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第一部

 ようこそ、お待ちしておりました。お一人のようですね。ここへ来るのは、初めてでしょうか?それとも、前にも一度来たことがある?

 いえ、それはやはり聞かないことにしましょう。どちらにしても、ここで貴方に見せる物に変わりはないのですから。


 もし、初めて来る方の為に言っておきましょう。一体何を求めてここへいらっしゃったのか、それは私には分かりませんが、ここにあるものはただの話です。それ以上でも、それ以下でもない、単なるくだらないお話。

 ただ、それをあなたがどう捉えるかによって、それは全く別のものへと変わってしまうのです。輝いて見えるかもしれませんし、真っ黒に見えるかもしれません。はたまた、透明となってあなたを通り抜けてしまうかも。願わくば、あなたにとって輝かしいものへと、これが姿を変えますように。


 ああ、それと、もう一つ。今、あなたに足りないものとは一体何でしょうか。それは力?知識?地位?財産?美貌?これらばかりではないでしょう。

 ですが、必ずあるはずです。あなたには補うべきものが。

 そしてくれぐれも足りない物と、欲しい物を間違えないようにしてくださいね。そういった過ちを犯してしまうと、死すべき所に行き着く前に、死が訪れてしまいますよ。


 はい?死ぬとは何か?おや、私としたことが説明不足だったようですね。

 すみません。近頃はここを訪れる人も滅多にいないのですよ。

 自分が常に死を望んでいるということに、なかなか皆様はお気づきにならないようで……。あなたはそれに気が付いたから、ここへいらっしゃったのでしょう?……ちがう?なるほど、ここへ着いたのは偶然でしたか。


 しかし、先ほど質問させていた事の答えは、もう出ているでしょう?足りない物ですよ。それがすぐに出てきたあなたは、やはり死を望んでおられるのです。

 いえ、もちろん生命の死ではありませんよ。言うなれば、あなた自身の死。説明するより、これをご覧になった方が分かり易いかもしれませんね。これを見たが故に、やはり死にたくなり、自らに死を与える人が大勢ですから。


 もし今のあなたが死を望まないのなら、これを見ないことです。そうすれば、あなたは今のままであり続けられることでしょう。

 死は望んでいないが、どうしても気になる、という方は、これが嘘偽りで固められたものであるのだと、自分によく言い聞かせながら見ることです。

 それではこの扉の先へ、貴方をご招待しましょう。貴方に、良き死が訪れますよう…。

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