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異端者
左門が地面を引き摺りゆっくりと開くと、ユビィは空を仰ぎ見る。いやはや、これで30年ぶりだ。マッチボックスを取り出しタバコに火をつける。マントルは轟々と火を吹き上げ、異端者を歓迎している。
「たぶん、ここだ」
大きな葉をつけた観葉植物の影がちらちらと風に揺れ、お茶を楽しむ人々はお喋りに夢中だ。何人かはこちらを一瞥して、再びお喋りに戻った。
喉を鳴らす野良猫たちの通りを抜けると小さな民家があった。ドアには「te mo lop sedan」と彫られていた。
中に入ると湿っぽい埃の香りが鼻についた。
鈍い音を立ててドアベルが鳴ると、風がユビィの背中を撫で、部屋へと流れ込んでいった。
「いらっしゃい」と暗闇から声が聞こえてきた。
声の主は暗闇から姿を現した。
小さな緑色の女の子だった。
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