救急車
なし
さらに1分くらいたってから
おっかなびっくり
しかたなくと
おずおず
手を小さく
あげるものおりけり
その名は
かつて
どこぞの研究会で
でくわしたという
ものなりけり
ここまでが
ながかった
やっとこ
質問がでた
いったい
どういう聴衆なのか
参観者なのかと
思いつつ
質問がでたとたん
かくいう
大先生
水を得た魚のように
しゃべること
しゃべること
質問はひとりであったが
かれが15分
しゃべりつくして
いやしゃべりたおして
話したであろう
かくいう
持ち時間は終了し
反論も賛成もなく
やなせ氏はおわった
わたしは
なにげに
メモをとるふりをして
そういえば
やなせ氏の
アンパンマンを描いていた
紙面に
いろいろなキャラクターが
勢ぞろいできた
会場も
今までの緊張感ただよう状態とは
一変し
安定感のある
落ち着いたトークに
みんなことごとく
安心して
すっかり
寝ており
ひとまず
やなせ氏の単独トークショーで
会場もあたたまったよう
さっそうと
着席する
やなせ氏を見届け
司会が
意気揚々と
続いての質疑を聴衆に
問いかける。
2枠
対抗馬 S薬大
やました氏
さあ、
問題はここから
どうでるか。
会場の反応は
そして
かくいう2度あることは3度ある。
悲しいかな
この参観者は
おそろしく無知か
極度の
恥ずかしがりとみた
満を持し
会場にまたもや
水をうったように
質問の声は
かからず
無言、そして沈黙。
わたしは
やました氏の
すぐとなりに座っているので
あきば氏もとい
やました氏をなにげに
観察して
みれば
御大は
顔面蒼白
原稿をもつ手はかすかにふるえ
足は貧乏ゆすりで
白のソックスが
見え隠れする
秒読みで
今にも卒倒しそう
おいおいと
会場に
こんなかんじなんだから
誰か助けてやれよ
おれも
質問できないんだから
と視線を投げかけるも
みな一様に
頭をたれて
こちらの要望は
かなたの荒野に消える
そして
2分たち、5分経っても
まったく
質問者がでない
冬に寒修行する
修験僧。
そんな面持ち。
はなはだしく落ちる滝に
背中をうたれる
ひどく
打たれる
司会もなんとかせずに
無情に10分後
時間終了の
手押しチャイムが
記録兼計時によって
おされた
こんなことは
想像だにない
ありえない
しかしながら
あきば氏
顔面蒼白なれど
救急車とならず
それだけが
唯一よかった。
なし




