Endless Last
僕は不老不死だ。
どうしてかは分からない。
ただ十八歳に達した頃から成長がピタリと止まったのだ。
二十歳になった頃、周りの奴らは成人しすっかり大人になっていた。
だが自分は十八の頃の姿のままだ。
この頃はまだ――周りと比べて少し幼さが残ってるな――程度にしか感じられなかった。
しかし二十代中頃になると流石に気づく。
成長が止まっているのだと。
アルコールにも極端に弱いし体毛もとても成人男性とは思えない。
そして三十を過ぎた頃、もう世間との交流と離れていた。
明らかに異様なのだ。
その外見はとてもじゃないが三十を超えた人間の姿には見えない。
もうお兄さんと呼ぶのも難しい年齢になっているはずなのに。
他の人は成長ではなく老化が始まっている。
なのに僕だけがまるで止まった時間の中にいるかのようにその若々しい肉体を保ったままでいる。
勿論時間が止まっているわけじゃない。
僕が異常なだけなのだ。
いくら一人暮らしをしていてもご近所さんの目、家賃の支払、もう人里に居るのもできないだろう。
時が進み年齢に数えて一〇〇歳になった。
僕と同期だった奴らはもう死んでしまっているだろう。
住む場所を転々とし人との関わりを完全に絶っている僕には何もかもがわからない。
さらに時間が経ち、既に年齢も数えられなくなった。
もはや友と呼べるのは時間だけだ。
人や動物は死に、土地は移り変わって行く。
死んでみようと飛び込んだりしてみたが気がついた時には五体満足。どこにも問題ない。
僕には死ぬことすら許されない。
僕は全てに達観し、諦観してしまった。
無為に過ぎてゆく時間の中、思い出すのは決して満足はいってなかったが充実していた青春時代。
幾度と無く流れ、とうの昔に枯れたはずの涙が感情と共に溢れてくる。
そこで僕は考える。
冷静になれるような状況ではなかったが今を逃すと掴みかけていたものが離れてしまう気がしたからだ。
考える。考える。考える。
何かで優勝などもなく、至って平凡でさして何も無かったあの頃になんでここまでの魅力を感じたのか。
考える。考える。考える。
そして僕は気づく。――あぁ、何も無かったんだな――と。
理由なんて何も無い。日々がむしゃらに過ごしていただけだ。
今と変わらない何もない人生。ただ違うものが一つだけある。
それは諦めていなかったことだ。
未来に思いを馳せ、ただ純粋に生きていただけだった。
それだけで今とは比べるまでもない程充実した毎日を送れていた。
ならば今からでも遅くない。
なぜなら僕は不老不死なのだから。
これから先、充実のゆく人生を歩んで行けばいい。
止まることのない時間に歩み寄りながら――――