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戻る瞬間③

「もう柚葉は今まで散々幸せだったんだしもういいでしょ。これ以上幸せになったところでねぇ。」

加瀬さんはニヤニヤ笑っていた。


「ねぇ、将ちゃん。もう柚葉はいないの。

だからさあたしと付き合ってよ。」


「……………」

将哉は下を向いたまま何も答えない。


「将ちゃん……あの時みたいにキス…して?」

加瀬さんは将哉の顔を上にあげて顔を近づけた。


「やめろ!!!」

俺は立ち上がって2人を離した。


「んもぅ、何するの!」


「加瀬さんこそ何調子に乗ってるの。

俺と将哉から大事な柚葉を奪っといて。」


「そんな怒らなくてもぉ〜」


「……………っ……」

将哉は遂に我慢出来なく声を出して泣き始めた。


「柚葉……ごめん……………柚葉……ごめんな……………」

将哉が柚葉を呼ぶその声がまた辛かった。


「くっ……………」

俺もせっかく止まりかけた涙がまた溢れた。


「将ちゃん……………そんなに柚葉が大事?」

将哉は頷いた。


「なら、あたしを柚葉だと思っていいよ?」

将哉は首を横に振った。


「……………そうなるなら戻らない方が良かったじゃない!!戻らなければこんなことならなかったじゃない!!!!」




****


次の日加瀬さんは退院した。

あの後加瀬さんは騒ぎ過ぎて看護師さんが部屋に入ってきて怒られた。


柚葉はまだ目を覚まさない。

むしろ、もう覚まさないだろうけど。


将哉は自暴自棄になったのか、考えたのか、

結局金谷さんに事情を全部話した上で付き合うことになったらしい。

元々金谷さんには柚葉から話してあったからすぐに理解してくれたそう。



加瀬さんはやはり周りから冷たい目をされるらしい。

すぐに学校を辞めていった。

保健の先生がたまぁにお見舞いに来てくれる。



俺はもう何日も学校に行っていない。

柚葉から離れるのが怖かった。

目が覚めなくてもいい。そばに居たかった。




「雪哉くん大丈夫?良かったらベッド空いてるから軽く睡眠とっていいよ?」

看護師さんにも気を遣われている。


「ありがとうございます…。」

でも寝るのがこわい。


「ねぇ、柚葉。白雪姫みたいにキスしたら目が覚めるって本当だと思う?」

俺はそっと柚葉にキスをした。


「……………そんな夢みたいな話あるわけないよな。」

遂に眠さに耐えられず俺は椅子に座ったまま眠りについた。

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