわけじゃない。ただ、私の学校でのキャラが委員長だから。日本人特有の黒髪をストレートに伸ばしていて、自分で言うのも何だけど、可愛いと言うより綺麗な顔立ち。そして眼鏡。


 私は高校二年生で、もし、私が魔法少女リボンだなんて言ったら中二病にしか見えない。皆もお話しの中の登場人物のように見ている。


「リボン~どうですか~? そろそろ怪人が出てくる時間ですよ~。行きましょうよ~」


 スティックが女性的な声で話し掛けてくる。スティックは両端に球体、片方だけ天使の羽のようなものがついている。その羽で浮いている。名前はスティー。安直だけど言いやすいから。私は何時ものごとく返す。


「今の私はカリン、リボンでも何でもないって言ってるでしょう?」


「わかりましたよ~。カリン、で、行くのですか~?」


 カーテンの窓を開けて、外を確認する。陽は沈みかけ、少し暗くなっている。怪人は主に夕方五時から七時くらいに活動している。前に倒したジコチューネズミによると、人の負の感情を食べるためらしい。要するに夕食なんだけど、〝あの方〟と言う人のためらしい。自分達は〝あの方〟さえ生きていれば生きていけるらしい。


 なんかよくわからないけど、時間は決めてくれる方が楽だ。それにその時間は……いや、何でもない。

 私はカーテンを閉める。そして、スティーに振り向く。


「行くわよ」


「ハイなのですよ~」


 私は言うのは少しいや、かなり恥ずかしいので、小さめの声で魔法を唱える。


「マジカルリボン。セットアップ」


 その瞬間、スティーから白く眩い光が出てくる。スティーを掴むと、くるくると回す。ペン回しの要領で。そして、回転をつけたまま上に天井すれすれまで投げる。ピンク色の光の粒が私の体に降り注ぐ。私の体に光の粒が着いた途端、私の服が変わる。


 ピンク色のフリルの着いたエプロンドレス。腰のところは後ろで大きなリボンで結ばれていて、リボンの端がヒラヒラとはためいていてる。靴は白。スティーに着いたいたような天使の羽が着いている。飛べないけど、高く跳べるようになる。


 そして、頭には巨大リボン。そう。巨大リボン。膝丈までしかないミニなスカートも気になるけどもこちらの方がかなり気になるし恥ずかしい。でも、取ることは出来ない。


 私は窓の外を確認し、誰もいないことをきちんと確認してから、窓の外へと飛び出す。さて、今日は何処にいるかな……。


 ――ギシシシシ


 ――きゃぁぁぁぁ。助けてぇ! マジカルリボン!


 怪人の声と私と同い年くらいの女の子の声がする。テレビなんかだと魔法少女リボンって呼ぶけど巷ではマジカルリボンって呼ばれることが多い……そんな場合じゃない。行くよ!


 十秒後、怪人の所までたどり着いた。


「そこまでよ! 怪人、私が来たからには、もうおいたはさせないんだから!」


「ギシシシシ。待ってたぞよマジカルリボン」


 鳴き声には似合わないスーツを着た人形の怪人が言う。一瞬人間かと思いったけど、尻尾が生えていたから違うことがわかった。


「魔法結界!」


 私は怪人を無視してこの辺りを囲う結界を張る。じゃないと被害を考えながら、戦わないといけないからね。


「ギシシシシ。マジカルリボン。吾が輩紳士だから教えてやるそわよ。貴様のパンツは青だぞよ」


 ……ちょっとなに言ってるのかわからないなぁ。私はスカートの裾を押さえながら少し後ろに下がり、怪人を睨む。急いだから、ビルの上を跳んできたのが仇になった。


「吾が輩、もっとマジカルリボンを知りたいぞよ」


 気がつけばすぐ後ろ、具体的に言うと息の掛かる範囲に怪人が立っていた。早い。何時の間に。私は慌てて距離をとろうと前にジャンプするが、怪人の尻尾に足をとられ、体勢を崩す。


「きゃっ」


「リボン!」


 スティーが心配そうな声を出す。


「ギシシシシ。捕まえたのぞよ……こっち向くぞよ~♪」


 怪人が私に覆い被さる形でいる。絶体絶命だよ。ど、どうしよう! まだ、仰向けなだけましかなぁ……。いや、そうじゃなくてさ! えっと、こんなときは……。どうすればいいの?!


「ふむ、手始めに頭のリボンを外せばどうなるのぞよか試してみるぞよ」


「そ、それはダメ! マジカルリボン、ファイア!」


 怪人が私の頭に手を伸ばした所で魔法を使う。無我夢中だったから、何故ファイアを選んだのかすらわからない。けど、状況を打破することは出来た。


「熱い、熱い、熱いぞよー!」


 怪人がもがき苦しむ。今だ!


「怪人よ、帰りなさい! マジカルリボン、スペシャル!」


「説明しましょう~! マジカルリボンスペシャルとは、簡単に言えば怪人を帰すための魔法ですよ~」


 怪人の下に魔方陣が一瞬で描かれ、怪人の姿が消える。あ、怪人の名前聞くの忘れた。まあ、変態紳士でいっか。


「一件落着ですね~」


「そうだね。今回は本当に身の危険を感じたよ……」


「あのまま、やられるリボンを見るのも役得かなとも思いましたが……」


「ちょ、スティー。何言ってんの! 止めてよ……もう、帰ろう」


「そうですね~」


 二つ、ビルを跳んだ先の路地裏で、変身を解いてから帰ろうと思い、路地裏に着地する。そして、頭のリボンを解く。

 すると、元のカリンの姿に戻る。頭のリボンの謎はたったこれだけ。でも、私としては、パンツを見られるより恥ずかしいかも。……どっちも恥ずかしいけどね。


 そうして、今日も地球の平和は守られた。


 はぁ、他の誰かに代わってほしいなぁ。やっぱり、魔法少女なんてキャラじゃないよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 羞恥に耐えながら戦う様が、なかなか萌えます。 イメージ的にはホムホムであってるでしょうか。 [気になる点] 美人で真面目な性格を、自分で言わずに他のキャラを通して伝える方が自然かと。 委…
2017/07/02 22:56 退会済み
管理
[良い点] 続きないの?続きないの? 大切なことです。 青いパンツと言う伏線を回収できてないよ! みんな知りたがっているよ!
[良い点] これはこれで萌える……! [一言] 読みきり版みたいな感じでしょうか?( ・∇・)
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